第425話 魔族勇者戦3

 俺は内塀に添って東門のやや南側へと飛んだ。

そこではさちぽよと紗希サッカー部女子が魔族勇者4と戦っていた。

彼女たちに与えた眷属のゾクゾクアースタイガーギンシルバーウルフ、そして援軍として投入したT-REXとクワタンも一緒だ。

魔族勇者4は内塀内側の敷地内に侵入している。


 その2人と4匹の様子に俺は焦りを覚えた。

満身創痍、ボロボロだったのだ。

さちぽよと紗希サッカー部女子ならば、各々がサダヒサ程度には戦えるはず。

そこにT-REXとクワタンが加勢すれば、優位に戦えたはずなのに。

それがたった1人の魔族勇者相手にどうしてこんなことに?


「2人と眷属たちは、敵から離れろ!」


 俺が加勢に来たと気付いた2人と4匹が俺の指示に従って敵から離れた。


「【メテオストライク極小】」


 そう、乱戦で彼女たちに当たりそうで、メテオストライクの射線が取れなかったのだ。


 メテオストライクの石粒が高速で魔物勇者4に向かう。

魔物勇者9はこれ1発で倒すことが出来たのだ。

その戦果に俺は自信すら持っていた。


カキーーーーーン


 鋭い音と共に、メテオストライクが弾かれた。


「ヒロキくん、こいつ物理障壁持ちだから!」


 紗希の声に、俺はどうしてこうなったのかを理解した。

さちぽよの職業は魔法騎士で、紗希の職業は動物の友だが格闘術も持つ。

紗希が格闘術を使いつつ眷属を巧みに操り、さちぽよは剣と魔法で戦う。

その戦闘スタイルでは、物理障壁をなかなか突破出来ないのだ。

さちぽよの魔法も大規模魔法が多く、乱戦では使いにくい。


「こいつ、魔法耐性も持ってるからー」


 さちぽよのファイアランスが魔族勇者4に当たったが、そのダメージも少なかった。


「ちまちま削るしかないのか?」


「それもダメ。速度は遅いけど回復を持ってる」


 つまり回復速度を上回るダメージを与え続けなければ勝てないのか。

物理も魔法もあまり効かず、回避能力も高い。

となると……。


「2人とも、屋敷の救護所に戻れ。

ゾクゾクとギン、T-REXにクワタンも一緒に麗のスキルで回復してもらうんだ。

俺はちょっと危険な手段を使う」


「わかった」

「気を付けてね」


 俺の指示に、さちぽよと紗希が疑問も呈せず従う。

俺は2人と4匹が去るのを見送る。

それを魔族勇者4が追おうとするが、その前に俺は立ち塞がる。

新たなターゲット、しかも1人と見て舐めてかかって来たのか、魔族勇者4がさちぽよたちの追撃を止めた。

好都合だ。

そしてついにさちぽよたちが安全圏の外に出た。


「飛竜纏解除。眷属纏モドキン!

これでもくらえ!」


 俺は魔族勇者4の腹を殴ると、モドキンの致死毒を注入した。


「モドキン纏解除。モドキン、毒放出停止だ!」


 モドキンの毒は任意で放出と停止が出来る。

だが、怒りの状態だと無意識に毒を出し続けてしまう。

それを温泉拠点内でやられると土地が汚染されてしまい厄介なのだ。

モドキンは最終手段。あまり長く使うわけにはいかない。


「眷属纏飛竜」


 そして俺も飛竜を纏って空中に逃げる。

魔族勇者4に注入した毒が漏れると俺も危険なのだ。

そのまま様子見をすると、魔族勇者4がその場にくずおれた。

モドキンの毒によるダメージが、魔族勇者4の回復を上回ったのだ。

暫くして魔族勇者4はモドキンの毒により死を迎えた。


『くっ! 各個撃破も出来んとは!

自爆攻撃解禁! 聖女を殺せ!』


 魔族勇者2が、拡声魔法で新たな命令を下す。

やはり麗をターゲットにしていたようだ。

欲が出て同級生を各個撃破しようとしたが、同級生たちは1人で対峙しないように立ちまわっていた。


 全員で集中して狙われたら危ないところだったのに、この魔族勇者2の命令もダメダメだったな。

もしかすると、魔族化で知能に影響を受けなかったが、元々の知能が低かったのかもしれない。


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青Tチームと不二子さんのいる位置が逆だったので修正しました。(2022.5.31)

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