第554話 偽宗教団体設立2

お知らせ

 前話の第553話を体調不良の状態で書いたため、かなり文章のおかしい部分がありました。

訳の分からない文章ですみませんでした。お詫びします。


 記憶が少し飛んでいたので、続きを書くためにと読み返したところ、これはまずいと気付き修正を加えました。

修正箇所を要約すると『農民たちは勇者を敬っているので、一揆に至るのは異常だよ』という感じです。


 気にならなかった方は、読み返す必要はないかと思います。

重ねてすみませんでした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 星流ひかるの領地に向かうのは、俺、麗、オスカル、アンドレ、そして当事者の星流ひかる、さらに追加の食糧援助を行うための農民解放された元奴隷たちだ。


 彼らには荷運びの他、農業指導員の役割も担ってもらうつもりだ。

一揆は、教国の宣教師による軽い洗脳のせいだと思われる。

だが、その原因はそもそも星流ひかるのやらかしなのだ。

そこもフォローすることで、さらなる人心の支持を集めるつもりだ。


 城の建築が終わったため、アンドレも久しぶりに遠出することになった。

いま建築中の獣人たちの家などは、ゴーレムたちにお任せだ。

オスカルとアンドレは所謂聖騎士の扮装で参加する。

2人には常に麗の後ろに控えていてもらう。

これは麗の聖女としての権威付けみたいなものだ。

こういった件ではハッタリも必要なのだ。


「疑似転移に使う眷属は……。

みどりさん、頼めるかな?」


「お任せくださってよくってよ。

わたくし、向こうでは農業指導もいたしますわよ。

おーっほっほっほ」


 偽宗教団体一行には、今回多数の農業指導員が参加している。

その人数を一気に疑似転移させるには、巨大な眷属に触れさせるしかない。

疑似転移は、転移させたい者たちを眷属召喚に巻き込むことで成立する。

その巻き込ませる条件が、眷属に触れている事なのだ。


 だが、巨大眷属と言えば、ドラゴンや巨大魔獣になってしまう。

それは人の目からは災害級の魔物にしか見えない。

そんな眷属と共に転移するなど、現場に新たな問題を持ち込むに等しい。


 そこで白羽の矢が立ったのが、みどりさんだ。

みどりさんは、グラスバンパイア吸血草Qという魔物で常に人化している。

そのスキルには触手の操作がある。

つまり、1人1人に触手を伸ばして触れさせれば、大人数の疑似転移が可能なのだ。

そしてみどりさん本人の姿は人型で、魔物だが農民たちに不安を与えない。

さらに植物を操るスキルがあるため、農業指導や土壌改善まで指導出来る。

まさに今回の参加者としてトップレベルの適材だった。


「では、結衣、行って来るよ」


「気を付けてね」


 俺は嫁の見送りで、星流ひかるの領地に向かう。


「みどりさん、触手を」


「お任せあれ」


 みどりさんが参加者全員に触手を伸ばして触れる。

これで全員がみどりさんの付属物と認識された。

みどりさんが触手を触れさせた人物が持っている荷物――これが荷馬車大でも――も付属物になっている。

これ、眷属にしがみ付くよりも、大人数での転移に適しているぞ。


「【眷属遠隔召喚】みどりさん、星流ひかるの領地!」


 俺が眷属遠隔召喚を使うことで、みどりさんとその付属物が遠隔地に召喚され、それが疑似的な転移になる。

今まででは有り得ない巨大魔法陣がせり上がり、それが俺の視線を越えたところで、景色が星流ひかるの領地へと変わった。

そこは領主館の転移用広場だった。


「誰も問題ないな?」


「「「「はい」」」」


 変則的だったが、みどりさんを使った疑似転移が成功した。

これは大人数にはかなり使い勝手が良いぞ。


星流ひかる、まずは領兵を治療するぞ。

救護所はどこだ?

内政官はいないか?」


 星流ひかるは内政官が逃げたと言うが、星流ひかるが頼りにならないため、どこかで独自に動いているに違いない。

そんな逃げるような内政官を、俺は付けたつもりはいない。

星流ひかるのサポートはからの命令だ。

逃げたら一生アーケランドには住めなくなる。

そんな簡単なことも解からないようなアホは採用していない。


「これは陛下! こんなところまでわざわざ恐縮であります。

そして閣下。なに逃げてるんですか?」


 大人数が転移して来たこと、そして俺の声が聞こえたことで、内政官が慌ててやって来たようだ。

星流ひかるが逃げた後、この領主館が維持されているのも、内政官が頑張っていたおかげだろう。

星流ひかるに対する態度が領主に対するものではないが、そこは星流ひかるなので仕方がない。

この領地は内政官でもっている。間違いない。


「違うっす。(助けを)呼んできたっす」


 星流ひかるが必死に俺たちのことを指差して言い訳をする。

たしかに、助けを呼んで来たように見える。

だが、星流ひかる、おまえ元領主屋敷に隠れてたよな?

あそこに何日いたんだ?

結果オーライは、俺が気付いたからだぞ?

そこは後で追及するからな。


「なんと、陛下自ら救済にお越しいただけるとは光栄の極み。

このセドリック、感謝に打ち震えております」


 内政官はセドリックという名前だった。

継承権の無い貴族家の四男以下という立場だが、王都の学院を卒業しており、家を捨て内政官としてこの領地に赴任したのだ。

逃げる場所なんか元々無いのだ。


「挨拶は良い。

怪我人を治療する。

救護所に案内しろ」


「しかし……」


 セドリックが戸惑いを覚えたのは、その怪我人の人数や、怪我の程度が思わしくないからだろう。

治療には上級ポーションを必要とする者もいる。

それが気になっての躊躇いだろう。


「俺の嫁の聖女を連れて来た。

早くしろ!」


「!!!」


 俺が麗を紹介すると、セドリックが文字通り飛び跳ねた。

よほど驚いたのだろう。

聖女は教会に認定されるもので、教国にしかいないと思われているのだ。

つまり麗の存在は、教会の名ばかりの聖女ではなく、女神様が行うと言われる職業認定による本物・・でしか有り得ないのだ。


「死の淵を彷徨う方もいるのでしょう?

早く案内なさい!」


「こちらです」


 麗の圧と背負うオーラにセドリックが有無を言わさず従った。


 そして救護所では聖女の奇跡が起きるのだった。


「聖女様、本物だ!」

「ありがたや、ありがたや」


 この力を見て、麗を聖女ではないなどと思うものは1人もいないだろう。

これを領民にまで広げ、満足な治療も出来ない教国の宣教師を追い落とすのだ。


「次は領民を癒すぞ」


 これからは村々をまわって地道に治療していくことになるだろう。

一揆勢もさすがに領兵とぶつかってはただでは済まないだろうからな。

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