第34話:ダンジョン広域化

 秋がどんどんとダンジョンを広げていってくれるおかげで、6階層は今までにないくらいとんでもない広さになっていた。




 ドゴォォォン!!

 バコォォォン!!

 ズガガガガッ!!




 その代わりに工事現場さながらの物音がずっと鳴り響いている。

 マスタールームにいるうちは良いのだが、一度モニターを開いてしまうと最後。

 そのとんでもない騒音によって、耳を塞がざるを得なかった。




「うるさい、うるさいよ……。ま、前はそこまで酷い音を出してなかったよね!?」


「ついつい、興が乗っちゃって……」




 秋がかわいらしく舌を出してみせる。

 すると、僕の隣で遥がむっとした表情を見せる。




「さすがにダンジョンを広げすぎじゃないですか? ここまで広いと冒険者の方が次の階層に行くのに時間がかかってしまいそうです」


「ダンジョンは冒険者を排除してなんぼだよね? それならどんどん倒していこう!」


「そういうわけには行きません。ダンジョンにはいかに冒険者の人たちに魅力的に見えて、入って来やすいか……。その辺りの計算もあるのですよ。奏さんはその辺、きっちり計算されて、冒険者の人たちが進んで入ってくるように仕向けておられましたけど……」


「あ、あははっ……」




 なんだろう、この遥の僕に対する過大評価は……。

 そんなこと一切計算したことがないのに……。

 むしろ、その場その場の行き当たりばったりなのは遥が一番よく知っていると思うのに……。




「それなら問題ないよ。この階層をうーんと広くして欲しいって言うのは奏さんの頼みだからね!」


「本当なのですか?」




 遥がグイッと僕に近づいて聞いてくる。




「えっと、た、確かに本当だよ? ここはモンスターを少なめにして、迷路で迷わせる感じにしようかなって……」


「なるほど……、魔物が少なかったら確かにストレスは感じにくいですね」


「エリシャはたくさん魔物を倒したいよ?」


「それはエリシャが一人で魔物を倒せるようになってから言いましょうね? でも、ただ広いだけのところはストレスがなくても歩くだけで憂鬱になるかと思いますが……」


「うん、だからここにいる魔物はあまり見たことがないものにしようかなって。ほらっ、ドラゴンでもダンジョンに配置するのは大変だったでしょ? それならウーンと大きい魔物を配置してみるって言うのも楽しいかなって。魔物を眺めていたらちょうどいいのがいたんだよ。お城型の魔物。キャッスルゴーレムっていうのが――」


「あ、あの魔物は本物の西洋のお城ほどのサイズがあると聞きますよ? だ、ダンジョン内に配置できるものなのですか?」


「うん、それなりのサイズがあればダンジョンでも配置できるみたいなんだよ。だからせっかくだし配置してみようかなって……」


「なるほど……。でも、まだ三階層までしか攻略が進んでいませんよね? 六階層まで急ピッチで作っていく必要があるのでしょうか?」


「それは私が説明するよ。今度Sランクパーティーがこのダンジョン攻略に乗り出すらしいんだよね。そこでうまく撃退できたら、このダンジョンの評判もあがるって言ったら、奏さんが急にやる気になってね……」


「そういうことですか。それならもっと早く言ってください。キャッスルゴーレムが一体だと面白みに欠けますね。いっその事、三体くらい配置した上で、回りに城壁代わりのゴーレムを大量に配置して、城下町代わりに爆発する住居とかも設置しましょう!」

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