第418話 魔族勇者迎撃1

 温泉拠点に転移して来ると、俺は魔族勇者の所在を【探知】スキルで探った。

外塀の外側に3人、水堀の中に2人、そして内塀の中に4人の反応があった。

既出だが、温泉拠点は2重塀に囲まれており、その塀の間は広場となっているが、蓋を落とすと下は堀となっている。

そこへ任意で水を入れることで空堀としても、水堀としても機能するようになっている。

蓋を落とすのは温泉拠点が襲われた緊急事態のみだ。

つまり、既にヤバイ状態だってことだ。


「外塀の外側にいる魔族勇者3人は魔術師ジョブか。

くそ、戦闘奴隷に多数の犠牲者が出ているな。

ここは不二子さんとGKが抑えているのか」


 さすが不二子さん、3人を相手取って戦っているようだ。

そして、GKとその配下が後方かく乱を行なっていた。

だが、攻め手に欠けているようだ。

ここは殲滅級眷属を投入するべきか。


「眷属召喚ジャイアントセンチピード、魔族勇者を排除せよ」


 GSは【眷属化】スキルの実験で眷属化した。

これを使うと1度手放した魔物や野生種も眷属化出来るのだ。

ただGSは大きすぎて外にしか召喚出来ないから、こんな場面でしか使えない。

これで3対3になる。

ここは不二子さんとGK、GSに任せておけるな。


「水堀に落ちた魔族勇者2人は、前衛職ジョブ、しかも重鎧系か。

それで脱出に難儀しているのだな」


 水堀の中の魔族勇者2人は、不二子さんが居ない方角から外塀の内側に侵入したらしい。

そのタイミングで誰かが落とし穴の蓋を外して、その下にある水堀に落ちたのだろう。

だが、この2人を迎撃する戦力はなく、このままではそのうち内塀の中に侵入してしまう。

迎撃戦力を投入しなければ。


「眷属召喚モササウルス、水堀の中へ。

モササウルス、魔族勇者を討て!」


 ここは強さ的にはリバイアサンを召喚したいところだったが、リバイアサンには水田地帯の魔物たちを抑え込む任務がある。

あそこの沼地と湿地帯は、凶悪な水棲魔物が多すぎるのだ。

それをリバイアサンの威圧効果で制して水田の安全を確保している。

水田と、そこで作業している奴隷たちの安全を考えると、動かすわけにはいかないのだ。

そのため、リバイアサンは最初から戦力としてカウントしていなかった。


「内部に侵入した魔族勇者は4人か」


 本来ならば、温泉拠点内部を最初に心配するところだが、【探知】の結果により、水堀の対策を優先しても大丈夫だと判断した。

それは4人の魔族勇者が連携せずにバラバラで攻撃をしており、それに対してこちらは複数でしかも眷属を連れて迎撃していたからだ。


 青Tとオスカルバレー部女子+眷属、パツキンとアンドレバスケ部女子+眷属、さちぽよと紗希サッカー部女子+眷属の3班が各班1人ずつの魔物勇者と対峙していた。

そして、結衣、瞳美、麗、コンコン、裁縫女子+眷属、加えて薔薇咲メグ先生とシモーヌ喜多川が、もう1人の魔族勇者を抑え込んでいた。

いやむしろ最後の組はラキがいるため、既に1人の魔族勇者を倒した後に、2組が合流していたようだ。


 だが、パン屋さん3号と5号が倒されてしまっていた。

きっと皆を守るために善戦してくれたのだろう。

パン屋さんとなる食人植物トレントは、たまご召喚をすればまた増やせるが、それは3号と5号とは別個体なのだ。

眷属が失われるのは、心にチクりと来るものがある。

だが、彼らの犠牲のおかげで同級生たちには人的被害はまだ出ていない。


「誰も傷つかずに、なんとか持ちこたえてくれていて良かった」


 だが、それは戦力が均衡した膠着状態であって、結衣たち側が特に有利というわけではなかった。

もし、水堀の中の魔族勇者が合流してしまえば、戦力の逆転が起きてしまい、不利になるところだったのだ。

俺が転移して来なければ危なかったということだ。


「魔族勇者の知能が低くて助かった。

わさわざ連携してくれなかったことで各個撃破が可能だ」


 さて、戦力の均衡を破る援軍を投入しようか。


「眷属召喚オケラ、ヘラクレス、青Tチームを援護だ。

眷属召喚アナコンダ、カブトン、パツキンチームを援護だ。

眷属召喚T-REX、クワタン、さちぽよチームを援護だ。

眷属召喚ハッチ、結衣チームを援護だ」


 そして、俺は結衣チームに合流だ。

俺の不在時に俺たちの家を、家族を、よくも襲ってくれたな。


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お知らせ

 コメントでご指摘のあった部分に説明を加筆しました。

人的被害は文脈的に「同級生たちには」が付きます。

GSが【眷属化】スキルで眷属化しているところとか、流れで解かるかと思ったのですが、説明不足でした。

すみません。

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