第40話:決別

「はぁ……? どうして取ってこないんだ?」



 剣士が呆れ顔になりながら言う。

 それに同調する僧侶。


 元々装備がいらない魔法使いだけが、中立を保っていた。




「デスミミックが大量にいる状況で、どうやって拾ってこいと言うんだ?」


「デスミミックくらい軽く倒せるだろう?」


「倒せるはずないだろ!? 俺は盾だぞ!?」


「はぁ? 盾でも倒せるだろ?」


「それならお前が倒せば良かったんだろ? やられる方が悪い!」


「お前が守らないからだろ!」




 つかみ合いの喧嘩が始まりそうになっていた。

 それを止めたのは、エリシャだった。




「お兄さんたち、喧嘩?」




 不思議そうに首を傾げるエリシャを見て、冒険者たちは気まずそうな表情をしていた。




「い、いや、喧嘩というわけではなくて――」


「喧嘩したらダメだよ?」




 悲しそうなエリシャの顔を見て、冒険者たちは一同に胸を打たれていた。




「だ、大丈夫だ、ちょっと意見が違って言い合ってしまっただけだ」


「そ、そうだな。ダンジョン内で少しトラブルがあってな……」




 冒険者たちは肩を組み、精一杯仲の良さをアピールしていた。

 それを見ていたエリシャはにっこり微笑んでいた。




「そっか……。お兄ちゃんのダンジョン、色々と大変だもんね。疲れたらエリシャの宿で休んでいってね。全員一緒で良いなら部屋を用意するよ?」


「ほ、本当か!? あの大人気のエリシャの宿に泊まれるのか!?」


「ぜ、ぜひ頼む! お、お前たちも良いよな!?」


「あ、あぁ……」


「ちょっと待て。宿泊代は足りるのか?」




 男たちが全員で金を出し合っていた。

 しかし、全員分の宿代には届かなかった。




「くっ……、せっかくのチャンスなのに……」


「そ、そうだ、お前、スキルの実をもっていたよな? あれを追加代金として支払ったらどうだ!?」


「そ、それで足りるのか?」




 盾使いが実を取り出すと、エリシャはにっこりと頷いていた。




「もちろんだよ。それじゃあ、部屋に案内するね。こっちに来て!」




 エリシャがにっこりと微笑みながら冒険者たちを案内していた。




◆◆◆




 結局警戒していたSランク冒険者たちも、僕のダンジョンのお得意様になっていた。


 今日も四階層でデスミミック相手に粘っている。


 宝をもちかえれる可能性は二回に一回……といったところだろう。


 僕としてはSランク級の冒険者を倒せるとそれだけでかなりのDP収入が得られるし、冒険者側もエリシャの宿に泊まれるから……と、更に頑張ってくれていた。


 持ち帰った宝は換金して、エリシャの宿で使ってくれるので、、実質損失はゼロ。

 最初はここまで宝箱を置くのはどうかと思ったが、結果的に良い方向に働いてくれたかもしれない。

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