第18話:ダンジョンマスターによる最速、最高率レベルアップ!?
僕たち三人はパーティーを組み、カナタダンジョンに挑むことになっていた。
とはいえ、自分で作り上げたダンジョン。
さすがに僕が先頭を歩くと迷うことなく、最下層への最短ルートを通ってしまう。
普段ならそれでいいのだけど、今回の目的はレベル上げ。
特に僕とエリシャのレベル上げがメインなのだから、マスタールームへと行っても仕方がない。
だからこそ、移動はエリシャに任せていた。
のだが――。
「ま、また行き止まり……」
「えっと、そろそろ2階層まで案内しようか?」
「い、いえ、エリシャがちゃんと案内します。大丈夫です! もう場所は覚えました!」
そう言いながら再び同じ場所の行き止まりへとたどり着くエリシャ。
しかも、この間に魔物は全く遭遇していない。
さすがにこの状況は見ていられなかったので、こっそりモニターを操作して魔物を移動させる。
1階層にいるのは普通のスライムたち。
さすがにこのくらいなら僕でも倒せる相手だ。
「わわっ、魔物だよ!? た、戦う準備――」
エリシャが全てを口に出す前に遥が火の玉を飛ばして、スライムを消し炭に変えていた。
「――次にいきましょうか」
「えっと、ちょっと待って……。こ、これ、経験値って……?」
「もちろんみんなに入りますよ。普通のスライムなら1しか貰えませんけどね」
「経験も何も見てただけなんだけど……」
「それでレベルが上がりますから……」
「うーん、ならいいのかな?」
「良くないよ!? え、エリシャ、剣も構えてないよ!?」
「さすがにスライムだと効率が悪いですね。スラ妖精をお願いしても良いですか?」
「う、うん……、それはもちろんいいけど……」
「なら、もう少し広い場所に行きましょう。1階層のボス部屋とか良くないですか?」
「さ、さすがにそれは問題がありそうな気も……」
「ボス!? エリシャが戦うよー!!」
「――頑張って下さいね」
遥の言葉に笑顔を見せてくるエリシャ。
そして、遥が先行して、僕たちはボス部屋へと向かって行った。
ただ、そこで起こることはある意味予想通りで――。
◇◇◇
『如月奏のレベルが2に上がりました』
モニターに表示されるその言葉と、目の前で消滅していくオークの姿を見て、僕はただ苦笑しか浮かべることができなかった。
今までのスライムと同様に一撃で倒されるオーク。
それをただ眺めていただけの僕たち。
「ま、また何もできなかったよ!?」
「オークは弱いですから……」
「そ、そんなことないよ!? このダンジョンのNo.3だよ!?」
「……今倒したのはスライムですよ?」
「さすがに、それで誤魔化されないよ……」
「あっ、ただのスライムだったんだね!?」
エリシャが普通に信じてしまっていた。
「ち、違うよ!? 今のは遥さんの冗談だからね!?」
「私はいつも本気ですよ?」
「えっ、えっ? ど、どっちが本当なの?」
困惑するエリシャが僕と遥の顔を見比べていた。
「と、とりあえず、スラ妖精をこっちに移動するから、エリシャは戦う準備をしてね。今度こそ遥さんより先に倒すよ」
「うん、頑張るね!!」
エリシャが大剣を構える。
いや、プルプル震え、必死に大剣を持ちあげているだけに見える。
こんな状態で動きの素早いスラ妖精を相手にできるはずもなく、やっぱり全てを遥が倒すことになった。
◇◇◇
『如月奏のレベルが10に上がりました』
あっという間にレベルが10になってしまった。
何もしていないのに……。
「な、何もできなかった……」
モニターを見ていると、エリシャも僕と同じくレベルが10まで上がっていた。
ただ、相変わらず大剣の適性はあがっていなかった。
―――――――――――――――――――――
【エリシャ・ラングリッチ】
レベル:10 性別:女 職業:冒険者(ランク:F)
HP:12/12 MP:49/49
筋力:2 耐久:2 魔力:48 精神:27 速度:12
スキル:【初級魔法(レベル:1)】【支援魔法(レベル:1)】
―――――――――――――――――――――
その分、魔法の適性がとんでもないことになっている。
このまま伸びていくと、遥を優に超えそうな程に魔力特化したステータス……。
しかも、新しく支援魔法すら取得している。
「エリシャって魔法使いとしてやっていく気はないの? 絶対そっちの方が合うと思うけど?」
「確かに魔法少女っぽい服装が似合いそうですよね? 用意しましょうか?」
「あっ……、えっと、エリシャはこの大剣しか使う気はないから……」
「でも、大剣のまま魔法少女っぽい服装をしたら大丈夫ですよ!」
遥が力説してくる。
「あっ、それもそうだね!」
「ますます大剣が使いにくくならないかな? も、持ってるだけなら良いんだけど……」
「とりあえず、エリシャちゃんは魔法の練習もしてみませんか? 大剣を使うにしても、魔法が使えるに越したことはないよね?」
「それもそう……かな? うん、それなら使ってみるよ!」
うまく遥が誘導してくれた。
これでエリシャが魔法を使ってくれるはず……。
「それじゃあ、さっそく使い方を――」
「ファイアーーーー!!!!」
遥が言い切る前にエリシャが初級魔法を使う。
すると、巨大な火の玉が現れて、巨大な音を鳴らして壁に衝突していた。
ドゴォォォォォン!!!!
初めての魔法がこれほどの威力……。
僕は思わず目を点になって、壁のこげ後を眺めていた。
「うーん、やっぱり威力が低いよね……。大剣で切る方が強いかな?」
「そ、そんなことあるはずないでしょ!? と、とりあえず、今日はしばらく魔法を使ってくれるかな?」
「お兄さんの頼みなら仕方ないね。それならしばらくは魔法を使うね」
「お、お願いね……。そ、それじゃあ、次の魔物を召喚するからね」
僕は苦笑を浮かべながら、モニターを操作していた。
そして、DPの許す限り魔物を倒し続けると、夜には二人ともレベル20まで上がっていた。
「こ、こんなに簡単に上がるなんて……」
「ひたすら経験値の多いスラ妖精だけを倒し続けたから、このくらい普通ですよ」
確かに遥の言う通り、ひたすらスラ妖精だけを召喚していた。
そして、遥が一撃で倒していた。
「うぅぅ……、1匹も倒せなかった……」
「仕方ないよ。スラ妖精に魔法は効きにくいから……」
全くダメージを与えられないわけではないが、通常の攻撃に比べるとそのダメージは微々たるものだった。
だからこそ本で殴っていた遥の討伐速度には及ばなかった。
「その本って武器にもなったんだね……」
「はい、意外と重さがあってしっくりくるのですよね」
笑顔を見せながら言う遥に僕は苦笑を浮かべるしかできなかった。
「それにしても、ずっとDPが切れないなんて思わなかったよ……。どこかで終わると思ってたのに……」
「奏さんが自分のレベルを言うからですよ。一日でレベルがどのくらい上がるのかの指標にされてましたよ」
「僕もこんなに上がるとか思わなかったからね。みんな、今日はもう終わりだから投げなくていいよ。一日中、耐久なんてしないからね?」
「エリシャは一日してもいいよ?」
「うん、お子様はもう寝る時間だからね?」
「むぅ……、エリシャは子供じゃないのに……」
エリシャの膨れっ面を最後に、配信を終了させていた。
―――――――――――――――――――――
【
レベル:20 性別:男 職業:ダンジョンマスター(ランク:F)
HP:30/30 MP:50/50
筋力:20 耐久:20 魔力:50 精神:40 速度:40
スキル:【ダンジョンステータス(レベル:1)】【ダンジョン創造(レベル:1)】【ダンジョン把握(レベル:1)】【初級魔法(レベル:1)】
所持DP:1,205
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