第504話 領地へ

 この世界に召喚されてから、この世界の年月日や曜日の概念も理解せずに日々を過ごして来た。

日々を生きるだけで精一杯で、瞳美が本からの知識で情報を得るまでは、この世界の1年が偶然にも・・・・地球の1年と同じだとさえ知らなかったのだ。


 俺たち同級生は、俺たちの中で便宜上のカレンダーを作り生活していた。

時間も、同級生が偶然身に着けていた時計により把握出来、この惑星の1日が地球とほぼ同じだと発見していた。

だが、それで良いのは同級生の仲間内だけの話だ。


 異世界の現地人と接触し取引もするようになると、現地カレンダーに合わせるようになった。

まず行商に来てくれていたカドハチとの取引で曜日の概念が判った。

次は何曜日に来るといった感じだ。

その曜日は言語の自動変換で地球式の月火水木金土日に翻訳されて聞こえていたが、実際は違っている。

実際は地水火風木闇光という感じだ。

ここで面倒なのは水火木が同じなのに順番が違うというところだ。

現地語をリアルに理解し始めると、どちらで伝わるかわからず面倒の種だった。

まあ、カドハチ便は、何もなければほぼ毎日来ていたので、そんなに不都合は無かった。


 問題は軍事行動で別部隊が歩調を合わすなどする時だ。

曜日が間違って伝わると、大変なことになる。

「攻撃開始日は今日じゃない、明日だ!」なんて齟齬が発生しかねない。

だから、そこらへんは、こちらが気を付けて日付で確認するようにしていた。


 アーケランドの王となった俺の1週間は、週の前半の地水火曜が王城で、後半の風木闇光曜が温泉拠点での生活になった。

緊急事態には疑似転移で対応できるし、その連絡用のキバシさん通信手段も配備されている。

王国アーケランドの運営は宰相以下の文官たちに任せ、そのチェックを王である俺がするという感じだ。

まともに国家運営がなされるならば、全て任せる方針だ。


 このような感じだと、また貴族が腐敗しそうだが、俺の指示に従わなければ例え貴族でも処罰する。

大きく国を揺るがすような事態になれば、武力で制圧する。

それで当面は問題ないと思っている。

俺の軸足は、温泉拠点の拡充――つまり魔の森の開拓の方に向いているのだ。


 王国アーケランドの内政で行なっているのは民間と奴隷からの内政官登用だ。

この世界は、教会の儀式で得る事が出来る、ステータス上の職業で能力が決まる。

いや、持っているスキルや才能によって職業が決まると言った方が正確だろうか。

つまり、職業はその人間の才能を正確に表すと言って良い。


 だが、ここに問題があった。

国や貴族領で内政官の職に付けるのは貴族の子弟のみだった。

市井からの登用は、変人による私的なもの以外は有り得ない世界だった。

ここにも身分制度が介在していたのだ。

一般市民は内政官には成れない。ここに不正の温床があったのだ。


 俺が貴族に任じたリュウヤたちには、その内政官が足りていなかった。

貴族の子弟を採用すれば、リュウヤたちが良いように手玉に取られかねなかったからだ。

特に赤Tとパツキンに翼たち7人が心配だった。

彼らが気付かないうちに傀儡とされ、内政官に領地を良いようにされる懸念があった。


 そこで俺が取った策は民間と奴隷からの内政官登用だ。

まあ、民間からも不正を行おうという者は出て来るだろう。

だが、民間採用という今までに無かった出世方法が存在するならば、真剣に取り組もうという者が現れると信じていたのだ。

そして奴隷ならば、その契約により領主を裏切れない。

そんな奴隷あがりの内政官を赤Tたちに付けてあげるつもりだ。


 ちなみに、リュウヤと青Tが伯爵位、赤Tとパツキンが子爵位、翼たち7人を男爵位に叙爵している。

腐ーちゃんも子爵位だが、領地は持ってなく、温泉拠点にいる。

さちぽよと陽菜も戦争で活躍したが、嫁なので爵位は無い。

王の側室の地位の方がたぶん上だ。


 この内政官の登用と教育が済むまでは、リュウヤたちには領地の治安維持を行なってもらう。

なので、彼らは自らの領地へと赴いて行った。


 ちなみに移動手段は飛竜改だ。

温泉拠点防衛で孵した竜卵からは、飛竜改が5匹孵った。

それを眷属譲渡で4人に渡したのだ。

飛竜改ならば、タンデムの鞍を付けて領地まで短時間で移動出来る。

これは、いつでも温泉拠点に来れるようにという配慮だ。

ちなみにリュウヤの飛竜は3人乗りの鞍にしてある。

リュウヤに加えて女性2人ならば、3人乗りが可能なのだ。


 翼たちには走竜の竜車か翼竜を眷属譲渡で彼らの眷属として与えた。

比較的温泉拠点に近い領地には走竜、遠い領地には翼竜だ。

出発の時に星流ひかるだけ翼竜を従えて自前で飛んで行ったが……。


 ちなみに一部を走竜の竜車にしたのは、領地が近いことに加えて、高所恐怖症で翼竜移動が無理だったからだ。

翼竜移動は翼竜の足に掴まれてぶら下がるという、あまりお勧めできない方法だったので、無理な人は絶対に無理だったのだ。


 こうして、仲間たちが王国アーケランド内に散って行った。

俺たちの新たな生活が始まる。

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お知らせ

 最近、過去の掲載部分でのご批判があったため、一部を書き直そうかと思っています。

長く連載していると齟齬も生じ、それに対応しきれていない部分が目に付いたからです。

今になると説明不足だったと思う箇所もありまして、そういうつもりではなかったのにという思いや、描写力不足で理解してもらえなかったのだと反省する部分もあったりするのです。


 その作業に携わると、新作部分の掲載が遅れ気味になります。

そんなの置いといて、連載を進めろという意見もあるかと思います。

そこでアンケートです。

書き直すべきか、置いておいて連載を進めるべきか、ご意見宜しくお願いします。

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