第546話 他人任せ
そこには、偶然カドハチが納品に来ていて、面談することになった。
王家御用達はお俺の命令通りに機能しているようだ。
「魔の森の北にある海で製塩事業ですか。
アーケランドは海に面していなかったので、塩は戦略物資でしたからな」
「魔導具が高性能すぎて、それ以上に塩の大量生産が出来ると思うぞ。
それこそ輸出できるぐらいに」
俺は他国への塩の輸出をカドハチに任せようと話を持ち出した。
皇国も北の海に面してはいるが、皇国の北側は山脈があって平地は極地の方まで無いらしいからな。
海の無い
「しかし、塩はあまり高く売れません。
塩は海塩、岩塩、塩湖、塩井ともう1つ入手方法があります」
塩の入手方法がもう一つあるとカドハチが言う。
それはモンスタードロップだった。
ある魔物を聖なる剣で討伐すると、稀に塩となって崩れるのだという。
たしか宗教的な話で、死んだ時に塩になるというのがあったような?
そのような感じで、不思議現象により物質返還が起こって塩化するようだ。
ファンタジー世界でなければ有り得ない。
魔物を構成していた物質どこ行った?
元素変換のエネルギーどこ行った?
まあ、倒した魔物からドロップ品が出ること自体が謎現象だから、気にしたら負けか。
それこそ、
「そうか、海が無くてもダンジョンからも塩は入手できるのか」
「アーケランドも冒険者から細々と購入していました」
戦略物資を他国に握られているというのは問題だ。
アーケランドも冒険者に依頼して王都にある訓練ダンジョンで塩を手に入れていたらしい。
「ダンジョンならば……」
うっかり、俺がダンジョンマスターであるという話をしてしまうところだった。
さすがにそこは秘密にしておこう。
他にも魔物はいろいろな素材をドロップする。
貴金属、宝石、お金、武器、防具、魔導具、食肉などなど。
そして俺はダンジョンマスターだ。
有り余るDPを使えば、望みの魔物に望みのドロップ品を持たせて、ドロップ率を上げたうえで出来レースで討伐することが出来る。
つまり、欲しいドロップ品など、いくらでも手に入れることが出来る。
それが塩だろうが貴金属だろうが魔導砲の素材だろうが。
それを実現したのが、魔宝石、魔石、世界樹の枝、ミスリルといった魔導砲の材料となる品をドロップする魔物部屋だった。
そこへとアーケランド正規軍の騎士団を送り込むことで、特定の素材を容易に手に入れることが出来るのだ。
この方法ならば、教国よりも安く大量に魔導砲を製造出来るだろう。
「そういえば、王都商業ギルドと冒険者ギルドに、珍しい素材の収集依頼が出ていました」
「それは魔宝石、魔石、世界樹の枝、ミスリルのことか?」
俺は正規軍の騎士団に依頼しているので、ギルドを通していない。
国の仕事として騎士団が給料の範疇で素材収集をしてくれるのだ。
まあ、特別手当ぐらいは出してあげても良いけどな。
「仰る通りです。
まさか、それらを
カドハチは
おそらく、その依頼金額は国レベルで出すような額になっているはずだからな。
「いや、
名前を変えているのだろうが、それは教国の依頼だ」
「素材的に攻撃用魔導具というところですぞ?」
さすがカドハチ、良くわかっている。
「そうだ。戦争協力となるから提供しないでくれると助かる」
「かしこまりました」
教国が戦争準備で素材を集めてるということは、カドハチにならば教えても良いだろう。
なまじ能力があるので、気付かずに取引してしまうかもしれないからな。
それにしても、フロント団体を使って名前を伏せて依頼を出すとは、人を騙しても平気な宗教って一体何なんだろうね。
そこだけで似非宗教だって気がするよ。
それも相手が魔王や魔人だからとかの理由を付ければ、人を騙すのも正義ってことになっているのだろうか。
それでせっせと戦争の道具を作る。
何に使うつもりなのか……。怖いなぁ。
「そうだ、魔導具の組み立てが出来る、それも守秘義務を守れる工房を知らないか?
こちらも教国に対抗して魔導具を作る。
基幹部品は俺が作るが、それ以外の工業的な部分は発注したい」
「お任せください。
腕の良い工房を手配いたします」
ああ、良いな。
他人に仕事を投げられるなんて。
「素材は騎士団が集めている。
工房が決まったら引き渡せるように命じておこう」
これで俺がやるのは、心臓部の魔導回路作成や陣魔法の付与だな。
ここは流石に外には出せないからな。
さてと。次は漁業か。
まず何が獲れるのか調べないとな。
加えて漁業従事者と船と漁具と魚介類を新鮮なまま運ぶ輸送手段が必要か。
冷蔵庫かマジックバッグがいるな。
あ、北の海からの輸送路がいるじゃないか!
いつまでも俺と陽菜の転移頼みでは産業として駄目だ。
ああ、まだまだやる事が山積みだぞ。
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