全編を通して、硬質で重苦しい語り口。その中で、辛かった予備校初日の部分だけが、色彩や温度、光、匂いを伴って妙に生き生きと描かれているのが印象的でした。執拗な描写とうんざりする程ジリジリと進む時間。一日を共有した気になって読み進めると、再び著者の固く閉ざされた部屋から漏れる独り言を扉の前で聞くことになる。読みやすいとは言い難いですが、非常に魅力的な作品でした。
頭の中ではしっかり冷静な分析が出来ているにもかかわらず、口から出る言葉が洗練、端的になってしまっているのは、主人公の頭が善すぎるためか。
好きな自分も嫌いな自分も名前を付けて保存する。その一覧に価値がある。
何かしらのプレッシャーに包まれた時期、そうだったのかぁ。十色十人、続編を読んでみたいです。
登場人物の展開に期待!
もっと見る