第458話 勇者出撃1

 星流ひかるたちに合図を送った俺は、続けて彼らが出撃せざるを得ない状況の構築に移った。


「メテオストライク(極小)!」


 その狙いは城門の破壊。

門を支えている城壁部分にメテオストライク(極小)を直撃させる。

これはアレックスに籠城を選択させない手立てだ。


ドーーーーーー-ン!!!


 メテオストライク(極小)が直撃し、要塞都市の北側城門が崩れ落ちる。

このメテオストライク(極小)をアレックスの指揮所に直撃させてやろうかと思ったが、その射線上に星流たち召喚勇者の部屋があった。

さすがに無差別に攻撃して終わりとするには寝覚めが悪い。

無差別攻撃で良いならば、要塞都市にメテオストライク(特大)を落せば終わるのだ。


 なので、手加減が必要だった。

俺は一番防御力が高い城壁にメテオストライク(極小)を直撃させて、威力を弱めるしかなかった。

門を狙わなかったのも、貫通した後が恐いからだ。


「レッドドラゴン、グリーンドラゴン、アロサウルスたち、要塞都市に向けて突撃!

翼竜隊、城壁の大型兵器を火球で爆撃だ!

ブラキオサウルス、前進して橋頭保を確保。

全軍出撃、砦を出て布陣せよ」


 先陣として竜種たちドラゴンチームを突撃させた。

敵の騎士や一般の兵には竜種は荷が重い。

門が壊れれば、その竜種たちが雪崩れ込んで来る。

これを見て、アレックスも籠城を諦め、勇者たちを出してくるはずだ。


「よし、もう2発!

メテオストライク(極小)!×2」


ドーーーーーー-ン!!!


ドーーーーーー-ン!!!


 続けて2発のメテオストライク(極小)が城壁に突き刺さる。

それは崩れた城門の左右の城壁を崩し去り、内部への進入路が3つ大きく口を開けることとなった。

さあ、星流たち、早く迎撃に来い!


「リュウヤ、赤T、腐ーちゃん、サダヒサ、キラト、ニュー、みどりさん、デュラさん、カミラ、沙雪は対勇者で出撃。

打合せ通り、5人を倒したふりをして連れて来るんだ。

残りの勇者も無力化出来るならば連れて来い。

駄目ならば今回は残り5人は足止めだけで良い」


 こちらも10人の勇者&勇者級戦力で迎え撃つ。

あとは星流たちが上手くやってくれれば良いだけだ。


「オトコスキー、カミーユ、キャルは居残りで砦の防御。

陽菜クロエはセシリアの護衛だ」


 やっと敵陣が竜種たちの接近に気付いたようだ。

なし崩し的に防御態勢を取り始めた。

そして、砦前に正統アーケランド軍が居並ぶ。

狭い門を5万の軍勢が出るまでには時間がかかるのだ。


「全軍、ブラキオサウルスの後ろに隠れて進め!」


 これで、こちらが攻勢に出たとアレックスは判断するだろう。

大軍が動いた意味をアレックスならば間違えないはずだ。


「タルコット侯爵軍にメッセージは届いたか?」


「了解の魔法上がりました!」


 どうやら俺が打ち上げた火魔法をタルコット侯爵軍も視認したようだ。

翼竜によって伝えた作戦通りに動いてくれる、了解を示す魔法の合図が打ち上がったようだ。

手筈通り、タルコット侯爵軍もアレックスに圧力をかけることとなる。

状況によっては、そのままアレックスを討っても良いのだが、そう上手くはいなかいだろう。


「【遠隔監視魔法】!」


 これでこの場から戦場の様子を伺うことが出来る。

有視界距離までだが、眷属の視覚共有を使わない監視手段だ。

便利に使わせてもらおう。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


Side:アレックス


 私の目の前で、敵軍が砦を出て陣形を整えた。

これは間違いなく全面攻勢なのだろう。

そして、城壁は破られ、竜種が突撃して来る。

竜種の力、個体差はあるが1体で数万の兵に値する。


「勇者はまだか!」


「それが、近衛勇者が化け物にかかりきりで……」


 召喚勇者たちは、こちらに来て2か月にしかならない。

ギフトスキルを持っているとはいえ、育成途中ではさすがにお付きの近衛騎士――今は近衛勇者か――がいないと戦場には出せないと思われている。


 だが、ギフトスキルと元々のスポーツ選手のポテンシャルがあれば、竜種ぐらいは対処可能なはず。

いや、今竜種に対抗できるのは召喚勇者たちしか居ないのだ。

魔族化が済んでいれば……。

判断が遅すぎたか。


「単独で良い、出させろ!」


 あいつら召喚勇者たちも仲間でお互いの身を護るぐらいは出来るだろう。


「ドラゴンか、俺様に相応しい相手だな」

「丁度5体いるらしいじゃないか」

「ならば1人1体、誰が一番早く討伐するか賭けようぜ」


 私が選抜した上位5位までの召喚勇者がバルコニーに出て来た。

この連中には従属と意識高揚の洗脳がかけてある。

おかげで自信満々で戦場に向かってくれる。


「勇者たちよ、竜種を倒せ!」


「「「「「任せておけ!」」」」」


 勇者は私の洗脳が効きにくい。

私の洗脳は勇者とは相反する魔王の力によるものだからだ。

従属の洗脳は、きっかけさえ有れば解除されてしまうことがある。

だからこその魔族化だった。

魔族になれば、魔王の力が効き易くなって当然だろう。

なので、今は軽い従属と戦いに赴くことを好むような洗脳をかけている。


 私自身が遠ざけたとはいえ、やつ真の勇者の【支配】スキルは勿体なかった。

やつに支配させて私が従属の洗脳をすれば、それは絶対服従に近いものとなったのだ。


「(俺たちは)どうするっすか?」

「星流は翼竜に行け」

「俺たちは4人で敵側の勇者にあたる」


 6位から10位の勇者たちもやって来た。

星流は翼竜に実績があるが、他の者たちは未知数だ。

集団であたるというのは正解だろう。


「お前たちも直ぐに行け!」


「「「「「了解しました(っす)」」」」」


 私が本来の力を出せれば、あの程度の竜種は一捻りだったのだが……。

まさか皇国に力を封印されてしまっていたとは……。

早くなんとかして完全復活しないとな。

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