第529話 逸れ獣人探知
レッドドラゴンを纏って【探知】をかけたところ予期せぬ事が起こった。
なんと能力にブーストがかかって、この大穴の中全体を探知出来てしまった。
今までは纏った眷属の能力が使えるということが漠然と判明していた。
そこに、俺の能力を増幅する効果があることが判ったのだ。
いや、それよりも、その【探知】結果が重要だった。
この大穴の中全体が探知出来たというが、それは大穴の壁までということを意味し、壁が無ければもっと先まで探知可能だった。
おそらく高度を上げれば、台地の上も探知出来たことだろう。
いや、もしかすると、その時は大穴の中が探知出来ないかもしれない。
後で試してみるか。
話が逸れたが、大穴の中の魔物の分布や獣人の位置が【探知】により全て丸わかりだったのだ。
青い点が5つ。これは2つ寄り添っているのが
バラバラに移動している3つがさちぽよ、オスカル、紗希の3人だろう。
そのバラバラに移動している3つの青には緑の点が2つと1つずつ重なっている。
これは3匹の飛竜とさちぽよの眷属のゾクゾクだろう。
そして
さらに黄緑の点が複数ある。これが獣人たち。
さらにその獣人たちを囲むように3つの緑の点。
俺の眷属で獣人の村を警備しているグリーンドラゴンとアロサウルス2匹だろう。
これで仲間が青い点、眷属が緑の点、獣人が黄緑の点だと判明した。
それが平面地図に無数の点が分布した映像として見えていた。
その俺を中心とした地図には、複数の黄色と赤い点があった。
もうこれでもかと大量にあった。
探知が優れていたために、あらゆる魔物が黄色と赤い点で表示されていたのだ。
「黄色と赤い点の違いは何だ?」
魔物には大まかに分類して2種類いる。
獣が魔物化した食べられる魔物と、生まれながらの魔物で食べられない魔物だ。
その食べられる魔物は、野生動物としての本能で襲って来るので、身の危険を感じてまでは襲ってはこない。
だが、食べられない魔物は人への悪意で積極的に殺しに来る。
これが色で分けられているのか、それともこちらへの悪意の有無で分けられているのか、そこが良く解からなかった。
「とりあえず、黄色と赤い点の主を発見して調べれば良いか」
まず一番近い黄色い点に向かってみた。
だが、その黄色い点が逃げるように遠ざかる。
「あー、レッドドラゴンのオーラに怯えてるのか?」
そして予期せぬことが起こった。
「あ、黄色が赤に変わった」
その黄色い点を追い込んだ結果、【探知】の結果が赤い点に変わったのだ。
どうやら、これはこちらへの敵意を赤で示すもののようだ。
魔物を追い詰めた結果、命の危機を感じて敵意を持たれたのだ。
「ならば、最初から赤い点は、敵認定をこちらがしているか、向こうがしているということか?」
今回の色の変化は魔物側がこちらを敵と認識したことによるものだろう。
となると、こちら側が危険だ、敵だと認識していても、赤い色になるのかもしれない。
「そういや、アナコンダを捕まえた時、【探知】で種類まで判別出来ていたな」
あれと赤い点を組み合わせてみれば、大猿の位置が判明するかもしれない。
大猿は? そう念じると、赤い点が点滅した。
大量の赤い点の中で、この点滅している赤い点が大猿だということのようだ。
「最初から、こうしておけば良かったのか」
たまにしか使わないからこうなるという良い例だった。
最近は戦争による大規模対人戦が多すぎて、【探知】を使おうなどと思いもしなかった弊害だろう。
大猿は獣人の村の近くに数匹と、大穴の北側壁沿いに多く集まっていた。
その点滅する赤い点の向こうに黄色い点が複数見うけられる。
「これは獣人が壁に開いた穴に隠れているのか?
だとすると危ないぞ!」
それは今にも獣人を襲おうとしている大猿たちだと思われた。
大猿は明らかに統率されていた。
獣人の村を監視し、逸れた獣人を見つけて集団で襲う。
大猿の動きは獣人を襲うという目的で一貫しているように思える。
そこには誰かの思惑があるようにしか見えなかった。
俺は翼を広げると、空に上がった。
レッドドラゴンの飛行能力は飛竜ほど飛行に特化していないのだが、遅くとも飛べないわけではない。
ドーン
そして、空に集合の合図である火魔法の花火を上げた。
こういう時、お互いに通信出来ないのは困りものだ。
眷属の飛竜とは念話が通じても、その飛竜から紗希たちに伝える手段がないのだ。
そのため魔法を打ち上げて集合の合図としていた。
探索を開始してから、あまり時間が経っていなかったため、飛竜に乗った3人は直ぐに俺の元にやって来た。
「何かみつかったの?」
「ああ、【探知】で判ったんだけど、ここから北に向かった壁に大猿が集まっている。
どうやら獣人が隠れている場所を見つけたらしい。
直ぐに向かわないと危ない」
「僕らの方が早い。先行するよ!」
「わかった。行くっすよ!」
「待て、俺も乗せろ」
「じゃあ、私の後ろに!」
「あ、オスカルずるいっす!」
レッドドラゴン纏でオスカルとタンデムで飛竜に乗るというシュールな状態になってしまった。
だが、飛行速度ではレッドドラゴンはタンデムの飛竜に劣る。
ああ、ここでレッドドラゴンの質量は無視して良い。
纏の状態ではなぜか俺の体重分しかかからないのだ。
こうして俺たちは飛竜3匹に乗り、最速で獣人たち救出に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。