第439話 アレックスの策
Side:アレックス
こうも私の策がピタリと嵌るとはな。
まさにこれが笑いが止まらないということなのだろう。
魔族化勇者に拠点を襲わせることで、敵の中心人物である
意外に情報伝達が早かったことに驚いたが、むしろ
しかも
魔族化した勇者を10人も派遣したのだ。
間者によると、あの拠点には召喚勇者が10人も残っていないはず。
半数が生産職だと聞く。
魔族化で強化された勇者たちに太刀打ちできるわけがない。
そこには
どうやら、こちらの勇者が30人もいることを警戒したのだろう。
まさか、そのうち20人が近衛騎士を使ったダミーだとは思ってもいないのだろう。
まんまと騙されてくれたものだ。
『皇国の兵に告げる。
お前たちが味方と信じている正統アーケランド王国を称する反乱軍は、魔王に支配されているのではないのか?
良く見て見ろ。
魔物を使役しているのは、どこの軍だ?
皇国は、魔王討伐を国是としている尊い国であろう?
なぜ、下賤な魔物を使役する者と共に戦うのだ?
お前たちは騙されているのではないのか?』
皇国と正統アーケランドを名乗る第二王女派の反乱軍の分断を謀る。
皇国上層部が納得出来ていたとしても、下々の兵までがアーケランドの名を持つ反乱軍を受け容れているわけがない。
我がアーケランドと皇国には根深い因縁があるのだ。
敵の敵は味方などという単純なものではない。
それを乗り越えて協調する理由となっているのが、私のことを魔王だと断定しているからなのだ。
あの魔族化勇者がしくじったせいで証拠を残し過ぎたのだ。
それが皇国が反乱軍と組む理由となってしまっている。
だから、反乱軍も魔王軍ではないのかという楔を撃ち込んでやったのだ。
これは伏線だ。
次の一手で楔が岩を割ることだろう。
『我らこそ、勇者軍である。
勇者の力、目にも見よ』
その次の一手のために、こちらから攻勢に出た。
勇者軍を強調したのにも訳がある。
反乱軍こそが魔王軍であるという印象操作のためだ。
少しずつでも末端の兵に反乱軍に対する悪感情を刷り込むのだ。
この攻勢は本気の攻撃ではない。
これは反乱軍にいるだろうオトコスキーをおびき出すことが目的なのだ。
兵には囮になってもらおう。
私にはオトコスキーの魔力を感じとることが出来る。
あれでも元部下なのだ。
慣れ親しんだ魔力の持ち主が敵の司令部にいることぐらいは感じとれる。
その存在を隠そうともしない。
だが、オトコスキーの存在こそ、やつら反乱軍にとっての弱点となるのだ。
勇者30人をあげての攻勢に、案の定、オトコスキーが前に出て来た。
その圧倒的な広域魔法攻撃に敵味方双方の注目が集まる。
「バカめ。あの姿、誰の目から見ても魔族だとわかるのにな」
反乱軍の次席指揮官は、このことがどれだけ拙いかを理解出来ていない。
そこに付け込ませてもらう。
『見ろ! 正統アーケランドを名乗る反乱軍は、魔族を使役しているぞ!
あの特徴は、
これこそ、正統アーケランドが魔王軍である証拠だろう!』
さあ、岩が割れるぞ。
この疑念が皇国の兵に動揺を与える。
そして、想定外だったが、反乱軍の内部にも不審を呼んだようだ。
さあ、止めだ。
もうそろそろ皇国軍に伝令が届く。
私の秘密兵器【狂魔の笛】が今頃迷宮を氾濫させ、皇国領を魔物の氾濫が襲っているはずだ。
ついに皇国軍が退き出した。
国が襲われたならば、戻るのは当然だろう。
皇国軍の補給路を分断する位置で氾濫させるなど、まさに神の采配だと自画自賛したくなる。
そして、反乱軍内部にも撤退する領軍が出たようだ。
これで30万いた軍勢が一気に5万程度に減った。
さあ、蹂躙の時間だ。
「この
これが笑わずして何なのだ。
策が嵌りすぎて笑いが止まらないぞ。
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