第523話 北の海探索3

お知らせ

 第150話に、隣国エール王国王国アーケランドの初期設定の名前が残っていました。

それを出していることを忘れて、新しい名前に変更して書き続けていました。

申し訳ありません。

第150話を訂正し、国名を統一しました。

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Side:裁縫女子


 岩トカゲのいる峡谷の向こう側に私たちの飛竜は飛んで出た。

そこは例の台地に囲まれた丸い盆地だった。

私たちの目の前には、台地の縁が大きく弧を描いているのが見えている。

おそらく丸い盆地の直径は10kmはあるだろう。


「台地に開いた大穴と言った方が良いのかしら?」


 地球でいえば南米のギアナ高地に開いた大穴、それをもっと巨大にした感じだと思う。

ここに城を建てれば、台地が天然の要崖となってくれるよね?


「これって行き止まりっしょ」


 さちぽよが落胆の声を上げる。

これで探索が終了とでも思ったのかもしれない。


「地上を行けばそうなりそうね。

でも飛竜でこのまま飛んで行けば、台地の先まで行けるわよ」


「そっか!」

「でも、この先の民族を移民させるとなると、面倒だよ」


 たしかに。私たちは飛んで行けるけれど、移民はそうはいかない。

台地を越えるのに別の移動手段が必要だよね。

例えば転移。陽菜っちの転移を使えば一度に20人ぐらいが限度だけど実現可能かも。


「えー、勘弁してよー」


 その大仕事に気付いた陽菜っちがゲンナリとした顔をする。

何往復、それも距離制限の時間を空けて転移しなければならなくなるのか。

希望的観測で移民が得られるというトラタヌだけど、その苦労には同情するよ。


「煙!」


 紗希ちゃんが大声とともに指をさす。

そちらからは正に狼煙が上がっていた。


 私たちの乗った飛竜を警戒しての狼煙だろうか?

それとも別の何か?

その狼煙には、たぶん危険を知らせるための赤い色が付けられていた。


ドーン!


 盆地の一角、木々に覆われた森の一部から土煙が上がった。


「戦闘だよ、戦闘!」


 それを見たオスカルが戦闘だと断言する。

私もそう思う。


「助けに行くよ!」


 いや、私はそう思わないよ?


「待って、オーちゃんオスカル


「なんで止める!」


「異民族と会っても、観察に止めて、接触は避ける!

ヒロキ転校生くんとの約束だからね?」


「でも、このままじゃ襲われてる人たちが危ないじゃん!」


 一応、私が探索隊リーダーを自称しているけど、皆に命令して従わせるといった上下関係でもない。

こういった時、ヒロキ転校生くんのようなカリスマ性は私には発揮できないか……。


 そう考えている間にも、飛竜は土煙の方へと向かって行く。

オスカルと私はタンデムで飛竜に乗っている。

オスカルが操縦すれば、私も戦闘の現場に突入することになる。

単独先行されるよりは、全員で行った方が安全だよね。


「わかったわよ! だけど相手が判らないんだから、安全に配慮してよ?

皆、オーちゃんオスカルに続いて!」


 私たちの飛竜3騎は、土煙を発生させた何かの方へと向かう。

そこそこ強い魔物ならば、さちぽよ、紗希ちゃん、オーちゃんオスカルでどうにか出来る。

それで恩を売ってファーストコンタクトを優位に進めるか。


 この時、私はまだ見ぬ異民族との交渉を自分たちに都合よく考えていた。

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