第414話 タルコット侯爵2
お知らせ
本日2話投稿です。昨日分の補填です。
前話があります。
読み逃しがないようにお願いします。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ちょっと待ってください。
このまま徒歩なのですか?」
ボーデン伯爵の護衛騎士が待ったをかけた。
俺たちが転移して来たことは隠したいので、転移場所はポロック子爵領の領都から少し離れた場所になる。
そこからの移動手段が徒歩だったために、ボーデン伯爵の護衛騎士が戸惑ったのだ。
「王女殿下が、いや伯爵様でも徒歩で訪問するなど、前代未聞です。
偽者と判断される可能性があります」
そうは言っても、ここで馬車を手配するなど不可能だ。
うちの家紋入り馬車では、皇国の紋章に似ているせいで、逆に面倒なことになるだろうしな。
「仕方ないだろう。
ここは時間がかかっても説得するしかない」
ボーデン伯爵の説得で、護衛騎士も困り顔のまま納得した。
まあ、確かに行ってみるしかないのだ。
「これは、騎士クライド、どうされたのだ?
そちらは、まさか王女殿下!?」
王女が徒歩でやって来るなど、前代未聞だったが、城門を守る衛兵がボーデン伯爵の護衛騎士のクライドと顔見知りだったことで、事は簡単に済んだ。
「なるほど、衛兵レベルでは伯爵の顔など知らないが、王女の顔ならば知っているのか」
「王女殿下ならば絵姿が見られますが、伯爵は普段は馬車の中ですからね」
転移で来てしまうと、こういった弊害があるのか。
護衛騎士ならば顔を知られているけれども、伯爵が顔パスということは無いのだ。
もちろん王女が徒歩など有り得ないのだが、伯爵が同行するならばその身分は確約されたものとなる。
今後は気をつけるべき事案だな。
サダヒサが皇国武士を5人しか連れて来なかったことで、
馬も1人換算でいけるか?
まあ、そんなことは置いておいて、城門からは早馬が走り、ポロック子爵にボーデン伯爵に加えてセシリア王女来訪が伝えられ、早速タルコット侯爵との会談がセッティングされた。
ポロック子爵家嫡男の結婚式が終わっていて良かったよ。
中断させるわけにもいかないからね。
「お話はクックル便で把握しております」
セシリア王女を前にして、タルコット侯爵は臣下の礼をとりそう言った。
だが、それはあくまでも王女に対しての礼であり、正統アーケランドに参加する意志表明ではない。
「早速ですが、例の魔族勇者を見てもらいます」
「承知しました」
タルコット侯爵は、セシリア王女の
セシリア王女の隣の俺を王女の配偶者と認識し、皇国武士が同盟となっていることに驚き、有名なアーケランド勇者が従っていることで納得したという感じだろうか。
セシリア王女に促され、腐ーちゃんがアイテムボックスから魔族勇者を取り出した。
「拝見いたそう」
タルコット侯爵は、一瞬目を見開いたが、動揺することなく、魔族勇者を見分し始めた。
「捏造の可能性も考えていましたが、間違いないのですな」
タルコット侯爵の第一声は、魔族勇者が本物であり、アレックスが魔王であるとの確信を持ったという雰囲気だった。
「この鎧は、我が国が召喚勇者に支給しているものだ。
それも新しい。いや、新しすぎる」
タルコット侯爵は、魔族勇者の鎧を示して指摘する。
「そなたたち今代勇者、いや、もう先代勇者になるのか。
その誰かの鎧を無理やり着せたものではないと確認した」
その鎧の新しさから、リュウヤたちのようなレベル上げで戦闘に明け暮れた者の傷ついた鎧ではないのは明白だった。
まあ、リュウヤたちは、その後専用鎧を与えられているのだが。
赤Tなんか全身真っ赤な鎧だしな。
「鎧というのは、量産品であっても個人毎に細部を調整をするものだ。
これは、間違いなく、この魔族の体格に調整されたものだとわかる」
そんなところまで見ていたのか。
だが、その観察眼のおかげで本物だと確認してもらえたということだろう。
「姫様、王は洗脳されているのですな?」
「はい。わたくしも洗脳下にありましたが、旦那様に助けてもらい洗脳を解いて頂いたのです」
「そうでしたか。では、こちらが姫様の旦那様ということですな?」
そう言うとタルコット侯爵は、やっと俺と向き合った。
「そうです。わたくしの旦那様は真の勇者様なのです♡」
「それは私が確認いたしました」
俺のステータスを見たことのあるボーデン伯爵が追認する。
その肩書が有効ならば、ステータスぐらいいつでも見せるぞ。
「おお、ならばアレックスが魔王というのも真実味が増しますな」
魔族勇者の異形、それと対立する真の勇者。
これだけの材料が揃えば言う事は無いだろう。
「我が派閥をあげて、正統アーケランドに参加いたしましょうぞ!」
元々バーリスモンド侯爵派と対立する派閥だったこともあり、アレックスに与したバーリスモンド派閥と対するためにも、タルコット侯爵は正統アーケランドに付いた方が良いと判断したようだ。
そこにはアーケランドが魔王と対して来た国家であるという自負と矜持というものがあるように見えた。
「私は他国を攻めることにも疑問を持っていたのだ。
我らは魔王に対する矛でなければならない。
だからこそ、我が国には勇者召喚の儀が神より託されているのだ。
その使命を全うすることこそが真のアーケランド王国なのである」
どうやら、タルコット侯爵は正統なアーケランドの使命を忘れていなかったようだ。
となると現王がアレックスに洗脳される前に行った侵略戦争もよしとしていないのか。
「我が派閥と中立派閥に、いや、全ての貴族家に伝えよ。
我らの敵はただ1人、魔王アレックスを討ち、真のアーケランドを取り戻すのだ!」
この人を派閥ごと味方に出来たのは幸運だったな。
あとは、バーリスモンド侯爵のような腐った貴族を駆逐すれば良いだけだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます