第475話 王権だけじゃ収入がない
棚ボタでアーケランドの王権を手に入れ、俺は称号だけはアーケランド王になった。
とは言っても、アーケランド全土を俺が掌握したわけではないから、王を自称する委員長とその支配下の重鎮たちにより国が運営されるのは変わらない。
つまり、国としての税収は委員長の下に集まる。
いま、正統アーケランド軍に参加してもらっている貴族や騎士、兵たちに恩賞の一つもあげられない。
いま、俺に出来ることは1日2食の食事を用意することだけなのだ。
ここに新たな家臣を雇おうなどと思ったならば、俺の資産を持ち出して給料を払わなければならない。
セシリアの護衛騎士は必要だが、その給料は俺の懐から消えていく。
ただでさえエレノアとシャーロットの護衛騎士と侍女が増えたばかりだ。
いまはシャインシルクの販売益で賄えているが……。
長引けば、国家予算レベルの収入を確保しないと、そのうちやっていけなくなるぞ。
「転移強襲で委員長を討つか……」
アーケランドという国を手に入れ、税収を得るのに手っ取り早いのは、委員長を倒して俺の王権を示すことだろう。
大兵力を必要とせず、ピンポイントで決着が付く。
文字通り正統アーケランド王国の成立だ。
だが、これを行なうと、
王都に展開している正規軍を掌握出来れば良いが、それに手間取ればアレックスが王都に戻り、元の木阿弥となる。
「やはり、まずアレックスを討ってから、王城に向かうのが良いか」
委員長は、アレックスにとっても敵だ。2人が手を組むことはないだろう。
王都を委員長に奪われるということは、アレックスへの補給が滞るということだ。
食料事情が逼迫しているアレックスは、まず王都とその執政権を取り戻さなければならないはずだ。
どちらが倒されるかわからないが、俺たちはそれを眺めていれば良い。
アレックスが去った後の要塞都市グラジエフは、俺たち正統アーケランド軍の手に簡単に落ちるだろう。
ここは
問題は
仲間に殺されたり、自害したりすれば、リボーンして本陣に再配置されるのだ。
それはさゆゆのギフトスキルによるもののようだ。
「つまり、さゆゆ奪還が、
疑似転移と帰還をセットにすれば、さゆゆさえ表に出てくれば、セシリアの時のように短い時間で奪還が可能だ。
帰還が使えると判って、作戦の自由度が上がったぞ。
これは決定で良いな。
「さゆゆ奪還作戦を行おう。
さゆゆが出て来る状況、つまり
さゆゆが出て来たら、さゆゆを奪還。
さゆゆが出て来なければ、
召喚の間が壊されたことをアレックスが知れば、
ここでも情報伝達のタイムラグが邪魔をする。
いっそ、俺から教えても良いのだが、詐術だと信じてもらえなければ、ただの嘘となってしまうだけだ。
やはり実力行使しか
「俺にアレックスと戦わせてくれ」
さゆゆ奪還と聞いてリュウヤが参戦したいと名乗り出る。
そう思う気持ちはわかるし、応援したい。
だが、リュウヤが加わることで不確定要素が増える。
帰還時にリュウヤが離れていれば、そこで時間ロスが発生し、全員が危険に晒されかねない。
「アレックスには剣神の加護があるぞ」
「さゆゆに触れる時間を稼げればよいのだろう?
それぐらい俺にも出来る」
だが、そこでリュウヤに捨て身になられても困る。
「俺が合図したら退いてくれよ?
一緒に帰還しなければならないんだからな」
「ああ、任せろ」
リュウヤの決意は固いようだ。
ならば信じて任せるのが妥当か。
「
「あ、その手があったか」
結衣が口にした聞き慣れない眷属は、温泉拠点で孵った竜種の1匹だ。
その大きさと形は片手で持てる円形盾のようで、その甲羅に魔法防御と物理防御の効果を持つ。
それが契約者の周囲を漂い、自動で防御をする。
眷属譲渡をすれば、リュウヤを守る盾となるだろう。
問題は眷属召喚に眷属を巻き込めないという縛りだ。
リュウヤはリュウヤで疑似転移させなければならない。
そのタイムラグが懸念材料だ。
だが、利点もある。
リュウヤが離れていても、装備している
これは大きいかもしれない。
「よし、委員長は放置。彼にアレックスの足を引っ張ってもらおう。
さゆゆや
とりあえず、
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