第509話 湧き点
魔物は動物派生型の魔物と、迷宮などから溢れた生来型の魔物の2つに分類される。
前者が食べられる魔物で、後者が魔物毒のある魔物と大まかにだが分類することができる。
大まかというのは、動物派生型でも魔物毒を取り込み過ぎたヌシ的な個体が居たり、生来型でも実が生って、それが美味しく食べられたりする種類が存在するためだ。
ちなみに食人植物のパン屋さんのパンが、その実にあたる。
温泉拠点の周囲は、安全確保のためにGKとその配下が見回り、道の通行などに影響を及ぼす魔物を間引いてくれている。
GKが倒した魔物は経験値が入って来るので、俺のレベル上げに貢献してくれている。
だが、GKの配下が魔物を倒しても経験値は入って来ない。
今まではそれでも構わなかったのだが、【支配】というスキルをアレックスが所持しているからには、皆もレベルでアレックスを上回り、支配されないようにレベル上げの必要が出て来た。
委員長ベースのため、アレックスのレベルは往時よりも下がっているはずだ。
今のうちに備えておくべきだった。
そこでGKの配下には、魔物を殺さずに集めるようにとGKに指示を出してもらった。
GKの配下は俺直接の配下ではないため、GKを介さない限り命令を出す事は出来ないのだ。
その関係性が経験値が入らない理由だろうと思っている。
GKの配下が殺さずに集めた魔物は、経験値を稼ぎたい同級生たちが止めを刺し経験値としている。
これはクモクモの巣で捕えられた巨大カマキリや巨大バッタと同じ扱いだ。
その死体は素材として使えるもの以外は森の掃除屋であるGKの配下が処分してくれている。
今回サダヒサたち皇国の護衛武者と狩るのは、そのような間引き対象ではなく、本格的に危険な魔物になる。
魔の森の中には、明確なテリトリーのようなものがある。
そのテリトリーに固有の魔物たちが存在しているのだ。
それは何故か?
最初は環境だろうと思っていた。
草原には巨大カマキリや巨大バッタが、湖には水棲の魔物たちがいる。
その生態からそこが過ごし易いということだと思っていた。
まあ、それも半分は正解だったのだが、半分は魔物の湧き点という存在のせいだった。
狩っても狩っても魔物が存在し続けるのはなぜか?
魔物が繁殖していて増えているのならば親を狩れば絶えるはず。
そうでないことは状況的に判明していた。
狩っても狩っても魔物が存在し続ける、その理由が魔物の湧き点だった。
湧き点は、テリトリーの中心に存在し、そこから定期的に魔物が発生する。
その種類には偏りがあり、それこそがそのテリトリー固有の魔物集団を構成するのだ。
湧き点からは、動物派生型、生来型両方の魔物が涌く。
その仕組みはまだ理解できていないが、それが魔の森を魔物の巣窟としている理由だった。
今回、街の敷地として取り込む予定のエリアにも、その湧き点が存在した。
街の安全を思えば、湧き点は潰しておく必要がある。
潰すためにはボス的な魔物の討伐が必要だった。
それをサダヒサたちと行なう予定なのだ。
あ、有益な素材や美味しい食材となる魔物が出て来る湧き点は壁で囲うなどして保護する予定だ。
草原の巨大昆虫たちは、素材が売り物になるし、肉も高級食材として食べられているらしい。
クモクモの罠で封じ込められているので、
バッタ人間も運動部女子ならば狩れるしね。
今回潰すのは、鬼系の魔物が出て来る湧き点だ。
俺たちの最初の脅威だったゴブリンが出るやつだ。
だが、その湧き点周辺にはオーガがいる。
オーガはパワーも強く、街中ではやっかいな敵となる。
そして、魔の森では一番多い種類の湧き点だった。
「今回の目標は、鬼系の湧き点になる。
周囲にはゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、ミノタウロス、トロールなど、人型の魔物が多く生息している。
オークやミノタウロスは食肉にもなるが、街の中の湧き点としては脅威となるため、駆除しなければならない」
鑑定や本の知識で安心だと解かってはいても、あまり人型は食べる気がしない。
お肉屋さんでスライスになっているわけではないのだ。
その処理は誰かがしなければならない。
人ではない、そう思っていても生理的に無理なところがある。
「これが魔の森の恐ろしさであるな。
まさか人が住んでいる直ぐ傍に、このような湧き点が存在しようとはな」
「この規模、大がかりな巣ではないのか?」
「どうして、このような場所に街を作ろうというのだ?」
湧き点を見下ろせる丘から様子を伺っていたサダヒサと皇国武者も、その脅威度にドン引きだった。
巣とは、その巣を支配する上位種を頂点とした魔物の集団と、その集まる場所のことになる。
皇国では、この規模の巣の存在は迷宮の氾濫と同義だった。
そういや、魔物の氾濫に巻き込まれた時は、これぐらいの魔物たちが温泉拠点の壁まで攻めて来たな。
あの時よりも、上位種の魔物が多い気がするな。
「この巣を我らだけで攻略するのか?」
「どう見ても砦で迎撃するような数と質だぞ?」
皇国武者たちの様子がおかしい。
確かに、以前ならば砦の安全な所から攻撃をするところだが、このぐらいならばイケる気がする。
いや、おかしいのは俺だったか。
レベルが上がって、感覚がおかしくなっていたのかもしれない。
「いや、それよりも、この数で溢れていないのはなぜだ?」
「他の湧き点の魔物たちへの牽制かな?」
魔の森の中では、他の湧き点との魔物の抗争も存在する。
それに備えて湧き点を護っているのかと思う。
「なので、じっくり外側から削っていけば、全ての魔物を一度に相手にしないで済む」
「話が違う!
ちょっと手伝ってくれという話であったであろう!」
「これは大規模討伐だろ!」
「姫の護衛で死地に送られるとは……」
大袈裟だな。これぐらい、運動部女子でも躊躇わないぞ?
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