第459話 勇者出撃2

 翼から得た野球部部屋の5人の能力は、アレックスにより5人毎に別々に修行させられていたことから漠然としたものだった。

そのギフトスキルの詳細は秘匿され、翼には彼らが訓練時に持っていた武器などをチラ見した程度の知識しかなかった。

優斗まさとは二刀、遥斗はるとは槍、大翔ひろとは棍、大地だいちは短剣と大盾、隆之介りゅうのすけは長剣を持っていたので、それが得意武器ではないかという。

▲■となんとか+と3人組と大地だいちが野球部、隆之介りゅうのすけが剣道部だそうだ。

「▲■と」は名前の最後が「と」の3人のことね。


 優斗まさとがプロからスカウトを受けたという選手で、190cm近い身長でイケメン。

この世界に来て髪が伸びただろうにも関わらず未だに坊主刈りだとか。

投手と打者の二刀流の完成度から3年生と間違えられたらしい。

それで剣も二刀流とか神様がネタに走ったのだろう。

ドラフト前の青田買いは違反らしいので、正式なスカウトではないが、それが自慢となっている選手だ。


 遥斗はるとは控えのピッチャーで身長が180cm弱、野球少年を思わせる顔で、やはり坊主刈り。

優斗まさとのライバルだ。

槍は複数所持していたらしく短槍らしい。

それを投擲するのかもしれない。ピッチャーだけに。


 大翔ひろとは2人の中間、身長185cmぐらいの細マッチョ坊主。

特に色黒で、精悍な顔立ちのスラッガー。

棍使いとは竜也リュウヤに似たスキルのようだ。


 そして大地だいちは身長180cm、温和な顔で横に広い体格で、やはり坊主頭。

その体格から想像できるがキャッチャーだ。

守備の要だから盾って、神様もそれなりにプロフィールからスキルを選んでいるのかもしれない。

4人とも魔法関係のスキルやギフトスキルによる特殊能力は不明だ。


 それにしても、この4人、掟破りの漢字被り、読み被りだ。

小説などの創作では紛らわしいので避けろと言われているようだが、現実だと名前の流行があるために被ることが多いらしい。

下手すると同じ漢字表記で読みが違うなど、先生泣かせだとか。

まあ、星流ひかるのような漢字を素直に読まないキラキラ名前ネームでないだけましなのだろう。


 隆之介りゅうのすけは、ツーブロックの長めの髪で身長180cm。

細目の所謂塩顔。

剣道部だそうなので、解り易く剣技の上位スキルを持っているだろう。

それにしてもフィジカルエリートたちは皆身長が高い。

基礎的な身体能力も高いだろうから、育成途中といってもそのアドバンテージは侮れない。


 そんな5人に対するのは、レッドドラゴン、グリーンドラゴン、アロサウルス(雄)、アロサウルス(雌)にブラキオサウルスだ。

各々が竜種1体に対峙している。


「恐竜だぜ、恐竜! 俺はこいつにするぜ」

「おい、俺は緑のドラゴンだぞ! こんなの2人じゃないと無理だろ!」

「バカいえ! 優斗まさとだって赤いドラゴンだぞ、そんな暇があるか!」

「俺は1人で充分だ! 他を援護してくれていいぜ!」

「さすが優斗まさとだ、頼もしいな!」

「おい、後ろのデカブツブラキオサウルスは後回しにして俺を援護しろよ!」

「わめくな遥斗はると! こっちを終わらせたら援護してやる」


 どうやらレッドドラゴンに優斗まさと、グリーンドラゴンに遥斗はると、アロサウルス(雄)に大翔ひろと、アロサウルス(雌)に隆之介りゅうのすけがあたっているようだ。

大地だいちは急遽ブラキオサウルスをスルーし、大翔ひろとの援護に回り、先に一番弱そうなアロサウルス(雄)を倒すつもりのようだ。


『ドラゴンチームは、そいつらの足止めが目的だ。

無理はするなよ』


 俺は念話で竜種たちドラゴンチームに命令を与える。

彼らにはこんなところで倒されてもらっては困るのだ。

危なくなったら眷属召喚で戻すつもりだ。


「うわ、なんだこいつら!」


 そこにキラト、ニュー、デュラさんが乱入する。

勇者に準ずる実力の持ち主たちが現れて、野球部組5人が慌てる。

これで2対2以上に持ち込める。


 俺たちの第一目的は、星流たち5人の保護だ。

第二目的は野球部連中の保護で、第三目的はアレックスの討伐だ。

だが、第二と第三は実現可能だとは思ってはいない。

出来たら儲けもの程度だ。


「さて、星流たちは?」


 野球部連中よりも遅れて出撃して来た星流たち5人だが、その移動速度の差で星流のやつが翼竜に向かって早速飛んで来た。

星流には翼竜と戯れて一緒に砦方面に墜落するように言ってある。

まあ、これはいつもの砦便と同じパターンなので慣れたものだろう。


 そして翼たち4人が向かって来たのは、竜種たちドラゴンチームの後ろから現れたこちらの勇者チーム7人――リュウヤ、赤T、腐ーちゃん、サダヒサ、みどりさん、カミラ、沙雪――だ。


「腐食魔法!」


「うわ、腐ーちゃん、容赦ないな!」


「男子運動部は……敵!」


 腐ーちゃんがボソリと呟く。

何のスイッチが入ったのかわからないけど、ちょっと怖い。


 腐食魔法が発動し、翼たち4人の足元に腐食ガスが纏わり付く。


「「「「ギャーーーッ!」」」」


 足首が腐食して朽ち果てた4人は悲鳴を上げ走っていた勢いで盛大に転ぶ。

サッカー選手や陸上選手に足の欠損ってトラウマものだぞ!

まあ、後で治せるから良いんだけどね。

麗の癒しでも良いし、エクストラポーションだってある。

なんだったら俺の回復魔法だってそれぐらいは治せる。


「確保!」


 リュウヤ、赤T、サダヒサが各1人を担ぎ上げる。

そして残った1人――柔道部の嵐太――をカミラが魔法で浮かせて運ぶ。


「撤収!」


 勇者を確保した4人が走る横で腐ーちゃん、みどりさん、沙雪が魔法を準備して援護体制をとる。

そして、そのまま砦に向かって全力で走る。


「遠隔監視魔法解除」


 よし、これで5人を救出したぞ。

さすがにあそこ――部位欠損――までしたならば、アレックスには助けるつもりだとは思われないだろう。

こちらに来たら洗脳を解いて早く治してやろう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

お知らせ

 「〇〇と3人組」が伏字だとの誤解を産んでいたようです。

確かに〇〇だとそう読めてしまいますね。

しかも「と」が接続詞になって誤解を煽っている!

これは@leomomo様ご指摘の通り、名前の最後が「と」の3人組という意味でした。

紛らわしくてすみません。

「▲■と3人組」に訂正し加筆しました。


 読み方も人それぞれなんで、誰もが納得する表現は難しいなぁ。

良かれと修正したら、それにも文句が来るし……。

申し訳ないですが、時間の無駄とか平気で失礼なことを書いてくるレアケースは対応しきれません。

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