第48話:5階層の様子

 結局冒険者たちは温泉に入ったあと、ワープポイントからダンジョンの外へと出ていったようだった。

 宝エリアから進んでしまったことを悲しむような人たちだから、再び上の階層で稼ぎに入っているのだろう。


 そして、僕は今日も一人、ポツンと温泉に浸かっていた。




「奏さん、誰かに襲われそうになったら言ってくださいね」

「大丈夫だよ。こんな温泉で襲ってくるような人なんていないよ?」

「ないですよないですよ!? 私も秋ちゃんも、もしかしたらエリシャちゃんも襲おうとしてるかもしれないですよ?」

「ちょっと!? なんで、遥さんがその中に名前が挙がってるの!? 魔物とかやってくる冒険者の人のことじゃないの!?」

「あははっ、冗談ですよ」




 隣の女湯から遥の笑い声が聞こえてくる。




「あっ……、わざとしてたでしょ!?」

「えへへっ、役得ですよー。奏さんの慌てる声が聞けましたー」




 うれしそうな遥さんの声を聞いていると、しかたないなと思わされてしまう。

 すると、突然男湯の扉が開いていた。




「あっ、お兄ちゃん発見ー!!」




 新しく冒険者の人がやってきたのかと思ったが、実際に現れたのはエリシャだった。




「な、な、なんでエリシャがここに!?」




 僕は慌てて自分の体をタオルで隠していた。

 その一方、エリシャは全く隠さずに大胆な格好をしている。




「んっ? なんでってエリシャもお風呂に入るためだよ? お兄ちゃんはお風呂に入る以外に温泉に来る事ってあるの?」




 ただ、違うんだ……。

 僕が言いたいことはそういうことではない。




「だから、どうして男湯にエリシャが!?」

「お風呂に入るからだよ?」

「だから、そういうことじゃなくて……」

「えっ? でも、エリシャは昔からお父さんと一緒に入ってたよ?」




 なるほど……。

 確かにエリシャの年齢を考えると何らおかしいことではない。

 でも、ここだとかなり問題になってくる。




「ここはダンジョンだから僕以外にもこの温泉は使うんだよ。だからこそ、エリシャは普通に女湯を使ってね」

「うーん、わかんないけど、お兄ちゃんが言うならわかったー!」




 そう言いながらエリシャは湯船に飛びついてきた。

 本当にわかってるのかな……?




 一抹の不安を隠しきれなかったが、それでもエリシャを信じるより他なかった。




「そういえば、エリシャに任せてた7階層はどんな感じになったの?」

「うん、ボスたくさんだよー。遥お姉ちゃんでも突破できないように考えて作ったんだよー」

「へぇ……、それは興味深いですね。明日にでも挑戦してみましょうか?」




 近くから遥の声が聞こえてくる。




「えっ!?」



 思わず振り向くとそこにタオルだけ巻いて顔を真っ赤にした遥の姿があった。

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