最終話 20年後

20年後。旧赤目族の区域。


エドは父のお墓に、語りかけた。


「僕は、僕はやったよ。赤目族と黒目族が、一緒に暮らせるときが、ようやく来たんだよ。柵は、無くなったよ。もうないんだ」


背後に人影を感じて振り返る。すると、花束とりんごをもって来た、あのときの店のおじさんだった。


「え?おじさん?どうしてここに……」


「あぁやっぱり、噂は本当だったんだな。あのときの小僧が、まさか本当に族長になって、赤目族と黒目族因縁の柵をとっちまうことになるとはな」


「父が、チャレンジしろって後押ししてくれたから、今があります」


「小僧、お前、やっぱりお前のオヤジさんにそっくりだな。何年経っても、面影がかわらねえ」


「もう小僧じゃないですよ」


「そうかそうか、すまん!」


「そうか、おじさん、あの時、僕の顔に父さんを感じたから、僕を逃してくれたんですか?」


「まぁそうだな。まさかとは思ったが、あんまりにも似てたからな」


「もしかして、父に会いに?」


「あぁ、だが、村でもう死んじまったって聞いてな。そしたら、お前との再会だ。……そうだな、せっかく持って来たんだ、りんご。お前が代わりに食ってくれるか?」


「お代は?」


「いるわけねえだろ」


エドは、どこか懐かしく、さっぱりとした甘味と酸味のハーモニーに舌鼓をうちながら、おじさんにいった。


「どうです?お礼といってはなんですが、父の作った、最後の黒雑穀、一緒に食べませんか?」


「黒雑穀?ってまさか、お前のオヤジさんーー」


「ええ、そうです。生前父は言ってました。『黒雑穀は、あいつの無事を願い、友のために作ってる。息子よ、いつか赤目族と黒目族を隔てる柵がなくなったとき、この黒雑穀を黒目族のおじさんに食わせてやれ』と」


黒雑穀を、米にまぜて炊き込み、おじさんと一緒に食べた。おじさんは、涙を流した。そして、おじさんの夢と父の夢は、同じ方向を向いていたのだと、エドも涙が溢れた。


夢と夢が重なり、現実として現れた瞬間を、エドはじっくりと噛み締めた。おいしいご飯と酒と共に。


その晩、父が夢に出てきた。


父は、「ありがとう」と言いながら、優しく笑っていた。


「ねえ父さん、ここがゴールじゃないよね?そうだよね?僕はチャレンジし続けるよ。赤目族と黒目族が、本当に理解しあえるまで」


父はいった。


「思い立ったら、やってみろ。それだけだ」


手を伸ばしたら、父は蒸気のようにふわりと消え去り、天の光の中に溶けていった。


エドは、ぐっと溢れる涙を拭いて、明日へ向かう決意をした。


「父さん、ありがとう。僕はチャレンジするよ」



ーーーー

ーーー

ーー


エドは未来を夢で見た。


それは明るくて、幸せで、赤目族も黒目族も関係のない、平和な村の姿だ。


エドはその村で、りんごと黒雑穀を売っている。それで、りんごをやんちゃ坊主に盗まれるのだ。


エドはやんちゃ坊主を呼び止め、とっ捕まえる。

それから、謝るやんちゃ坊主にこう言うのだ。


「こら坊主、赤りんごだけじゃだめだ!黒雑穀も忘れずに盗め!」

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赤目族のエドが対立する黒目族を尋ねたら、怖いおじさんに捕まってピンチになったけど、おじさんの過去を知ってやっぱりチャレンジしてよかったと思い成長する物語 だいこん・もやし @Cucumber999

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