第409話 対魔族勇者の戦力を増強する3

 青鬼の意匠を持つ卵が孵り始めた。

これは「そう術に優れているかもしれないやつ」という注釈付きだ。

もう驚くのはやめよう。

どうせ「そう術」が、思った通りではないのに決まってる。

そもそも槍術ならば、ニュートと丸被りだ。


 卵の殻の上部が割れて落ちる。

その中には、また緑色が見えている。

鬼というと、小鬼と呼ばれるゴブリンから鬼種の頂点のオーガエンペラー、そして変り種としては吸血鬼なんて可能性がある。

この緑色、どう見てもゴブリンの肌の色ではないだろうか?

ゴブリンにもキラトのようなレア種がいるが、緑色はドノーマルのゴブリンの色だ。


「まさか、ドノーマルのゴブリン!

ついにこれが完全なハズレか!」


 俺はその緑色に、思わず落胆の声を上げてしまった。


「聞き捨てなりませんわね!」


 だが、卵から出て来たのは、予想の斜め上を行く存在だった。

しかも、出て来るなり、ハズレと言われたことにクレームを入れて来た。


わたくしは、グラスバンパイアですのよ?」


 なんだそれ?

それが俺の感想だった。

だが、貴重な人語を理解する魔物。

俺はとりあえず眷属化してステータスを見た。


眷属 グラスバンパイア吸血草Q 女性 ▲ 人化 吸血 人語理解 草術(種生成 触手 刺投擲)


 はいはい、草術で「そう術」ね。

もうそんな言葉遊びでは驚きませんよ。


 しかし、吸血草Qって吸血草クイーンか!

そっちが驚きだよ!

それに人化するから吸血鬼扱いで鬼の卵か!

植物の卵――こっちも大概だが――にしといてくれよ、紛らわしい。


 それに女性って、確かに外観は緑色の全裸の女性だけど、植物系で性別ってあるの?

雄花雌花、おしべめしべじゃなくて?

ああ、そういやイチョウは雄の木と雌の木があったな。


「よろしく……」


 もうどうでもいいや。

そういやドライアドという植物系女性型モンスターもいるもんね。

うん、植物でも女性なんだよ。


「なんだか、また嫌な事を言われた気がしますわ。

先程もハズレと言われましたし、どうやら乗り気ではないご様子」


「いや、それは失言だった。謝罪する。

歓迎するよ。思った以上に有能だと思う」


「ふふん♪ 植物制御の草術ならばおまかせあれ」


 ハズレと言ってしまったが、間違いだった。

明らかにヤバい存在だ。

触手で捕まえて吸血するならば、かなり恐ろしい存在だろう。

対魔族勇者戦力に相応しい。


ベキボキガゴギゴ


「お、次が孵るな」


 どうやら悪魔の卵も孵るようだ。

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