第50話:VSドラゴン

 まさかこの魔物を召喚しているとは……。


 召喚されたのは巨大なドラゴン。


 僕が3階層に苦労して召喚した魔物だ。

 その巨体は碌な場所だとまともに動きが取れない。


 そして、ここ7階層はボスラッシュがメインになるので、それほど広い場所はない。


 つまり――。




「えっと、これは倒してしまっても良いのですよね?」




 壁に体が埋まった状態で召喚されてしまったドラゴンを見て、遥は苦笑を浮かべていた。

 確かに僕も苦笑しか浮かべられなかった。




「あぁぁぁ……!!! なんで!? どうして、壁に埋まってるの!?」

「うん……、まぁ、当然じゃないかな? 召喚できるほどの広さがないから……」

「とりあえず倒します」




 遥がドラゴンをあっさり倒してしまった。

 本来ならもっと苦戦をするのだが、今回は相手がかわいそうすぎた。


 身動きも取れず、かといって攻撃すらできない。


 ここは後ほどエリシャに改良してもらわないといけないな。




「で、でも、まだまだ魔物はたくさんいるよ!? たくさんいるからね!?」

「そうですね。そろそろ魔法を使わせてもらいますね?」




 にっこりと微笑む遥。

 その宣言通り、魔法を使い始める。


 やっぱりわざと使わなかったんだ……。

 確かにかなりの連戦になる訳だから、力は温存するよね……。


 そして、ボスラッシュの魔物を全て一人で倒しきった遥は、少し息が上がっていたものの、表情を変えずに僕たちの方へと近づいてくる。




「とりあえずこんなものですね」

「う、うそ……。ほ、本当に倒しちゃった……」

「は、遥さん、大丈夫!? 怪我はない?」




 さすがに不安を感じてしまい、遥に聞くけど、彼女はピースをしてくる。




「もちろん。このくらいじゃ怪我しないですよ」

「そっか……。良かった……」

「よ、よくないよ!? エリシャが絶対に突破できない魔物たちで構成したのに……」

「ただ強いだけの魔物がソロで出てきても、対策はどうにでもできますよ。私じゃなくても、ランクの高い冒険者なら倒せるんじゃないかな、と思いますよ」

「うぅぅ……、もっともっと改良するよー。今度こそ……、今度こそお姉ちゃんを倒せるように改良するからねー」

「はい、楽しみにしていますね」




 いやいや、ここから更に強化するとなると、ダンジョンのランクがまたおかしいことになるんじゃないかな?

 ……もう今更かな?



 二人が微笑み合っているその姿を見て、僕は苦笑を浮かべながら、その姿を見守っていた。

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