ガチ心霊は結構あっさりしている件

@shinnreijun

第1話 後部座席

 私は都内でタクシー運転手をしている。


 タクシー怪談のテンプレのような事があったので綴っていこうと思う。


 夕方から夜になり環七を走行していた。この時間にお客様が多く居られる場所に向け進んでいる。今日はやけに混む。強く赤く光るテールランプを眺めながら進んでいる。


 ふと気がつくと、正しい姿勢、ハンドルを持つ手も10時10分。お客様が乗車している時のような感じで運転している。ラジオまで消してある。


 これらは全て私が行なっているのではあるが、お客様が乗っていなければラフな格好で運転するもので不思議だと思っていた最中。


 背後から気配がし、見やるとリクルートスーツに身を包んだ若い女性が乗っている。セミロングの髪を顔にかかるように垂らしながら、うつむいて座っている。生きている人間と変わらず、だ。


 見え方としては、視力と脳内に浮かぶ像がシンクロしたような、しかし実在の人間と遜色なく見える。


 おや?と思ったが早いか消えてしまった。気配もない。よく聞く怪談のそれであり、怖さは全くない。


 その日、手上げで五千円以上の仕事が何件も来る。チップも合計一万円いただけ大変ついていた。


 もしかしたら彼女が運賃を払ってくれたのかな?などと思うのだが、どうだろう。また是非ご乗車願いたいものである。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ガチ心霊は結構あっさりしている件 @shinnreijun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ