第501話 フラメシア教国
せっちんたちが
日本食が食べられなくなることに名残惜しんでいたが、温泉拠点と
あれからアレックスと
アレックスが委員長の【支配】スキルを手に入れたことがやっかいだ。
どんな厳重な警備を行っても、その者たちが支配されてしまえば、簡単に突破出来てしまうのだ。
俺たちはそれを逆手に取ることにした。
支配されているかどうかを確認出来る魔導具を作成したのだ。
アレックスが逃亡に【支配】を使えば、その痕跡が残る。
なぜならば、アレックスは自らがかけた支配を解除できないのだ。
その支配の痕跡を追えば逃亡先が判明する、はずだった。
それも人海戦術となる。
アーケランドの各街の出入り口に魔導具を設置し、支配された人物を特定するしかないからだ。
その人物が偶然網に引っかからなければ、逃走経路を追うことも出来ないため、追跡は後手後手に回ることになった。
だが、問題はそこではなかった。
ある街まで辿ったところで、アレックスたちの痕跡が忽然と消えてしまったのだ。
それは【支配】を必要としない協力者の存在を示唆していた。
だが、これまで辿れた逃走経路により、アレックスの向かった先の予想は出来た。
それはアーケランドの東に位置するフラメシア教国だった。
アーケランドを囲む国家群の中で、唯一アーケランドが放置していた、いや手を出せなくなった国だ。
フラメシア教国は、宗教国家であり、過去にはアーケランドの国教ともなっていたフラメシア教の総本山だ。
それが神託により勇者の存在を否定し始め、勇者召喚を行うアーケランドとは対立状態となった。
そのうち育成前の勇者を襲って殺すような過激派が発生するに至る。
それが勇者排斥論者という組織だった。
そのためフラメシア教はアーケランドでは邪教となり、信仰を違法とされた。
国内のフラメシア教信者が突然テロリストと化したからだ。
当然、アーケランドとフラメシア教国は戦争状態となる。
勇者の力もあって、アーケランドはフラメシア教国との戦争に勝った。
だが、困ったことに、フラメシア教の信者は世界中にいて、国教としている国もあった。
その総本山を支配したり解体するわけにはいかなかった。
フラメシア教国は、武力の所持を禁じられ、ただの宗教国家として生き残ることになった。
だが、
建て前ではフラメシア教国と無関係という形で。
まさかその
だが、アレックスが潜伏するには、フラメシア教国という存在が好都合だったことは事実だった。
「なるほど。
アレックスはフラメシア教国に潜伏している可能性が高いのか。
もしもアレックスが教会の中枢を支配したらやっかいかもな」
宗教は恐い。
いや、似非宗教はと言った方が良いか。
神の啓示と称すれば、どんな非道な行為も、それこそ犯罪であっても正当化出来てしまうのだ。
神の言葉を捏造しているバチ当たり行為なのだが、狂信的な信者はその見分けなんてつかないものだ。
それが宗教による洗脳だからだ。
神の思し召し、その免罪符で何だってやるからな。
魔女狩り、十字軍、聖戦、異端審問、その残虐行為が神の名で正当化されてしまうのだ。
それが正しい神の啓示ならば良いが、人の悪意によって歪められ、権力者の思惑により神の言葉が捏造される。
その結果の不幸だとしたら、それは悪魔の所業に等しい。
「ある意味、アレックスが支配するのに好都合な国か」
神の啓示を捏造し、アレックスにとって都合の良い神託を下す。
それに世界中の信者が呼応する。
「最悪じゃんか」
少なくともアーケランド、
皇国は皇家が勇者の血筋だし、隣国と農業国はアーケランドに接していてアーケランドから逃げた勇者の潜伏先と疑われたのだ。
だが、世界的には未だに信者が多い宗教で、国教となっている国も多いのだ。
そのためアーケランドもフラメシア教国を滅ぼすことが出来なかった。
戦争も過激派の駆逐のためということであり、フラメシア教自体を潰すことは出来なかったのだ。
「関わりたくないな。
触らぬ神に祟りなしって言うからな」
だが、アレックスが【支配】を使って教会上層部を支配下に置いて偽の神託を出したとしたら……。
「いや、教会の聖職者ならば聖魔法が使えるか」
聖魔法で支配から脱すれば良いだけだった。
まさか、生臭ばかりで聖魔法が使えないなんてアホなことはないよね?
とりあえず、アレックスがアーケランド国内で暗躍するという事態は避けられたようだ。
ならば、しばらくは温泉拠点でゆっくり出来るだろう。
「そうだ、
アレックスの工作により迷宮を氾濫させられて、皇国はアーケランド征伐を中断することになった。
その間に俺たちだけでアーケランドを制圧してしまった。
その後、俺が王となったアーケランドがどう皇国と付き合っていくのかという話し合いが大変だったのだ。
皇国が協力してアーケランドを落としていたならば、領土の割譲という簡単な解決方法があった。
それが皇国なしで勝ってしまったために、困ったことになっているのだ。
その話し合いの先行きが不透明だったために、
離縁の準備とも取れたが、
その話し合いも無事解決し、
下手したら、俺が王となったアーケランドと皇国で戦争継続という事態も有り得たのだ。
そんなことにならなくて本当に良かったよ。
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この作品はフィクションであり、出て来る国や宗教は実在しておりません。
この内容は実在する国家、宗教を批判、揶揄するものではありません。
あくまでも悪い宗教という創作上の悪役を描写しているにすぎませんので、ご注意ください。
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