第522話 ランドワーム討伐

 いま、俺の目の前にはジャイアントランドワームの死体が数匹転がっていた。

サダヒサと協力して狩ったやつだ。


「素材として使えるのかな?

食えるのか?」


 管虫とかいうものならば食べる地方があった気がする。

まあアイテムボックスに入れて持ち帰るか。


「サダヒサの活躍?で、早く終わったよ」


 俺はコンコンを通じて結衣たちにメッセージを送った。


「なぜ疑問形なのだ! 死ぬかと思ったぞ!」


 それを聞いていたサダヒサが不満を口にする。

サダヒサは、走竜で走り回って囮となってくれたのだ。

釣られたランドワームが出て来たところを俺が魔法でドンって一撃。

簡単なお仕事だった。


 だが、この周囲にはまだ潜伏しているランドワームがいるはずだ。

今後の街壁建築作業を、ランドワームに邪魔されないように、外壁予定地の地下を土魔法で固めてしまう。

ランドワームには掘れない硬度があり、その硬さまで固めてしまうのだ。

掘れない土地からはランドワームが居なくなる。

それを期待しての作業でもあった


「ゴラム、作業を再開してくれ。

ああ、土ゴーレムに被害が出たんだったな。

補充しないとな」


 作業に慣れた土ゴーレムは、レベルが上がり熟練していく。

ゴラムたちは、土ゴーレムから石ゴーレムに進化している。

熟練の土ゴーレムが食われてしまうと、また一から育てないとならない。

新たな土ゴーレムをたまご召喚しても、作業効率が落ちてしまうのだ。


 たまご召喚は、ある程度のレベルの魔物は種類を指定して卵を出せる。

ゴラムの石ゴーレムは対象外のため、土ゴーレムを出すことにする。

作業再開が急務なため、時間経過庫で孵化を促進する。


「1分後指定で、半日を30分に短縮」


 土ゴーレムの孵化時間半日を30分に短縮する。

つまり24倍速だ。

この30分は、ここで待たなければならない。


 周囲を警戒しつつ30分間暇をつぶす。

するとサダヒサが世間話を始めた。


「これだけの街を作ろうなど、王となったヒロキ殿には必要のないことであろう」


 それは個人的な疑問を口にしたということだろう。

政治的にどうこうなど考えてもいない様子だった。


「俺はアーケランドの王位をセシリアの子に早々に譲るつもりだ。

その後の隠居する場がここなんだよ。

それに、結衣たちやその子供の終の棲家も必要だろう?」


「アーケランドがまた過ちの道へと進んだらどうしもうす」


「ぶっつぶす。それが出来るのもここがあるおかげだ。

まあ、勇者召喚も出来なくしたし、要所要所は仲間を貴族にして配置したから大丈夫だろう」


「彼らが裏切るという可能性もあろう」


「その時は俺の見る目が無かったということさ」


 まあ、そんな連中ではないはず。

彼らにつけた内政官が裏切る可能性は否定できないけど。


「これだけの領地、人が足らぬであろう」


「移民を募集中だ。

そうだ、皇国から移民したい者が居るならば歓迎するぞ」


「そうであるな。アーケランドとの戦いが無くなれば軍縮に向かいもうそう。

あぶれる者も少なくないであろうな」


 ああ、そういうルートの移民もあるのか。

皇国が国境を接するのは、アーケランドと隣国エール王国のみ。

隣国エール王国との間は、ほとんど俺が制する魔の森だ。

北の山脈は実質誰も手が出せない。

その向こうの北の海経由ぐらいしか、他国から攻められる危険はない。

海の向こうという未知の敵は存在するかもしれないが、そこは厳しい北の海。

そうそう攻められる地政ではない。


 ここが拡大して、俺の領地が北に広がっても、皇国との間は山脈が壁となる。

空から飛竜で攻めることは出来るが、俺にそのつもりがない。

そして、この地に皇国からの移民が来れば、その住民感情からも皇国と敵対することはないだろう。

安全保障からの移民受け容れ、有りかもしれないな。


「皇国からの移民、前向きに検討してくれ」


「心得た」


 もしかすると移民がマナ姫との子供の家臣団みたいになるかもしれないな。

嫁の間で揉めないでくれよ。

そのためにも、街を嫁の人数で分割しても問題ないぐらいに大きく豊かにしないとな。


「おっと、そろそろ時間か」


 タイマーが作動し、孵化1分前を知らせて来る。

俺は5つの卵をアイテムボックスから出す。

土ゴーレムの卵だ。

ゴーレムが卵から孵るという現象はいつ見ても変だが、ガチャのカプセルを開けると思えばおかしなことでもない、と自分を誤魔化せる。

そこはファンタジーなので拘っても仕方がない。


パキパキパキ


 ほぼ同時に卵が孵る。

その卵からは当たり前だが土ゴーレムが……。


「なんだこれ?」


 今回孵った土ゴーレムはハニワだった。

いや、デフォルメされたキャラクターとしてのハニワだった。

時間経過の弊害、異常進化。

それが齎した形状変化だろうか?


「まあ、同じ仕事が出来れば問題ない。

ゴラム、こいつらを使って仕事再開だ」


 俺は現実逃避することにした。

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