第406話 対魔族勇者の戦力を増強する1

お知らせ

 第401話と第405話を一部加筆しました。

判りにくかったり、描写不足で誤解を生んでいた部分の補足です。

より詳しく説明しただけなので、違和感なく読めた方は、読み直さなくても問題ないかと思います。

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 眷属枠の数は俺のレベルの数字と同じだ。

レベルが1つ上がれば、眷属の数も1つ上げられる。

翼竜を5匹も召喚してしまったが、一応枠は常に空けるようにしている。

何かあった時に、臨機応変に眷属を増やせるようにという、云わば保険としているのだ。


 今回、魔族勇者という存在が確認されたことで、キラトと同等以上の戦闘力の味方が必要になった。

リュウヤたちに同行してもらうために、飛竜のような運搬手段が欲しい。

もしくは、そのキラトクラスの強い眷属が欲しいところなのだ。


 飛竜は眷属卵で召喚出来ないレア種だ。

飛竜が当たるまで竜卵を引き続けると、ハズレた竜たちの処遇に困る。

枠を使い切られても困るし、竜卵は強力な個体ばかりなので、放出して野生となり逆襲されても困る。

そんなわけにはいかないので、竜卵マラソン――当たりが出るまで竜卵を引き続ける事――は早い段階で候補から外れた。


 やはりここは【たまごショップ】に頼るしかないだろう。

【たまごショップ】ならば、キラト級の魔物も手に入るかもしれない。

オトコスキーみたいなのが出る可能性もあるが、悪魔卵を選ばなければ回避可能だと思う。


 悪魔卵が孵ったときに、眷属になってくれれば良いが、そこで裏切られたならば、そのままアレックスの配下になってしまいかねない。

先の作戦での裏切りのそぶりが、オトコスキーの冗談で済んだから良かったものの、本当に裏切られていたら俺たちには命を失う危険があった。

オトコスキーは眷属でありながら、自主的に従ってくれているという感覚を持ってしまうのだ。

次に孵った魔人が、オトコスキーのように従ってくれるか、俺はそこに自信が持てない。


 なので、今回【たまごショップ】で選ぶ眷属候補は、そういった点を考慮して厳選しなければならなかった。


「久しぶりに【たまごショップ】を使うな」


 【たまごショップ】は課金制なので、良さそうな卵がリストに出たと言っても全てを買うわけにはいかなかった。

課金は危険なのだ。金があるだけ使ってしまう魅力がある。

所謂依存症的な感覚だろう。

そこで俺は、嫁ーズチェックという厳しいハードルを課した。

そこをクリアしない限り、課金はしない約束だ。


 ここ最近、【たまごショップ】が話題にならなかったのは、その課金資金が減る一方だったせいだ。

カドハチとの接触が絶たれたために、シャインシルクを売ってあぶく銭を稼ぐことが不可能となっていたからだ。

しかも大多数の資産はカドハチに預けていて、カドハチ便も預け金払いにしていた。

手元にお金があまり無い状態で、入りが無くなってしまった不安は、財布の紐をきつくした。


 それが今、カドハチ便も復活して機能しだした。

カドハチも皇国という新たな販路を得てシャインシルクを欲した。

いざという時のために、お金も預けるだけでなく、多く手元に置くようになった。

今回は状況が状況だし、嫁ーズも快く【たまごショップ】に課金させてくれることだろう。


「だが、稟議にかけるにも、良いたまごが出品されていないとな」


 俺は期待を込めて【たまごショップ】の画面を開いた。

その画面は俺の視覚にAR投影されている感じで広がった。

【たまごショップ】は、ネットのショッピングサイトという雰囲気だが、あまりにも品揃えが少なく1画面で終わる画面構成となっている。

そこに1日1回の割合で特殊な卵と、その卵をパワーアップさせる券が表示されるのだ。

しかも、全てが在庫1だ。

複数買える場合は、同じ出品物が複数表示される。

それが毎日新たなリストとなって表示されるのだ。

たまに前日と同じ卵が翌日にも残っていることがあるけどね。


「さて、今日はどのようなラインナップだ?」


『竜の卵、話せる奴かもしれないやつ 100万G』

『悪魔の卵、〇切られるかもしれないやつ 80万G』 セール50%off

『鬼の卵、そう術に優れているかもしれないやつ 120万G』

『ランクアップ券 30万G』

『スキル追加券 10万G』


「こ、これは!」


 竜の卵は、なんとなく問題なさそうだ。

話せるならば人型かもしれない。

鬼の卵の説明の『そう術』が『槍術』ならば、狙っていた魔物そのものだろう。

問題は悪魔の卵か。

なんで半額セールをやっている?

しかも『〇切られる』ってなんだよ? 『裏切られる』か? 怪しすぎる。

ここは嫁ーズに判断を委ねよう。


 俺はコンコンを通じて、嫁ーズに意見を求めた。

視覚と聴覚をコンコンと共有して、俺からの念話をそのまま口にしてもらう。

俺は状況説明と、たまごショップのリストを嫁ーズに伝えた。


『『『50%offセール!』』』


 嫁ーズの声がハモった。


『半額セールよ。買いね』

『うん。買いだね』

『全員一致です』


 この連帯感は何?

どうやらセールと聞いて何かのスイッチが入ったようだ。


「でも、説明文が『裏切られる』っぽくて危なくないか?」


『何言ってんだよー! 「られる・・・」だろ?

「裏切る」じゃないんだから察しよーよ!』


 さちぽよ、するどい。

もし〇が裏でも、俺たちを裏切るのではなく、孵った魔物の方が誰かから裏切られるということか!


『今回は、事情が事情なので全て承認します』


 妻ーズ筆頭の結衣から全ての卵購入にOKが出た。

この結果は手持ち資金が潤沢になったことも大きかったのかもしれない。


「じゃあ、券も購入するとして、どの卵に使う?」


 券を使うと強力になるが、少し難ありになる可能性が高い。

それを使うならば、どの卵だろうか。


『悪魔卵ね』

『そうだよね』


「え? そうなの?」


 嫁ーズの判断は早かった。


『半額セールって、何か訳ありだから半額なのよ。

だから、そこから能力アップすれば、訳ありを回避できるってこと』


 さすが買い物上手。

売り手の思惑の1手上を行く発想だな。


「わかった。それじゃそうするよ」


『無事に帰って来てね』

『危なかったら、新しい眷属を盾にしろよー!』

『危ないことしないでね』

『また連絡しなさいよ』


 よし、これで買う卵は決まったぞ。

あとは孵るのを待つだけだ。

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