第506話 お城を建てる
「城を建てましょう」
「はぁ?」
俺は寝耳に水で呆けた返ししか出来ない。
「
こことは、偽貴族の保養施設と称して建てた、この屋敷のことだ。
「俺はここでは王様を気取るつもりはないけど?」
週の前半は王様をするが、それは王城でのことだ。
こちらに来る週の後半は、緊急時以外は執務をするつもりもない。
むしろアーケランドが拡大政策をしないのであれば、俺は王を降りても良いと思ってるぐらいだ。
「でもアーケランドの貴族が緊急連絡で来るかもしれないんでしょ?
王様の体裁というものもあるんだからね」
なるほど、綾、それはあるかもな。
「そうそう、いちいち私たちがいる屋敷に来られても困るのよ。
下着姿で出歩けないしー」
確かに。
いや、騙されないぞ。
アンドレが下着で歩き回らなければ良くね?
「それより夜のムフフの音をなんとかしてよ。
どちらにしろ、ラブラブ夫婦と私たちは住居を分けて欲しいんだけど?」
それは申し訳ない。
だって俺は跡取りを望まれている身なんだぞ?
頑張るしかないじゃんか!
それよりオスカル、夜の営みを勝手に聞くんじゃない!
いや、それよりこの屋敷、ほとんど俺が建てたよね?
なんで、俺たちが出て行く話になってる?
「私たちが出て行っても良いんだけど、建てるならば裁縫工場にして欲しいのよ。
どうせ建てるならば城を建てた方が早いし、新築の方にヒロキたちが入った方が良いでしょ?」
綾たちが出て行くとしても、どうせその建物は俺が建てないといけない。
リュウヤたちが出て行く
リュウヤたちには温泉拠点に戻っても安らげる家を残したいしな。
「それもそうか」
「この屋敷は縫製工場に再利用するから任せて」
どっちにしろ縫製工場を手に入れる気か!
もしかして、そっちが目的だったのでは?
こうして俺は新たに城を建てる事になった。
◇
城を建てるのは温泉拠点の塀の外、新たな街区とする地に決めた。
新たに囲う城壁の完成形の中心となる位置にしようということになったのだ。
その城にも城壁を巡らせるので、その城壁を温泉拠点の壁と接続する形にする。
そうそう、新たな城壁の完成形だが、南の街道を越えた先まで延長することになった。
南の街道は戦後正式に
その先のディンチェスターが皇国と
その直ぐ脇に壁を構築することになるため、
その際に、その南の魔の森はどうするのかという話になった。
そこで俺は、街道をトンネル状に通した上に人工の地面と壁を構築することを提案することになった。
お礼にトンネル内の明かりは俺が魔導具を用意することにした。
そのため、街区の中心は大幅に南に動くことになった。
魔の森の全ては俺が領有することになったと言って良かった。
それは、アーケランドに編入することのない、俺自身の領地だった。
城は新たな工法で建てることにした。
それは錬金術大全を手に入れることが出来て、初めて実用化出来た工法だった。
この世界、地球の技術ではあり得ないような強度や構造、重量的に矛盾した建物が多く建っている。
地球には構造計算と言われるものがあるが、それを無視しても倒れない建物を、この世界では建てることが出来る。
魔法による構造の強化や重量軽減が行なえるからだ。
「錬金術と付与魔法が使えるようになったから、新しい工法が使える!」
建物の随所に魔法陣を刻み、柱の強度を上げたり、全体の重量を減らす。
それがこの世界で巨大建築物が存在しえる理由だった。
それを今回の城の建築に存分に使っていく。
もちろん、屋敷で培った技術も併用していく。
鉄の柱と石の融合だ。
「お城を建てるけど、皆のご要望は?」
俺は妻ーずに訊ねる。
こういったものは妻の意見を訊かずに建ててしまうと、後で問題となるのだ。
「キッチン!」
うんうん、結衣はそう言うだろうね。
結衣専用と使用人や来客のための雇われシェフ用で2つ作るか。
「お風呂!」
あれだけお風呂に拘っていたものね。
温泉を引いて大浴場を作ろう。
「「大きなベッドルーム!!」」
さちぽよと陽菜はなぜ被る。
それ、夜の営み用で言ってるだろ!
まあ、しょうがないな。
「書斎」
瞳美ちゃんは趣味全開か。
書庫や図書室と言わないだけ奥ゆかしいな。
結局、それでは旧屋敷と変わらないな。
拡大版だから部屋数は圧倒的に増える。
他に必要なのは、謁見の間、応接室、大広間、来賓の宿泊部屋、その従者の部屋という感じか。
後は地下に召喚の間を移築して調べられるようにするか。
まだ皆の帰還を諦めたわけではないからな。
希望者は帰してやりたいところだ。
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