第526話 綾たちと合流する
「移動速度的には虫移動か翼竜移動になるか……」
どちらも脚に掴まれて飛ぶスタイルだ。
それが2日間ずっとともなると、あまり気分の良いものではない。
特に翼竜は腕を足で掴まれるので、肩関節への負荷が酷いのだ。
長距離ならば、虫移動の方がマシだろう。
「レッドドラゴンも飛べるけど、あれは遅いからな……」
疑似転移も使えない。
あれは行ったことがあるか、直接目視した場所――遠見スキルなどの魔法的補助がついても可――にしか転移出来ない。
獣人の村は例えハッチの目で見たとしても適用外だ。
ここで、どうして遅いレッドドラゴンでは駄目なのかだが、それは温泉拠点には4日間しか滞在できないという制限のせいだ。
既に2日経ち、そこから3日使って獣人の村に行ったのでは、王都での執務期間に食い込んでしまうのだ。
「
それはアーケランド王として外すことを許されない義務だった。
つまり、最長でも2日で獣人の村まで行き、そこで大猿対策を検討。
直ぐに疑似転移で王都へ戻らなければならないのだ。
30分使って新たなたまご召喚をするか、それとも虫移動でさっさと現地に向かうか……。
竜卵で倍速をかけた場合、1/10ぐらいの確率で飛竜改が出る。
だが、竜卵10個も孵すだけの眷属枠の余裕は無い。
その10個で飛竜が出ないことも有り得るのだ。
「レベルが上がれば、眷属卵に既存の眷属が加わるんだけどな」
翼竜は眷属卵で増やせる。
だが、ユニークモンスターや希少竜となると眷属卵で指定出来ないのだ。
そのギリギリの所に飛竜はいる。
そこそこの数が竜卵から出ているので、次あたりで登録されても良いだろうと思っている。
「いっそ、飛竜よりも高速な竜が出れば良いんだけど……。
ここはたまごショップに怪しいのが無いか見てみるか?」
だが、そこまでご都合主義ではなかった。
そこには飛べるという感じのたまごはラインナップされてはいなかった。
「あー、これは駄目なパターンだ。
虫移動で行くしかないな」
あの峡谷を越えるとなると、相当な高度を維持しなければならない。
虫移動は、それを上空から見下ろす形になるのだ。
高所恐怖症でなくてもちびりそうに……。
「あ、麗が睨んでいる」
これ以上は考えてはいけない。
記憶すら抹消しなければならないのだ。
このような理由で、虫移動は飛竜が眷属に加わった後は人気が無くなっていた。
いや待てよ。そういや纏で意識を持って行かれることが、魔王の身体を得てから無くなってないか?
以前は虫人間のまま戻れないという恐怖と戦っていたが、その心配がなくなったならば、これって虫纏で飛んで行けば良いのでは?
飛竜纏では、その飛行能力も使えていた。
つまり翼竜纏も飛べるぞ。
だが、速度ではカブトンが一番優秀だろう。
その突撃力は、直進であれば負け知らずだ。
「眷属召喚カブトン、カブトン纏!」
俺は久しぶりにカブトンを纏った。
やはり、俺の身体が蝕まれている感覚は無い。
その姿はカブトライダーっぽい。
カブトライダーは羽を広げて飛ばねーよと言われそうだが、外見がぽいだけだからな。
「それじゃ、誰も付いていけないじゃないの」
「いや、さすがに皆留守番だってば」
大猿の群がどれだけ危険でも、この温泉拠点を落とせるようなものではない。
危ない獣人の村になど嫁に行かせられるわけがない。
「何かあったらコンコンに念話する。
いざという時は、コンコンに抱き着けば眷属召喚で呼べるだろ?」
「もう、仕方ないな」
「
背中の羽を高速で羽ばたかせて、カブトン纏の俺は空に上がった。
こんな薄い羽で人の大きさの物体が飛べるなんて物理法則を無視している。
だが、それでも飛べるのが、魔法世界なのだ。
ドラゴンだって、あの巨体で飛べるんだからな。
「あ、これって掴まれてるのと何にも変わらないわ!」
飛行姿勢をとると、高空から地面を見ることになる。
それは自分で飛んでも虫に掴まれて飛んでも変わり映えしなかったのだ。
「スキル【高速飛行】【刺突】!」
空の上でカブトンのスキルを使う。
スキルにより、通常ではあり得ない加速が付く。
俺はカブトン纏の姿のまま矢のように空を突き進んで行った。
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