第408話 対魔族勇者の戦力を増強する2

 さて、サダヒサとの会話で良い具合に時間を潰すことが出来た。

俺の魔王が消えていなかったら、どうなっていたか判らないという危険な状況だったけど、上手く回避することが出来て良かった。

サダヒサが刀の柄に手をやったときに、キラトとオトコスキーが臨戦態勢に入っていたからな。

2人が理性の無い魔物ならば、あの時点でサダヒサは死んでいたことだろう。

そうなれば、皇国と俺たちの関係は拗れに拗れて最悪の事態となっていた事だろう。


 これもオトコスキーの魔王様発言のせいだし、3人で斬り込むなど侯爵軍を舐めてかかっていた油断のせいだ。

リュウヤと赤Tでも同行出来ていれば、この余計なやり取りも必要なかったことだろう。


 いや、ある意味、これで良かったのかもしれない。

その結果として、自重せずに大っぴらに悪魔卵なんて孵せているのだ。

今回の卵からは何が孵るだろうか。

空の運搬系魔物が出れば、良いのだが。


 サダヒサが去り、良い頃合いになり、まず孵ったのは竜卵だった。

「話せる奴かもしれない」という注釈つきのやつだ。

鶏の卵を巨大にしたような形状の卵に罅が入る。

いよいよ孵化が始まった。


パキペキポキ


 卵の殻が割れ、中から緑色の鱗を持つ肌色の皮膚が見えた。

丁度、背中を丸めた状態の背中が見えているようだ。


「やはり竜人か!」


 これは期待が持てる。

その丸まった背中がゆっくりと解かれ、上半身が現れた。


「ん? 女性型?」


 その上半身には乳房の形状が見て取れた。

爬虫類が乳房?と疑問に思ったが、そもそも竜は爬虫類なのか?

そして竜人となれば、分類など何処かへ行ってしまって当然だった。

だいたい獣人や鬼人も卵から出て来るのだ。

卵から人型が孵る、その時点でおかしいのだ。


 見る見るうちに、あの卵のどこに収まっていたのかというサイズの竜人女性が現れた。

一糸纏わぬ姿だが、皮膚が所々巧い具合に鱗で覆われているので、隠すべきところは隠れている。

顔は人に酷似して髪の毛があり、角は無い。

竜っぽいのは頬に少し鱗が残る程度だ。

尻尾があるが、あまり長くなく、お尻から20cmほど出ている感じだ。

なかなかの美人だった。

人型は貴重だ。この竜人女性は当然眷属化だ。

眷属化すればステータスが見れるのだ。

彼女はどんな種族なのだろうか?


眷属 ドラゴニュート竜人 女性 ▲ 竜化 槍術 ブレス 硬化 人語理解 気配り


「ご主君、お初にお目にかかる。

今後ともよろしくお願いいたす」


「こちらこそお願いする」


 どうやら「話せる奴かもしれない」という注釈は、言葉を話せる奴で正解だったようだ。

それにしても、また女型の眷属となると、嫁ーズに話を通さないと面倒になるかもな。

不二子さんとかコンコンとか、勝手に寝室に来るからな。

手は出してないけど、房中術で介入して来るのだ。

ここは、そのようなタイプなのか訊ねなければならないか。


「あー、君はなんというか夜は……」


 そこで俺は、不二子さんたちのように夜の生活に介入するのかと訊ねようとして、ハタと気付いた。

これってセクハラじゃん。

そう思ったとたん、俺はコンプライアンスを意識して、その後を口にすることが出来なくなった。


「夜の伽を心配なさっているのか?

そんな言いにくい話でも、ご存分に仰ってくだされ。

そこは嫁御殿と調整いたす所存だ」


 彼女は俺の雰囲気を察したのか、自ら言いにくい話を答えてくれた。

俺が求めていてもいなくても、どちらにも対応できるパーフェクト回答。

その気配り、なんて話せる奴なんだ。

彼女はさっぱりした性格なのだろう。

ん? 話せる奴?


「それか!」


 俺が注釈の意味を理解した瞬間だった。


「???」


 不思議な顔をしているドラゴニュートをニューと名づけて服と装備を与えることにした。

武器は槍だった。

だが、ニューは数々の防具の中からビキニアーマーを選んだ。

下着の上は直でビキニアーマーなのだ!

ビキニアーマーはこんなこともあろうかとアイテムボックスに用意してあったものだ。

ドラゴニュートは、その鱗を装甲としているので、あまり防具の必要がない。

だが、尻尾の関係と、隠すところは隠さなければならないので、ビキニアーマーを選んだのだ。


「お好きなのかと思ったのでな」


 やはり彼女は話せる奴だ。

ビキニアーマーは、さちぽよと陽菜でも選んでくれなかったんだよ。

まあ、防御力という点で、ある意味ドラゴニュートだから使えたんだけどね。


 ニューはオトコスキーを押し退けると、俺の左横をキープし護衛に就いた。

孵って直ぐに即戦力というのも、【たまごショップ】の良いところだ。

緑の鱗に銅色のビキニアーマーが映える。

これは銅じゃなくてヒヒイロカネなんだからね。

高級金属なんだぞ。

だからビキニアーマーにしかならなかったのだ。


ビキビキパキ


 そして、次に孵化が始まったのは、青鬼みたいな鬼の卵だった。

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