第495話 闇の底にいたもの
ざわり
肌を刺すような嫌な感覚が走る。
そして、一瞬で謁見の間の空気が濁る。
それは闇の中から何かが蠢き、這い出ようとしているような感覚だった。
突如として委員長の身体から重い空気の圧が溢れ出した。
吹き飛ぶ近衛騎士たち、腐ーちゃんにサダヒサも巻き添えになっている。
そしてゴソリと落ちる
その胸には刺し傷など微塵も無くなっていた。
「何があったんだ!?」
俺たちは、その不可解な現象に息を呑んで見守るしかなかった。
治癒能力、リボーン、不死、そんなものではなかった。
事実、
その
何かを形作ろうとしているかのようで、まるで自ら整形をしているような感じだ。
顔のパーツが変化し、目鼻の位置がずれ、輪郭が変わる。
そして現れた顔は!
「アレックス!!!」
「なんだこの状況は?」
玉座から周囲を睥睨し、アレックスの顔が歪む。
どうやらアレックス自身もこの状況に戸惑っているようだ。
「そうか、
そう言うとアレックスの顔がニヤケる。
アレックスの台詞の意味するものは、
そこにバカ貴族たちを斬った、
「ククク、お前たちか」
アレックスが手をかざすと、
「どうやら予備として上手く育っているようだな」
「予備だと? まさか!」
アレックスは、俺たちの前の代の召喚勇者の身体を乗っ取って復活したという。
それは魔王として死した後でも復活できるようにと周到な準備がなされていた結果だろう。
おそらく召喚の儀になんらかの介入をして、依り代を確保していたのだ。
まさか、あの俺の心の底で蠢いていた黒いスライムのようなもの、あれはアレックスが復活するためのアレックスの欠片だったのか!
それが召喚勇者の中に植え付けられている?
いや、誰もが依り代に成り得るわけではない。
アレックスは
そして、俺は眷属召喚や戦争、仲間の危機による闇魔法の乱用によって闇落ちしかけた。
「闇落ちがアレックスの予備を育てている?」
リボーンなんてものではない。
アレックスには予備の身体が召喚勇者の数だけあるということか。
ならば今、アレックスが新たな身体を得た時こそ、予備を減らすべきかもしれない。
そうしなければ、アレックスを倒すことが出来ない。
今、
「リュウヤ、赤T、彼らはアレックスの予備となっている!」
それだけでリュウヤと赤Tには通じた。
今まで手を抜いていた2人が躊躇いを捨てた。
俺も対峙している
そして、次にアレックスたちをどうにかしないとと視線を向けた時、謁見の間が爆発に包まれた。
無差別な破壊、アレックスが広域爆裂魔法をこの謁見の間の中で使ったのだ。
それは勇者としての
どうやらアレックスは、乗り移った身体のスキルをそのまま使うことが出来るようだ。
となると、あのやっかいな【支配】も使えるのか?
「どうやら分が悪いみたいだな。ここは退かせてもらおうか」
その声を残し、アレックスと
俺たちは、追撃も出来ず、この場の被害状況の確認と救助に奔走することとなった。
アーケランド貴族の貴族家当主のほとんどがこの場に参内していたのだ。
国としての損害は計り知れなかった。
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