第49話:7階層VS遥

 翌日、予定通り僕たちはエリシャが作った7階層へとやってきた。


 もちろんその目的はただ一つ。

 エリシャの7階層を遥が突破することだった。




「本当に遥お姉ちゃんだけで良いの? エリシャたちも手伝うのに……」

「いえ、大丈夫です。これは私がエリシャから挑まれた勝負。私だけで受けないと意味がありませんから……」

「えっと、本当に大丈夫? 確かに僕たちだったら邪魔にしかならないだろうけど、秋さんと一緒なら――」

「いえ、本当に大丈夫ですよ。見ていてください」




 にっこりと笑顔を見せる遥。

 でも、僕は一抹の不安を隠しきれなかった。




「お兄ちゃん、いよいよエリシャの階層だよ。楽しみだね」

「う、うん……」




 笑みを浮かべるエリシャと不安を隠しきれない僕。

 遥はただ、無表情のまま、武器である本を弄んでいた。




「では、参りますね」




 確認を終えたあと、本を閉じると遥が先陣を切る。

 一応手出しはしない、ということなので、僕たちは遠巻きからその様子を眺めることとなった。







「はっ!!」




 遥が巨大な熊の魔物を手に持っていた本で殴り倒していた。

 これで既に討伐した魔物が十体。

 普通の魔物なら驚かないところだが、今倒しているのはどれもが階層のボスとなり得る魔物たち。


 それをたった一人で倒してしまう遥。


 改めて彼女の力を目の当たりにしている気がする。

 



「うぅぅ……、もう半分も倒されたよ……」




 僕の隣で悔しそうな顔をするエリシャ。

 彼女からしたら、すぐに倒せる予定だったのだろう。


 ボス級の魔物が休む間もなく襲ってくるのだ。

 普通のパーティでもかなり苦戦するはず。


 ただ、遥はまだまだ余力を残しているようだった。

 その証拠に最初からまだ魔法は一度も使っておらず、本による打撃だけで魔物を倒していたのだ。


 でも、その運動量はかなりのもので、さすがに息が上がってきているようだった。




「はぁ……、はぁ……。さ、さすがにきついですね……」

「そ、そろそろ僕たちも参戦しようか?」

「いえ、まだ大丈夫です……」

「で、でも……」




 まもなく現れる次の魔物。

 その攻撃も避けつつ、なんとか隙を窺って攻撃することでなんとか倒すことに成功する。




「はぁ……、はぁ……」




 しかし、さすがにそろそろ限界のようだ。

 膝に手を付いて、息を切らしていた。




「十一体も倒されるなんて思わなかったよ……。でも、今度は無理だろうね。だって――」




 今までとは比べものにならないほど巨大な召喚陣が現れたかと思うと、4階層のボスであるドラゴンがその姿を現していた。

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