第513話 工事進捗
土魔法による土壌の硬化整形で事の済む街道工事がまず終わった。
馬車2台が余裕ですれ違える幅に加えて人が歩ける歩道分が確保され、雨水対策で中央から外側への傾斜がつく。
その外側には排水用の側溝が備えられている。
途中には休憩用の広場も設置し、事故があった場合の待避所にもなっている。
これで
街道の脇ではGKの配下が見張りを行ない、ある程度の魔物は間引いてくれる。
そして、GKの配下では手に負えない魔物対策のために、アロサウルスを常駐させ警備に当たらせた。
アロサウルスの存在は、中途半端な強さの魔物を寄り付かせないだけの威圧があった。
「あとは農業国への街道だが、まず周辺調査をしないと推められないな。
ゴロロは外壁工事に、ゴリキは城の建築にまわってくれ」
街道工事はとりあえずここまで。
二手に分かれて作業していたゴロロとゴリキには別の作業を宛がう。
ゴロロには
ゴリキは基礎工事の終わった城の建築にまわってもらおう。
トンネル状の交差部分は、土魔法による石の構造物でアーチを作り、旧街道を覆っていく。
その上に土を盛って街の地面とするのだ。
これも力技で作っていく地道な作業となる。
城の建築は俺も参加する。
今までは土ゴーレムに基礎工事をさせていた。
城が建つ予定地の地面に穴を掘り、その下から地面を硬化させていくのだ。
その硬化した地面の上に城の柱や壁が立つのだ。
この地面の硬化作業は、最初に建てた小屋から続くものだ。
鉄骨の使用に力を注いだ屋敷の建築にも当然使われている。
「さすがに、誰かが指示しないと城の建築は任せっぱなしに出来なかったな」
そんな基礎工事も、城の間取りが決まっていて、柱や壁の位置が判らなければ作業が進まない。
設計図があれば良いと思うだろうが、その設計図をゴーレムたちは理解出来ない。
誰かが指示をして作業させなければならなかったのだ。
ちなみに街道や街壁工事も指示がいるのだが、これは単純な直線で「ここから、ここまで」と指示出来る。
そうすれば、ある程度の日数の間は指示なしでも作業が進むのだ。
ならば、「ここから、ここまで」と地面全体を硬化させるという手もあった。
だが、さすがにそれは無駄が多いため、結局は人の手を入れざるを得なかった。
「基礎工事はどうだ?」
俺が声をかけたのは、
木工系のスキルを持っていた彼女は、レベルアップに伴い、そのスキルが進化して建築のスキルを手に入れていた。
その彼女に現場監督を任せていたのだ。
「ばっちりだよ。
だけど、この下の地下室は入口が無くて本当に良いのか?」
「ああ。そこには転移でしか行けないようにしたい」
その地下室とは、召喚の間の魔法陣などを設置する場所だ。
誰でも入れるようにはしたくない。
そして、何が設置されるのかは、同級生にも秘密にする。
召喚の間が現存するとバレればアレックスのターゲットにされかねない。
アレックスには召喚の間が破壊されたと思っていてもらう。
だから、誰にも知られないように設置するのだ。
その秘密をバラす時は、帰還の目途が立った時だ。
それまでは、帰還の研究をしていることも秘密なのだ。
「それじゃあ、蓋をするからな」
アンドレが土ゴーレムに指示をして地下室に蓋をした。
その地下室の天井には、俺が設置した鉄骨が縦横に被せてある。
この鉄骨の上にならば、城の柱を立てても問題ないはずだ。
まあ、あとで強化の魔法陣でも補強するんだけどね。
地下室が埋められる所を見に来たのは、疑似転移の縛りのためだ。
行った事のある場所、あるいは見たことのある場所にしか疑似転移出来ない。
そのために、あえて地下室内部を見に来たのだ。
これでいつでも地下室に入ることが出来る。
ああ、照明や換気は魔導具で行なう。
密閉空間でも窒息することはない。
「それじゃ、主要構造として鉄骨を組んでおくね」
今回も城の主要構造は鉄骨入りの石材となる。
鉄骨を石材が完全に覆う形になるので、鉄が錆びることもない。
錆は石の中の鉄骨を膨張させ、周囲の石を砕く。
それで破壊されては本末転倒となる。
なので、完全密閉、水分の通る余地のないように石で覆うことになっているのだ。
「あとは設計図通りで良いんだよね?」
そこはゴリキにも手伝ってもらって、壁を構築してもらう。
ゴリキは石ゴーレムに進化しているので、石でも装飾用の大理石なども生成出来るのだ。
「1階部分が出来たら、強化魔法陣を付与するから。
2階以上を建てる前に、呼んで欲しい」
「わかったー」
2階部分からは、強化魔法陣に加えて重量軽減魔法陣も組まなければならない。
それを階層ごとに組んで行く。
まさか、この世界のお城がそんな魔法によって建っているとは思ってなかった。
この世界の城は、どう見ても地球の城よりも巨大なのだ。
なのに、構造材としての強度が足りているようには見えない。
あんな重い石が積んであって、どうして潰れないのかと思ったよ。
そこは魔法世界のやり方があったというわけだ。
そして、その建築速度。
魔法を併用することで、異常に速い。
加えて、俺の所はゴーレムたちの土魔法のおかげで更に速い。
「そろそろ家具を発注しておかないと、城の方が先に出来てしまうな」
俺も錬金術で、家具はそこそこ作れてしまうが、そこは素人の作。
お洒落な装飾のついた家具などは、家具職人に発注しなければならない。
その仕事は良いものほどさすがに時間がかかる。
出来合いもあるにはあるが、それも大量には存在しない。
家具のデザインを同じ職人で揃えようとすれば時間がかかるのは当然だろう。
「カドハチを呼ぶか」
温泉拠点にはカドハチ便が定期的に来ていたが、戦争のために不定期になってしまっていた。
このような重要な取引にはカドハチを通すのが一番だ。
次のカドハチ便が来たら、カドハチに手紙を持って行ってもらおう。
◇
「ということで、引っ越しで持って行く以外の欲しい家具を発注するので、考えておいてね」
リビングで食事中に、皆にそう伝えると歓声が上がった。
前置きの話には興味の無かった女子たちも欲しい家具を発注するという部分だけは聞いていたようだ。
「いよいよ、貴族っぽい家具にレベルアップするのね!」
いや、一応王族です。
それと、城に引っ越すのは嫁たちだけだぞ?
なんで
ああ、前置きを聞いて無かったな。
「城へと引っ越すための家具なんだからね?」
「ずるい。私たちにも寄越せ!」
「そうだ、そうだ! 私だって城の建築を手伝ってるんだぞ」
たしかにアンドレには世話になっているな。
さすがに嫁とアンドレにだけというと角が立つか。
「わかったよ。
ただし、城で不足する家具が優先だからね。
職人の数は有限なんだから、全て揃った後ならば買っても良いよ」
「ならば、
ちょっと待て。
どうして
城は俺と嫁との愛の巣というはずだったのでは?
「おまえらも城に引っ越すつもりか!」
「てへ」
どうやら、
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