デスゲーム参加中で殺人事件の推理を知ろって!?

ちびまるフォイ

二重に殺されそう

絶海の孤島にそびえる洋館に送り込まれたのは奴隷たちだった。

彼らの頭には爆弾が取り付けられている。


『人間の脳は本来の機能の30%しか解放できていない。

 生きるか死ぬかのギリギリのときに100%の力が発揮される』


「ふ、ふざけんな! 奴隷から解放するって話だろ!」

「なんでこんな場所に送られなくちゃいけないんだ!」


『ここで起きている殺人事件を解決できたら、君たちは晴れて自由の身だ』


「殺人事件……? 推理なんてやったことねえよ!」


「爆弾で十分追い詰められているのに、殺人鬼のいる洋館に送られるなんて!」


「これからどうすればいいんだよ!」


奴隷たちは不平不満を叫んだが、デスゲーム主催者から返事はなかった。

もはや奴隷たちに残された選択肢はひとつ。


「やるしかない。ここの殺人事件の犯人を見つけて脱出するんだ!」


いわくつきの洋館では、かつて発生した殺人事件になぞらえるように

舞台俳優たちが次々と命を奪われていた。


が、そんなことは寄せ集めの奴隷たちに知るはずもなく

命の危機に追い込まれた奴隷たちは必死に探偵のまねごとを続けいてた。


「だ、ダメだ! まったくわからない!」


「そもそも犯人につながる証拠を素人が見つけられるわけない!」


「脳の100%を解放するとか無理だろ!」


奴隷たちはこのまま不毛な推理を続けても、

洋館のどこかに潜んでいる殺人鬼に目をつけられてしまうのは危険。


やっているのは探偵ごっこでも真相に迫っていると気づかれて殺されてはたまらない。

デスゲーム以外にも死ぬルートができてしまう。


「どうせ死ぬならもう適当だ! この館のメイドが犯人だ!!」


迫る死の恐怖に耐えきれなくなった一人があてずっぽうでメイドを指差した。


「ええ!? わ、私でございますか!?」


「そうだ! あんたはこの館で誰よりも口数が少ないし、善人そうな顔をしている!

 そういうやつがたいてい真犯人なんだよ!」


「そんないい加減な!」


「いい加減でもなんでもいい! あんたが犯人かどうか確かめさせてもらう!」


奴隷のひとりが近づいたとき、爆弾がその頭をふっとばした。


「あ……」


他の奴隷たちは言葉を失った。


『理由がないまま犯人を特定したり、推理に矛盾がある場合にも爆弾は作動する』


「それ先に言ってくれよ!」


奴隷たちは訴えたがやはり返事はなかった。

ちゃんと推理しなくちゃいけないのに、探偵素人の奴隷たちには犯人のしっぽすらつかめない。


そこで奴隷のひとりがそっと耳打ちした。


「なぁみんな聞いてくれ。このまま探したってどうせ見つからない」


「そんなことわかってる。でもやるしかないだろう」


「いいアイデアがある。こっちで犯人を仕立て上げちゃうんだよ」


「はぁ?」


「証拠をこっちで準備して犯人にするんだ。そうすれば間違えることはない」


「だ、大丈夫なのか?」

「このままできもしない推理を続けるのとどっちがいいか考えみろよ」


こんなにも追い詰められているのに脳100%を解放できてないことから奴隷たちは計画にのった。

館にいる全員が寝静まる深夜。



殺人現場にさまざまなものや証拠をでっちあげると、

寝ている館のオーナーを奴隷たちは殺害した。


「館のオーナーを真犯人にするのはいいけど、殺す必要なかったんじゃないか」


「バカ。こっちが推理しているときに矛盾つかれたら終わりだろ!」


「た、たしかに……」


「早く凶器を机にひそませておけ! 朝になったら大変だ!」


犯行に使ったと見せかける凶器を部屋にセットしていると、

引き出しの中から館にかつていたとされる覆面殺人鬼の仮装一式が出てきた。


「え……これって……。まさか本当にオーナーが真犯人だったのか?」


「こりゃついてるな。偶然にも本当の犯人を見つけられたんだ」


奴隷たちは意図せず真犯人をあやめてしまった。

犯人の自白タイミングを失ったが奴隷たちにはどうでもいいことだった。


翌日、館の人たちを食堂に集めると奴隷たちによるガバガバ推理が披露された。


「ということで、マスターキーを持っている館のオーナーは自由に出入りして犯行に及んだのです!」


「それを気づいたのは私です!」

「マスターキーの指紋に気づいたのは俺!」


「そう! この事件は奴隷みんなの推理が線で繋がれたことで解決したんです!!」


奴隷は全員の功績であることを聞こえよがしに言ってみせた。

本来の事件の全容を解明できていないが、真犯人を当てることには成功していた。


『どうやら第一の事件の真犯人は見つけたようですね』


「さあ! 約束どおり爆弾を解除してくれ!!」


『ええ、もちろんです。ですが事件はもうひとつあるでしょう?』


「そんなの聞いてないぞ。事件はひとつのはずだ!」


『今回のでっちあげ推理をした真犯人を見つけ出すのが残っていますよね』


奴隷たちはすぐにお互いを指差した。


「こいつが最初にいい出したから、こいつが真犯人だ!」

「実際にオーナーを殺したのはこいつだ! 私は無実だ!」

「証拠を準備したのはあいつだ! 俺は犯人じゃない!」


誰もがお互いを真犯人だとし同時に自分は無実であると叫んだ。



『よろしい、では矛盾が生じたので爆弾を起爆する』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デスゲーム参加中で殺人事件の推理を知ろって!? ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ