第556話 農業指導
麗の活躍により、
これで教国の横槍や緩い洗脳に対抗することが出来るだろう。
洗脳と表現していて紛らわしいが、これは闇魔法による強固な洗脳のことではない。
宣教師による巧みな話術や人を騙して誘導する詐術により思い込まされたもののことだ。
一種の洗脳テクニックなのだが、これでも魔力が籠っていると、ステータスに記述されるぐらいの状態異常と化すのだ。
そのようなものなため、闇魔法の洗脳による上書きではなく、麗の解呪魔法で解除可能だったのだ。
そんな洗脳状態が解けると、領民たちは自分たちの行為を恥じて懺悔するようになった。
その懺悔の気持ちを引き受け許す受け皿が真女神教であり、恨みつらみの矛先は教国へと向けられるように誘導された。
まあ、やってることは教国と一緒だが、その志が違うから勘弁して欲しい。
これで一件落着となるところだったのだが、この領地には大問題が残っていた。
日本では人件費高騰など、機械化した大規模農業のメリットがあった。
だが、この世界では、労働力=稼ぎ頭でもある。
人を使わずに収穫を上げれば、それだけ困窮する領民が出て来る。
まあ、そこが問題ではなかった。
機械化出来なかったのだ。
機械化出来なければ、大規模な農地の管理が行き届かない。
それを人で代替しようとしたために、本来の労働力が生かされない結果となったのだ。
人は、自分で管理できる範囲でしか仕事を熟すことが出来ない。
ましてや、
そこに優位など存在しやしなかった。
みどりさんの力で荒れた農地を復活させた。
まず、大規模すぎて管理が行き届かなくなった畑を元の個人管理に戻した。
あの失敗した
農家さんが個々に管理できる範囲で作業をしてもらうように戻した。
残念ながら、元の農地の大きさや、家屋が建っていた場所に戻せるわけもなく、そこは税負担の台帳により、区割りせざるを得なかった。
だが、元に戻せば良いというわけでもない。
彼らから奪った失われた日々の補填をしなければならない。
今から収穫期までの間に、農地を作物で満たさなければ、補填とは言えないのだ。
そこでみどりさんの種子生成スキルを使って、日本の高性能野菜の種を生成してもらった。
日本の高性能野菜の種を侮ってはいけない。
交配によって作られた品種改良の結果は先人の汗の結晶なのだ。
それは原種から改良され、育て易く美味しくなっているのだ。
最新の種にはF1種という一代限りの種もあるが、そこは今後の事を考えて古めの種を用意した。
みどりさんによる種生成の援助は1回だけだ。
種を取って播けば、次代も同じものが作れるようなものを与えなければならない。
自家増殖だが、それを禁止する法律はこの世界までは及ばない。
先人の技術に感謝を捧げることで勘弁してもらう。
その高性能野菜の種を撒き、みどりさんが魔力で促成栽培を行う。
この世界、肥料に加えて魔力で植物が育つ。
みどりさんの植物チートの力ならば、このような促成栽培など容易なのだ。
「荒れた畑が復活しただ!」
「もしや、あなた様は豊穣の神エッタ様の使徒様でねえだか?」
その結果が農民たちのみどりさん崇拝の声になる。
だがこの促進栽培は、今回のみのサービスだ。
次からは農業指導員が教える堆肥の作り方を学んでもらい、次の収穫に繋げてもらう。
「凄いっす。魔法でやれば良かったっす」
「
学んでいないのは
みどりさんの協力は、今回だけなんだからな。
大人しく内政官の言う事を聞くんだぞ。
だが、高性能野菜の種は今後この領地の宝になるはずだ。
美味い野菜が収穫されたら、ぜひ買い取りたいところだ。
生態系の破壊?
そんなの召喚勇者が何百年前からいた時点で気にすることではない。
既に文化侵略も進行しているんだからな。
BLとか薄い本とか。
ああ、勇者排斥したくなった理由がなんとなく理解出来たぞ。
だからと言って、おめおめと排斥されるわけにはいかない。
元の世界に返せないならば、勝手に連れて来た責任はとってもらう。
俺たちが、この世界で安心して暮らせるようにする。
それぐらい、この世界も譲歩してくれても良いじゃないか。
とりあえず、教国の宣教師に良いようにされたのは、
農業国のように教国の聖女が出て来たらわからないが、今後重点的に警戒することは可能だろう。
「そういえば、教国の聖女って、どんな存在でどんな能力があるんだ?」
教国に全く興味が無かったから、そこまで詳しくは知らないぞ。
もし麗のような力があるのならば、それはそれで脅威だと言える。
そもそも農業国の農地の汚染は、何が原因だったのだろうか?
毒? 魔法? 本当に呪い?
呪術的なものが出来るのならば、脅威度が上がりそうだな。
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