第424話 魔族勇者戦2
俺は魔族勇者5の前に降り立った。
案の定魔族勇者5は、俺を倒すために足を止めた。
どうやら魔族勇者2の命令が生きているようだ。
重装鎧の魔族勇者5の出方を伺うと、どうやら武器を水堀に落して来たようだった。
背中の武器を取ろうとして、そこにそれが無いことに気付いたようだ。
魔族勇者5は、武器を使うことを諦め、片手を地面に付けるとそのまま突進して来た。
まるでアメフト選手か力士のようだ。
明らかなパワータイプだ。
だが、残念だったな。
飛竜を纏った俺は飛べる。
俺は空中にひらりと飛んで魔族勇者5を躱した。
そうなると鈍重な魔族勇者5は俺に手を出せない。
「ず
魔族勇者5が地団駄を踏む。
俺はこの優位を利用し、魔族勇者5に雷魔法をお見舞いする。
飛竜は雷属性を持っているため、纏に使うと雷魔法に補正が加わるのだ。
「【サンダーブレイク】」
ズドーーン
雷魔法が直撃し、魔族勇者5の身体を内部から焦がす。
「グワーッ!!!」
空からの一方的な攻撃に魔族勇者5が苦悶の表情を見せる。
「い
だが、その身体が直ぐに癒されていく。
「自動修復か!」
トロールという魔物がいる。
図体がデカく力はあるが鈍重で、攻撃を当てるのは容易なのだが、その傷が直ぐに治ってしまうため、やっかいな相手だ。
魔族勇者5は、そのトロールと似たような性質を持っているようだ。
このような敵を倒す方法は、修復スピードを上回る攻撃をしかけなければならない。
俺は雷魔法を連発した。
だが、魔族勇者5は、その被害を上回る速度で治ってしまう。
逆に俺の方は、急激にMPが減っていた。
魔力回復スキルで徐々に回復するものの、それを上回る魔力消費量だったのだ。
このままMPが尽きるまで雷魔法を撃ったとしても、魔族勇者5を倒せるのか疑問だった。
「【メテオストトライク極小】!」
俺はメテオストライクを魔族勇者5にお見舞いする。
メテオストライク自体もMPを大量消費するのだが、それは無から巨大隕石を生成しているからで、極小の場合はその分のMPが節約できる。
その隕石に高高度から落下する加速度を加えるのがメテオストライクなのだ。
魔族勇者5の頭がメテオストライク極小で吹き飛ぶ。
頭を失えば終わるかもしれない。
だが、そう簡単には行かなかった。
魔族勇者5は、頭も修復してしまったのだ。
メテオストライク極小はそれなりのMP消費がある。
連発しても大丈夫だろうか?
だが、待て。これって高加速のストーンバレットと何が違う?
そもそも魔法を加工するのがチートなのか?
元々ストーンバレットは速度を弄れない。
メテオストライクも隕石の大きさを弄れない。
それが弄れるようになると、石の大きさで速度を遅くしたメテオストライクが出来る。
それってストーンバレットじゃね?
つまり、元々は同じ魔法なのではないだろうか?
まあ、そんなことは良い。
MP消費量に違いが無ければな。
もしかすると高加速ストーンバレットの方がMP節約できるのではと思っただけだ。
「【ストーンバレット高加速】!」
胴鎧を打ち抜きストーンバレットが魔族勇者5の腹に大穴を開ける。
威力は問題なし、そしてMP消費量は?
結果は同じだった。
つまり石の大きさと速度を変えた同じ魔法だったのだ。
「いや、そんなことより、これも自動修復で簡単に治ってしまう!」
そうやらメテオストライク極小連射も無駄なようだ。
ブン!
空中で思案していた俺の顔の横を何かが飛んでいった。
直撃していたらダメージを負っていたかもしれない。
「何を投げた!?」
それは魔族勇者5の左腕だった。
奴は自ら腕を千切って投げて来たのだ。
その腕が見る間に修復されていく。
「なるほど、無限に補充出来る礫というわけか」
魔族勇者5は、その自動修復能力で、自らの一部を投的武器に変えたのだ。
「奴の修復は、MPを消費しないのか?」
MPを使った修復ならば、いつかMPが切れれば修復しなくなる。
俺もMP切れの懸念でこれ以上の魔法攻撃は無駄かもしれない。
俺には次の戦いもあるのだ。
ここでMPを使い切るわけにはいかない。
「となると物理か」
俺は剣で魔族勇者5の修復能力に対抗しなければならなかった。
だが……。
「それにはその重装鎧が邪魔だな」
奴には唯一修復できないものがあった。
いま奴は冑と左腕の手甲を失い、そして胴鎧には穴が空いたままだった。
奴が修復できないもの、それは纏っている重装鎧だった。
「【ストーンバレット連射】!」
俺は重装鎧が壊れる程度のストーンバレットを魔族勇者5に連続で当てる。
目的は重装鎧の剥ぎ取りだ。
そしてついに魔族勇者5は丸裸となった。
「やはり力士?」
その肉体はアメフト選手というよりあんこ型の力士だった。
いったい何処から召喚して来たというのだ?
魔族勇者1はスピードのあるアスリート体形だった。
そんな者たちが集まっている場所……。
やはりあのスポーツ特待のある私立校なのだろう。
いや、そんなことより、早く魔族勇者5を倒さないと、他が危ない。
「悪く思うなよ」
俺はスピードのギアを上げて魔族勇者5を斬りまくった。
その腕が丸太のように襲い掛かって来たが、正面から相手をしなければ問題なかった。
脚を斬り、腕を斬り、頭を飛ばして胴を断つ。
それが修復する暇も与えずに微塵斬りにして行く。
そしてついに俺は、魔族勇者5を倒すことに成功するのだった。
「次は?」
俺は【探知】で状況を把握する。
近くで不二子さんが魔族勇者9と戦っていた。
そしてGKが魔族勇者8を倒したところだった。
GSに追い立てられた魔族勇者7は魔の森の中へと後退したようだ。
魔の森の木々がGSから身を守ってくれると思ったのだろう。
そこへGKが援護に向かったようだ。
「【メテオストライク極小】」
俺は不二子さんが対峙していた魔族勇者9にメテオストライクを撃ち込んだ。
魔族勇者9は魔法耐性は高かったようだが、物理に弱く、そのまま弾け飛んだ。
「不二子さん、GSが相手をしている魔族勇者7が侵入しないように警戒していてくれ」
「わかったわ」
これで魔族勇者7もどうにか出来るだろう。
後は魔族勇者2、3、4だな。
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