第17話



 そうこうするうちに時間はすぎて、私は気づいた。

 全てを諦めるのに勇気などいらない。

 頑張らないことを日常にしてしまえば、気づいたときには全てを諦めざるを得ない状況になっている。私はもうすでに、全てを諦めてしまったあとのような生活をしている。

 予備校は高校ではない。行かなかったところで高卒の肩書きは変わらないし、いったところで大学に行けるとも限らない。「予備校を卒業する」なんて言葉はないのだ。


 だから別に、行くか行かないかでここまで悩む必要はないのではないか。行かないことを悔やまなくてもいいのではないか。大体、ろくに予備校にも通えない人間が大学に行ってどうなる。同じことを繰り返すだけだ。大学に入って、それで途中でやめるなんてことになったら、それこそ時間と金の無駄だ。どうせ駄目になるのなら、早めに見切りをつけたほうがいい。それでもなんとか這いつくばって卒業できたとしよう。でもそれで何になる。そんなに挫折を繰り返して、その度に心は歪んで、症状は悪化していく。


 真正面から課題と向き合えば変わるのではないか。そう思って小学生のとき私は一度、確かに変わった。このままずっと大丈夫かもしれないと、信じられるまでになった。だが、中学校に入って、その私は死んでしまった。それでも高校に入れば変わるかもしれない。もう一度外に出てみよう。その結果はもうすでに書いた。それでも様々な助けによって立ち上がることが出来て、今に至る。


 状況はどうだ? 前より強くなっていると思えるか。

 そんな馬鹿な。むしろだんだん、ひどくなっていることに気づいた。

 充電が切れる間隔も、沈む深さも、活力も笑顔も全て。

 私は歳を重ねるごとに、弱くなっている。

 過去の因果が全て現在に集まって私をさいなむ。


 上昇と下降を繰り返す折れ線グラフは、確実に右肩下がりになっている。それでもいつか上がることを期待して投資を続けるべきなのか。取り返しがつかないと気づいたときの負債は、私の命だけで返済できるのか。


 そして残念ながら、私は父の予言どおりの状態になった。予備校に行くのも受験勉強も、もういやだ。したいとも思わないし、しなくてはいけないとも思わない。

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