第39話:再挑戦へ

「はぁ?」



 盾使いは何があったのか分からずに思わず声を漏らしてしまう。


 彼の周りには、仲間たちの装備や今拾ったものが散らばっている。


 これらも拾わなかったら、時期にダンジョンに飲み込まれ、どこともしれない位置に隠されるのだろう。


 彼としては当然ながら今すぐにでも拾いたい。


 しかし、彼の周りをデスミミックが四体も囲んでいる。

 流石にそう簡単にやられることのない相手。

 そもそものパラメーターで脅威を感じることはないが、一方でこの盾使いも決定打に欠けていた。


 せめて後一人、誰か残っていたら……。


 そう思わざるを得なかった。


 デスミミックの即死魔法はたとえ受けたとしても、その効果は大きくない。

 あくまでも、耐性がない場合は確率で死ぬだけ。


 その確率も低いので、全員がまともに受けるのとは想定していない。

 そもそも、敵からの攻撃を盾使いが一身に受けるからこそ、他のメンバーは攻撃に特化した装備をすることができていたのだ。


 それは裏返せば、油断して陣形が崩されるとかなり脆いことを意味していた。




「く、くそ……、こ、ここは撤退しかないか……」




 デスミミック4体を倒せないので、仲間の武器を諦めて、上の階層へと戻っていく。

 盾使い自身も倒されないからこそ、取れる行動ではあった。


 そのままダンジョンの入り口へと戻ると、他の仲間たちが地団駄踏んでいた。




「くそっ! なんで即死魔法を喰らっちまったんだ!」

「あれは運が悪いと当たるから仕方ない」

「レベルが下がったりしないだけまだマシだな」

「でも、せっかく苦労して集めた装備が――」




 冒険者たち三人が悔しがっている中、盾使いが戻ってくる。

 ただ、その体は満身創痍だった。


 それもそのはずで、自分では魔物を倒せないのに、スラ妖精たちが高速で魔法を使ってくる。


 普段なら一瞬で逃げてしまうスラ妖精だが、全く攻撃をしてこない盾使いをカモと思ったのか、彼に対してだけはしっかり攻撃をしてきた。



 くそっ、こんな時に限って……。



 いつもなら攻撃を受けてる間に剣士が倒してくれる。

 むしろここまでスラ妖精がとどまってくれるなら、ボーナス以外の何物でもないのだが、今日だけは鬱陶しさ以上のことは感じなかった。


 それでも、なんとか地上まで戻ってきて、仲間たちと合流することができた。




「翔、お前は無事だったんだな!?」


「あぁ、俺の装備はしっかり耐性を積んでるからな」




 盾使いの姿を見た冒険者たちは安堵の息を吐いていた。




「お前が無事ってことは俺たちの武器も無事なんだな?」




 安心した理由がそれである。

 それを聞いた盾使いは少しムッとしながら言う。




「装備は回収できなかった。俺に魔物を倒すだけの能力はないからな」

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