第503話 将来の不安
「だけどよ。俺には領地経営なんか出来ねーぞ?」
「そうだ! 俺とミニスカだって無理だ。どうすりゃいい?」
貴族になると浮かれていた赤Tとパツキンが重大な事に気付いた。
2人の懸念は尤もだし、何も対策を用意していないわけではない。
いくら小さな領地だとはいえ、なんの知識もなければ財務帳簿も書けないだろう。
それでは領主はやっていけない。
ならば代官を置けば良いのだが、その代官が信用出来るかわからないのが問題だったのだ。
代官を置いて済むのならば、何も彼らを貴族にする必要はなかったのだ。
「そこは複数の内政官を任命する。
リュウヤたちにはその上に立って内政官の暴走を抑える役目を負ってもらう」
代官を置くと、その領地の現地トップは代官となってしまう。
その人物像によっては、領地を私物化されかねない。
この世界の貴族は、結構どうしようもないのだ。
目が届かなければ、その状況に魔が差してどう転ぶかわからないぐらいだ。
だが、内政官を置き、その上に勇者がお飾りでも領主として在れば、抑止力になって、おいそれと不正は出来ないはずだ。
「私と瞳美が監査に行くから、内政官と一緒になって横領、不正蓄財なんてしないでよね?」
内政官の仕事には
瞳美の知識と処理能力、そして
赤Tたちは、その行動を武力で補佐する役目といえる。
「あんたたちも言い包められて、汚職に手を貸さないように気を付けなさいよ!」
「だ、大丈夫だよ……」
「贅沢できそうだなんて思ってないから!」
赤Tとパツキンが慌てる。
まあ、領地からの税は、経費を引けば実質領主のものだからな。
良識的な範囲内ならば贅沢しても構わない。
金を浪費したり、賄賂を受けて便宜をはかったり、税率をあげて領民を迫害したりしたら簡単にバレるからな?
そのための監査役だぞ。
「内政官には貴族からと才能のある国民からも採用するから。
皆には国民採用の内政官が仕事をしやすいように便宜をはかってもらいたい」
貴族採用は、貴族家の三男以下が多い。
彼らは実家を継げないために、家を出たら文官になるか騎士になるかなのだ。
加えて実家の推薦という縁故採用があるため面倒なのだ。
そこで真面目に仕事をすれば良いが、あまり仕事が出来なかったり、実家の権威を笠に着て横暴な態度に出る事がままあった。
それが代官が信用出来ないという根本問題に繋がっていた。
そこで始めたのが、国民からの採用だ。
実力があれば分け隔てなく雇用するし、貴族の子弟との間に身分差も設けない。
だが、それでも貴族の権威を振りかざす者が出て来る。
それを抑える役目が赤Tたち新領主というわけだ。
「奴隷の中には、元商人や統治に有利な職業やスキル持ちなんてのもいる。
そう言った奴隷を積極的に買って、裏切らない手駒として付けるつもりだ」
「それならば赤Tでも安心か」
リュウヤの冗談に赤Tも引きつった笑いを浮かべるしかない。
赤T本人も半分は図星だと思っているのだ。
奴隷の元商人なんてのは借金奴隷が多い。
つまり商売に失敗した者ということだが、その悪い部分はどうとでも抑えられる。
契約で縛って余計な事をさせなければ、金勘定ぐらいはまともに出来るのだ。
そして統治系のスキル持ちの奴隷が居れば儲けものだ。
彼らは職業の儀で、そのスキルがあることが判明しているはずなのだが、その生まれから実力を発揮するチャンスすらない。
そのチャンスを赤Tたちの領地では与えることが出来る。
奴隷の中から見つかれば、代官クラスの領地運営まで任せられる。
それも奴隷契約によって裏切らない駒となるのだ。
奴隷といっても、自ら売り込む契約奴隷なんてのもいる。
そういった右腕と成り得る人物を赤Tたちには付けてあげるつもりだ。
「流石に戦争は無いと思うが、迷宮対策の領軍や治安維持の衛兵は必要になる。
その採用は予算内で自由にしてくれ」
まあ、何かあれば
「あとは子供作って、子育て頑張ってくれ」
俺の最後の一言に、皆ポカンとしている。
皆を貴族にしたのは、この世界で生きていく拠り所を作ってあげたようなものなのだ。
そのためには、子々孫々繁栄して行ってもらいたい。
「ああ、お前もな」
リュウヤにカウンターをもらってしまった。
俺も、この後、この異世界でしっかり生きていかなければならないんだよな。
そうなると、アーケランドと温泉拠点は分けて考える必要があるか。
セシリアとの王家としての生活と同級生嫁との生活。
アーケランドの跡継ぎは当然セシリアの子でなければならない。
結衣たちとの子を次代のアーケランド王とするわけにはいかないのだ。
「待てよ、そうなると嫁ごとに領地を確保して子供に残さないとならないのか?」
結衣、瞳美、麗、さちぽよ、陽菜の5人は……どうすれば良いんだ?
そうだ、リュウヤたちの子供と婚姻関係にすれば良いか。
いや、それもどうかと思うな。
もし、何人も兄弟姉妹産まれたらどうするんだよ。
「魔の森の開拓しかない!」
そう、魔の森は
ここに新国家を創って我が子に残すのだ。
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