第6話 はじめてのはこにわへ

―それでは、これからクエストを行って頂きます。ようこそあなただけの箱庭へ



クエスト

・薬草を育てろ


受諾しますか

YES/NO


勿論イエス!!でも、僕の周りなんもないぞ。


一瞬意識が遠くなって、いつの間にか周りには空と小さな一軒家と畑と井戸。そしてどこから流れているのかわからない小川が広がっていた。左右をキョロキョロと見ればさっきまでいた白い空間など、どこにも見えない。ただ、そのせいで僕がいるのは土の上。


「みえない。ぜんぶみたいっしゅ」


おや。舌っ足らずだけど、喋れる。でも、失念していた。僕はまだ0歳児。生後半年のハイハイもできない赤ちゃんだ。こんな土の上に寝転がる位しかできない赤ちゃんだった。広い畑に寝転がる赤ちゃん。シュールだ。


―魔法で浮かべばよろしいのでは?


あ、トリアさん。居たんですか。


―トリアさん?


受け答えしてくれるので、チュートリアルのトリアさんって勝手に名付けました。


―そうですか。


魔法で浮かぶってどうすればいいんでしょうか?


―貴方が前やっていた、イメージで魔法を使うって方法でできます。あと私に敬語はいりません。


そう?じゃあ、遠慮なく。って、イメージで魔法を使うって、生まれてから割とすぐに頑張ってたやつなんで知ってんの!?


―貴方の記憶も読み取れる万能なチュートリアルです。


万能って自分で言ってるし。まあいいや、とりあえずやってみるか。じゃないと、クエスト進まないもんね。


―頑張って下さい


よし、えっと、身体全体がふわっと浮いて、大人の目線くらいでキープ。背中や頭の土は落としてっと。


おお!!できた。


思った通りにふよふよ浮いている。


じゃあ、クエストは・・・薬草育てるってどうしよう。種とか?そもそも植えるのも魔法使えばいいのか?


―そちらの緑のボックスの中に薬草の種とじょうろが入っています。


助かる。流石トリアさん。


―いえいえ


えーと、あった。種は何種類かあるみたいだけど、どれだろ?


―鑑定を使って下さい。


またもや便利な機能が。鑑定ね。


【鑑定】

小麦の種

キャベツの種

トマトの種

大豆

柿の種

とちおとめの種

初級薬草の種


ちょーっと待て。大豆はまあそもそも豆が種の役割だからな。わかる。とちおとめはなんで限定した?イチゴの種ではないのか?あとしれっと紛れ込んでる柿の種。おまえ、ほんとの種かとおもいきや、お菓子のほうじゃねーか!!どうして、紛れてるんだ!くっそ。赤ん坊だと柿の種食えん。


―口調が乱れてますよ。あと柿の種はサービスです。


おま、お前のせいか!!


―サービスです


サービスだとしても、他の種に紛れ込ますな!!湿気る。あと今食べれんから悔しい。


―そちらのボックス内は状態保存がかかっているので、湿気ません。


ムダにいいサービス。がくっ。

もういい。とにかく薬草の種を植えるか。


初級薬草の種を浮かべて、畑の畝に等間隔で植える。上からふわっと土を被せて、ボックスに入っているじょうろを手前に引き寄せる。水は井戸から汲むのか?魔法で出すのか?と考えていたら、いつの間にかじょうろが水で満杯になっている。魔法のじょうろだった。

薬草に水をあげて、あとは待ってればいいのか?


―じょうろの水に成長促進がかかっているので10分ほどで成長します。もう少し早く収穫したいのであれば、土に豊穣の魔法をかけて下さい。


・・・何でもできるんだな。僕。


―その辺は神の基本スキルなので出来ますよ。大きな魔法、例えば世界を壊したりするのはもう少しレベルを上げないとできませんけど。


なんで、できない魔法の対比が世界を壊す魔法なんだよ!怖いよ!!あとやっぱり神なのか・・・


―この「箱庭」の世界の唯一の神ですから。


じゃあ、この世界に人や動物は?


―レベルが上がれば開放されます。


なるほどね。まあ、とりあえず最初だから土に豊穣の魔法をかけるか。因みに、最初箱庭にいられる制限時間があるって言ってたけど、あとどのくらい?


―あと10分ほどです


は?みじかっ。15分位しかここにいられないの?


―そうです。レベル1は一回15分、2時間のインターバルを置かないと入れません。


先に言ってよ!!


―聞かれなかったもので


じゃあ、食べれないけど、今のうちに他の種も蒔いておくか。

全部の種10分で収穫できるわけじゃないよね?


―それぞれ収穫にかかる時間は違います。


じゃあ、先に土に栄養を。豊穣の魔法を全体に。

そして、柿の種以外を全部種類分けして、それぞれ畑に。

どんどん魔法を発動させて早送りのように種が成長していく。


あ。しまった。収穫した作物が僕の居ない時間に萎びてしまう。


クエスト

・薬草を育てろ

達成しました


初回クエストを達成したので、アシスタント妖精が開放されます。

妖精開放はポイント消費されません。


アシスタント妖精を使用しますか

YES/NO


イエス!まて、ポイントってなんだ!?


「マスターぼくを選んでくれてありがとう。僕は何をすればいい?」


えっと、畑の作物を育てて腐らせないように何とかしといて!!


「わかった。畑の世話だね。また戻ってくるのを待ってるよ」


―15分経過しますので、強制的に現実世界に戻って頂きます。


こら、待て、まだポイントがどーのって聞いてないぞ


―それではまた2時間後に


まってぇぇぇ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る