第490話 訓練開始

 何がどうなったのか判らないうちに俺はダンジョンマスターとなってしまった。

おかげで効率よくレベル上げの出来る施設を手に入れた。

俺がダンジョンシステムに望んだ訓練場は、新しい階層として創り出され、そこには巨大な闘技場が備えられていた。

闘技場の中には戦いのリングとなる舞台が20以上あり、全員が単独で魔物と対峙できるようになっている。


 俺たちは、その闘技場へとダンジョンマスターの力で移動した。

ダンジョンマスターは、迷宮のいかなる階層へも自由に転移出来るのだ。


『この階層は隠し階層となっており、許可の無い者は立ち入り禁止となっております。

今後、お連れ様たちは転移スポットから自由に出入り可能といたしました』


 つまり俺たち専用の訓練場ということか。

第三者に荒らされないのは良いことだ。

しかも転移スポットから直接行き来できる。


『この闘技場では、任意の魔物を召喚し戦うことが可能です。

本来はマスターがデザインした魔物の能力を試すための施設となりますが、お連れ様たちの訓練に使えるようにと改修いたしました』


 うん? マスターがデザインした魔物の能力を試す?


「ちょっと待て、ダンジョンマスターは魔物をデザイン出来るのか?」


『ダンジョン機能として当然のことかと?

あっ!』


 システム音声が慌てた感じで口籠る。

なんだ、それは? 気になるじゃないか!


「言いたいことがあるなら言え!」


『マスターのスキルに異常が見られます。

魔物デザイン機能が壊れているようです。

修復いたしますか?』


 ダジョンマスターとしての能力に不具合があるのは気持ちが悪い。

直るものならな直して欲しいものだ。

いや、ここは治るの方が正解か?


「修復してくれ」


 この時の俺は、ダンジョンマスターとなったから実装された能力が直るものだと思っていた。

だが、それは違っていた。


『ギフトスキルた*まご?召喚を修復いたします。

修復完了。

ギフトスキルたまご召喚として正常に機能するようになりました』


「ちょっと待て。

たまご召喚が、ダンジョンマスターの能力だというのか?」


『はい。たまご召喚はダンジョン内での魔物の配置機能の1つとなります。

新たな魔物をデザインし、それを生み出し、配置する。

有能な魔物を眷属として配下にする。

最大契約数が設定されていましたので解除いたしました。

ダンジョン内に限り・・・・・・・・・魔物の生成は無制限になります。

ダンジョン外での召喚枠は今まで通りです。

魔物製造に必要なDP連動も切れていましたので修復いたしました』


「つまり、DPの続く限り自分でデザインした魔物をダンジョン内で召喚して眷属に出来るようになったと?」


『そうなりますね』


 そしてここには重要な話が1つあった。

たまご召喚は、ダンジョンマスターの能力だったのだ。

つまり、このスキルがこの迷宮を譲渡された鍵だったわけだ。


 そして、文字化けしていたたまご召喚が正常に機能するようになった。

あのDP残高からしてとんでもない数の魔物をダンジョン内で眷属に出来る。

外は今まで通りの召喚枠らしいけどね。

しかも、魔物を自由にデザインできる?

つまり能力も強さも思い通りだって?

やばい、やばすぎるぞ。

ここに来て、チートがビッグバンしてしまった。


 外でも召喚枠内ならば、究極の暗殺型魔物をデザイン出来れば、サクッと委員長を殺して終わりじゃないか。

いや、これをやったら確実に暗黒面に落ちるわ。

委員長に更生の余地が無いのかぐらいは確認しないと。

委員長はノブちんと栄ちゃんの仇だが、それが委員長本人の意志でやったことなのか、そこは知る必要がある。

そのためには、眷属に頼って終わりというわけにはいかない。


「とりあえずは、経験値が稼げて、基礎能力を上げられるような魔物と戦ってもらおうか」


 まずは俺たちが委員長に支配されないように、レベル上げと基礎能力を上げる必要がある。

支配から逃れる魔導具があるが、それは初見のみ有効だ。

効いていないと悟られれば、二度三度と支配を使われてしまうだろう。

その支配を受け付けない、あるいは支配される前に一撃を入れられるようにならなければならない。



「この舞台毎に戦えるのか?」


「そうだ。外に攻撃魔法も漏れないし、死んでも生き返るらしいぞ」


 リュウヤがこの闘技場の機能の確認をして来たので、システム音声の回答をそのまま説明する。


「それは言わないでおこう。

死んでも生き返るという戦い方を覚えると良くないからな」


 それは優斗まさとたち新召喚勇者のことだ。

優斗まさとたちはリボーンを体験したせいで、リセットが効く戦い方に慣れてしまっていて、戦い方が雑なのだ。

リュウヤはそこも修正していきたいようだ。


「呼び出す魔物はそこの操作盤で設定できる」


 ダンジョンシステムの説明を俺が口頭でリュウヤに伝える。

システム音声が俺にしか聞こえないから面倒臭い。


 リュウヤが操作盤に手を触れると、空中にステータス画面と同様のパネルが映し出される。

それをいじって魔物を出す仕組みだ。


「使いにくいな」


 そこには魔物の種類と強さが数値で表されているが、それが感覚的にどのぐらい強いのかがわからないのだ。


『口頭で指示していただければ、適当な魔物を召喚いたします』


「口で言えば良いってよ」


「そうか、彼らの能力ギリギリで勝つ剣技系の魔物を頼む」


 彼らとは優斗まさとたち10人だ。

それぞれが闘技場の舞台に上がっている。


 ダンジョンシステムが、彼らのステータスを覗いたのか、各々に見合った魔物が出て来て試合を始めた。


「これは便利だな。

俺たちもやるか」


 リュウヤ、赤T、サダヒサ、腐ーちゃんに紗希も舞台に上がり、同じリクエストをしたようだ。

ここまでは委員長と戦うことを想定した訓練を行なう者たちだ。

だが、結衣、麗、陽菜、セシリアは別だ。


「彼女たちには、経験値が大きくて弱い魔物を頼む」


 俺は他の空いている舞台に上がった結衣たちに経験値の美味しい魔物をあてがう。

彼女たちには委員長の支配に抗うレベルがあれば良い。

万が一の措置であって、戦う必要はない。


 貴族たちが王城に呼ばれた日まで、最大限の育成をしておこう。

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