第463話 彼らに癒しを

「俺の輝かしい実績はなんだったんだ?」 翔太

「俺の筋肉だって……」 嵐太

「なぜ星流ひかるだけがモテるんだよ!?」 マイケル

「ハハハ」 翼


 従軍娼婦の元へと行って来た翼たちは、どうやら星流を除いてモテなかったようだ。

かと言って、きちんとご奉仕はしてもらったようだ。

完全に仕事モードだったとはいえな。


 そもそも、この世界では、肉体的に優れた者たちなんて履いて捨てるほど居る。

それが選抜されて騎士や戦士となるのだ。

空を飛べるという特殊能力を知られていた星流以外は、娼婦たちに箸にも棒にも掛けられなかったようだ。


「翔太たちが優れていることを知られてないからだろうな」


「そうか、活躍して見せれば俺たちもモテモテだな!」


「それは日本でもそうだっただろう?」


 U-18代表にもなれば、JKにモテ放題だっただろう。

ハニートラップに気を付ければ、翔太なんて選り取り見取りだったはずだ。


「僕は陸上一筋だったから……」

「俺は柔道だったから……」

「翼もサッカー部だから、そこそこモテただろ?」

「おい、翔太、俺を巻き込むな! モテたのは翔太だけだろう!」

「(モテモテだった日本が)恋しいっす」


 マイケルはストイックに打ち込んでいて童貞だったか。

嵐太は……ドンマイ。

でもサッカー部は、やはりモテたんだろうな。


「皆には、定期的に娼婦の所に行ってもらうか、嫁を迎えてもらえば安心なんだけどな」


「「「「嫁(っすか)!」」」」


 魔族化を防ぐために、癒してもらわないとならないんだが、いつまでも割り込みで従軍娼婦の所へ行かせるわけにもいかない。

ズルをされたと感じた兵たちから、恨まれてしまうからな。


「自由恋愛で見つけられれば良いけど……」


 俺がそう言うと、彼らは周囲を見回した。

彼らがロックオンしたのは、やはりセシリアか。

アーケランドの第二王女だから、美貌や気品はダントツだからな。

だが、それはダメだ。俺の嫁だからな。


「知らないだろうが、彼女はアーケランドの正統な王女で、俺の嫁だ。

候補から外してくれ」


「なんと羨ましい!」

「この世界で活躍すれば王女と結婚できるのか!」

「ならば他は……」


 彼らが次に目にしたのは、キャル、陽菜クロエに腐ーちゃんだ。

そして、やはりギャル系のキャルと陽菜にロックオンする。

腐ーちゃんから殺気が漏れる。

いや、身近なところでどうにかしようと思うなよ。


「キャルは悪魔で、俺の眷属だ」


「陽菜もー、無理だからね?」


 そう言うと陽菜は俺の腕に抱き着いた。


「また、嫁かよ!」


 自由過ぎて忘れがちだが、陽菜も嫁なんだよな。

俺はイチャつく陽菜を慌てて剥がそうとしたが、陽菜の助けろと言いたげな目に思い留まった。

ここは、嫁を助けないとな。


「まさか、こっちもか?」


 こっち言うな。腐ーちゃんね。

また怒るからやめて。


「そんなところだ」


 俺がそう誤魔化すと、腐ーちゃんもホッとした表情を見せた。


「そんなことより身近なところでどうにかしようとするな!」


「こんな異世界で、彼女を手に入れるならば、手っ取り早い身近な召喚者しか居ないだろうが!」


 翔太くんって、そんな性格なのね。

日本ではモテモテでも、そのステータスがこっちでは通用しなかったのね。


「何を騒いでいる?」


 その騒ぎを聞きつけて、リュウヤがやって来た。


「ああ、こいつは竜也リュウヤ

俺と同期の召喚勇者だ。

リュウヤもアーケランドから救出した勇者で、そういや嫁を娶った先輩だな」


「あ、ああ」


 彼らはリュウヤが同じ境遇だったと悟り、どのような伝手で嫁を手に入れたのか興味津々の目で見つめる。


「俺は、あるところで偶然出会ってしまってな」


「「「「あるところ?」」」」


「奴隷商館だ」


「「「奴隷!!!!!」」」

「その手があったか!

そうか、ここは異世界だったよな!」

「いや、僕は奴隷はちょっと……」


 嵐太が物凄い勢いでガッツいた。

マイケルは奴隷に消極的。黒人ハーフだから、そこらへんは心情的に厳しいか。

そして翔太と翼は元々モテていたせいか、驚きはしたがスルーに近かった。


「(嫁って)1人だけっすか?」

「「「「!!!!」」」」


 星流が気付きやがった。

セシリア、陽菜に加え腐ーちゃんが嫁だとすると、俺には少なくとも3人嫁が居る。

いや、腐ーちゃんは違うんだけど、嫁が複数居るのは事実であり、否定できない。


「そうだ、ヒロキはセシリア王女に加えて2人ともだった」

「一夫多妻は異世界の常か!」

「それなら奴隷も1人ぐらいなら良いか」


 一夫多妻と知って、翔太が奴隷嫁に乗り気になる。

まあ命に関わるから、早急に癒しが必要なのは間違いなく、一番手っ取り早いのは奴隷だ。

でも、奴隷を嫁にするにしても、そこに愛はあって欲しいぞ。


「奴隷を嫁にするにしても、そこに強制は認めないからね。

奴隷契約を解除して嫌だと言われたらダメだから。

そもそも、強制だと癒しの効果が無いんだよ。

性奴隷として虐待すれば、逆効果だと思ってくれ」


「そうだ、俺もクララを愛している」


 リュウヤも奴隷出身の嫁だが、奴隷扱いではないことを強く主張する。

その裏にはさゆゆに対する想いが残っているが、癒してくれているクララに対する愛情も本物なのだ。


「いや、俺は日本に帰るつもりだから、こちらで結婚は出来ない」


 翼が、根本的な問題を口にした。

どうやら、まだ帰れない――いや、帰還が困難なことを知らないようだ。

どうする、希望を絶ってしまうと、闇落ちスイッチが入るかもしれないぞ。

もう少し癒されてから説得するか。


「ならば、翼は継続して娼婦に癒してもらう方向か」


 翼も娼婦に癒されることは拒否していない。

奴隷にも忌避感は無いようだけど、嫁には出来ないということか。

それだと性奴隷となってしまって、癒し効果が低いだろうからな。

それならば一瞬でも愛情を注ぐ、プロの娼婦で癒すしかないか。


「俺は是非、奴隷でお願いしたい!」

「俺も1人目は奴隷でも良ーんじゃね」

「僕も、愛が必要って話を聞いて、強制でなければ……」

「ギャルが良いっす」


 嵐太は奴隷容認。

翔太は1人目って、おまえ……。

マイケルも愛があること前提という話で考えが変わったようだ。

星流、ギャルなら何でもよいのか? それともまだキャルを狙っているのか?

あいつは悪魔でも小悪魔だぞ? 翻弄されて捨てられるぞ!

まあ、奴隷に見た目ギャルが居れば、星流はそれで良い気もするか。


「ヒロキ、実はボーデン伯爵から、娘の嫁入りを打診されている」


「誰に?」


「俺と赤T、というか俺たち勇者に対してだな」


「つまり、対象者はこの5人も含まれるのか!」


 ボーデン伯爵から打診されているのは、彼の娘だけではなく、タルコット侯爵派貴族の娘たちということらしい。

勇者の血を自分たちの家に入れたいということだろう。

これは、政治的にいろいろ面倒だぞ。

だが、それにより、正統アーケランドとしては結束を固める事にもなる。


「マジか! 貴族の娘ならば美人確定じゃん」


 一番に食いついたのは、やはり翔太だった。

嵐太とマイケルもソワソワしている。

ブレないのは結婚の意志がない翼と、ギャルにしか興味のない星流。


 だが、貴族の娘と結婚といっても、政略結婚では難しい面もあるぞ。

彼らに愛情を全く持っていない嫁だと逆効果ということもある。

それに今直ぐに彼らに癒しを齎せるわけでもない。

貴族の娘を最前線の戦場に連れて来るわけにはいかないしな。


「とりあえず、今は娼婦に癒してもらってくれ。

貴族娘とのお見合いは、ここの砦では無理だ。

奴隷もカドハチに手配してもらう必要がある。

あ、自由恋愛で女性騎士と恋人関係になっても良いからな」


 翔太なんかは、その可能性が高そうだぞ。

1人目って言ってたし、浮気で問題になりそうだが……。

まあ、複数の嫁を持つ俺が言えた事ではないけどな。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

お知らせ

 陽菜が嫁ではないとの勘違い部分を訂正しました。

しかも、後半にも残っていたため2回も。

ご迷惑をおかけしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る