第511話 湧き点潰し
皇国の武者たちがサダヒサを先頭にして突撃してしまった。
それも明らかな肉弾戦だった。
目の前の魔物を斬っては捨て斬っては捨てで、突き進んで行く。
さすがにオークの上位種レベルでは相手にならない勇猛さがある。
育成途中のさちぽよと護衛騎士たちがオーガ相手に手古摺った感じだったので、
皇国の武者たちはそれを上回る精鋭であることは確かなようだ。
サダヒサたちの目的は、湧き点のヌシであるオーガ・ロードだろうか。
そこまで一直線に突き進んで、倒せれば本望とでも思っていそうだ。
だが、魔物たちも、そこは対応して来る。
周囲から続々とサダヒサたちを囲もうと迫って来ている。
さすがに、その結果は想像がつく。
皇国から
「【メテオストライク(極小)】」
俺は湧き点周辺から、サダヒサたちに向かって集まって来る魔物集団に向けてメテオストライクを落とした。
落下開始地点も下げた最小威力版だ。
これにより一度に百数十体の魔物が吹き飛ぶ。
ちなみに、湧き点は空間の歪のようなもので、物理攻撃で破壊することは出来ない。
メテオストライクを当てて終了ならば、どれだけ楽なことか。
「【メテオストライク(極小)】」
「【メテオストライク(極小)】」
ゴブリン、ゴブリン亜種、コボルト、オーク、オーク上位種などが吹き飛び、いくつものクレーターが残る。
そのクレーターはサダヒサたちを囲うように大地に穿たれていた。
だが、サダヒサたちの周囲は、同士討ちを避けるために攻撃が出来ないため、魔物が多数残っていて蠢いている。
そこは広域攻撃魔法では援護のしようがなかった。
さらにオーガ・ロードの周囲からオーガ・ソルジャーがサダヒサたちに向かって動き出した。
サダヒサたちを早急に始末するべき敵と認識したのだろう。
「眷属召喚キラト、T-REX、GS、レッド、グリーン!」
俺は眷属を召喚し、湧き点を囲ませた。
これ以上サダヒサたちの元へと強敵を向かわせるわけにはいかない。
湧き点は生きている限り、定期的に魔物を産み続ける。
そして、その場にいる魔物に力を与え、上位種へと変化させる。
サダヒサたちがいくら頑張っても、魔物が涌くスピードの方が早ければどうにもならないのだ。
せめてサダヒサたちが広域攻撃魔法を使えれば違ったのだが。
「キラト、ゴブリン特効だ! ゴブリンを操れ!」
キラトを召喚したのは、そのスキルにある特効を使用させるためだ。
キラトはゴブリンを支配下に置くことが出来るのだ。
「キラト、ゴブリンでコボルトを迎撃しろ!」
そして次に数の多いコボルトをゴブリンに攻撃させる。
湧き点の最小兵力はゴブリンとコボルトで、その群の大多数を占めている。
キラトがゴブリンを支配し、コボルトを排除すれば、後はオーク、オーガなどの大型種の対処をすれば良いだけになる。
個々の強さは上がるが、個体数が少ないので、対処する数は減る。
「T-REX、GS、レッド、グリーンは、オークとオーガを倒せ!」
これでサダヒサたちには、適量の魔物が行くことだろう。
「おい、あいつらわざとオーガをスルーしているであろう!」
サダヒサ、そこはレベル上げも兼ねてるから当然よ?
「くっ! 4人で1体に対するのだ!」
やはり護衛の武者には単独でのオーガ討伐は厳しいのか。
あ、上位種行ったぞ。
「えーい!」
サダヒサが一刀の下にオーガ・ソルジャーを斬り捨てた。
さすが準勇者。強い。
「さて、そろそろ潰すか」
俺はサダヒサたちの横を迂回して、湧き点までの無人の野を行く。
俺に気付いたオーガどもが迎撃に現れるが斬り捨てて進む。
そして、ついにオーガ・ロードが目の前に現れる。
「【メテオストライク(極小・散弾)】」
メテオストライクを俺の胸元からオーガ・ロードに向けて打ち上げる。
それも散弾として打つ。
まだ初速の乗らないメテオストライクの散弾が良い塩梅でオーガ・ロードの上半身に当たる。
オーガ・ロードは上半身をハチの巣にされ、そのまま息絶えた。
突き抜けたメテオは、そのまま空の彼方へと飛んで消える。
おそらく宇宙に飛び出したと思われる。
メテオストライクには任意の方向に斥力が発生している。
その方向に落ちていくことになるので、斜め上に打たれたメテオストライクは、そのまま宇宙へと飛び去ったのだ。
「【結界魔法付与】、結界発動!」
その場の岩に結界を付与して発動させる。
その岩を中心にして、湧き点が結界内に取り込まれる。
これでこの湧き点は機能しなくなる。
「サダヒサ、終わったぞ!
後は残敵掃討だけだ。好きなだけ狩ってくれ」
「「「「もう勘弁してください!!!」」」」
皇国武者から泣きが入った。
いや、レベル上げのチャンスよ?
眷属たちが敵をコントロールしてくれているからな。
「オーガが嫌ならば、ミノタウロスとかトロールもいるぞ?
経験値高いぞ」
「拙者でもいらんわ!」
サダヒサ、遠慮するなよ。
「ならば、ゴブリン狩っとく?」
今ならば、キラトが支配したゴブリンを反撃無しで狩れるぞ。
「「「「そんな作業嫌だ!」」」」
俺が見本を見せると皇国武者たちが泣いた。
どうやらメンタルをやられてしまったようだ。
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