第402話 抜刀隊突入
飛竜を召喚して、タンデムの鞍を装着する。
女性2人と俺ならば3人乗りも可能だが、さすがに大柄で鎧姿のサダヒサだと2人乗りでも窮屈だ。
俺も竜人風の全身鎧だしな。
この竜人風鎧は、飛竜纏やラキ纏を誤魔化すために作ったものだ。
さすがに纏を使っていることを皇国の者に知られるわけにはいかない。
ならば、普段から竜人風鎧を見せておいて、それと勘違いしてもらおうという思惑だ。
纏う瞬間に鎧をアイテムボックスに収納し、纏解除で逆に鎧を装着する。
戦いの最中であれば、細部の違いなど気付かないだろう。
まあ、いざという時以外は纏は使わないつもりだ。
「振り落とされないようにしっかり捕まってくれ」
「おうよ」
サダヒサが俺の腰に腕を回して抱き着く。
今まで飛竜に同乗したのは女性ばかりだったので、違和感がすごい。
お互い鎧が無かったら、直でマッチョの筋肉を感じるところだった。
俺は飛竜を操縦――念話により指示を出しているだけ――すると、大空に舞い上がった。
「御武運を♡」
「いざという時は援軍連れて
婚儀が決定したので、既に俺は婿扱いなのだ。
そして、
彼女の能力は皇国には秘密なため、飛ぶという表現を使っているのだ。
陽菜は、俺を感じることで、俺の居場所に【転移】することが出来るようになったのだそうだ。
いざという時には使用を解禁して援軍ごと【転移】してもらうことになるかもしれない。
「行って来る!」
俺は、バーリスモンド侯爵の居ると思われる領主館に向けて飛竜を飛ばした。
これは長年侯爵領と戦って来た皇国の間者による情報だった。
前例と同じならば、バーリスモンド侯爵は、領主館のバルコニーに陣を張っているとのことだ。
飛竜は難なく要塞都市バラスの城壁を飛び越え、内部に侵入する。
城壁の迎撃用兵器は、全て翼竜に破壊され、機能し無くなっている。
そして、崩れた城壁から皇国軍が雪崩れ込んだため、戦闘は城壁内部へと移行していた。
侯爵軍の攻撃魔法が散発的に撃ち上がって来るが、どれも威力不足で飛竜に当たったとしても何の被害も受けそうにない。
しかも、飛竜が速すぎてかすりもしない。
「あれだ! 戦場を見渡せる、あのバルコニーが指揮所である」
領主館の二階屋根部分が張り出していて、テニスコート大のバルコニーになっていた。
大方、領民に対して上から目線で演説でもするために作られたものだろう。
そこに半分天幕が張られて指揮所となっていた。
バーリスモンド侯爵は、最高司令官として、一応は現場が見えるような場所に陣取っていたらしい。
尤も、城壁よりも低い場所なので、城壁の外は一切見えていないが……。
これは安全な場所で安全に指揮をするための指揮所だろう。
「だが、空からの攻撃が無ければだけどな。
眷属召喚キラト、バルコニーへ!」
俺はキラトを召喚し、バルコニーに突入させた。
さすがに飛竜から降りる瞬間が隙となるからだ。
特に鎧姿のサダヒサは、飛竜の上から飛び降りることも出来ないのだ。
「飛竜、あの手前でホバリングだ」
飛竜が器用にバルコニー手前でホバリングする。
そして、その首をバルコニーに乗せる。
「サダヒサ、降りるぞ」
「おう」
俺とサダヒサは、飛竜の首の上を走ってバルコニーに降りる。
その間、攻撃を受けなかったのは、キラトが斬り込んだおかげだろう。
バリスタを装備した兵がそこらに斬り伏せられたいた。
一応の翼竜対策で対空警戒がなされていたのだろう。
バルコニーの指揮所は、キラトに斬り伏せられた護衛たちで阿鼻叫喚の坩堝と化していた。
それでも侯爵を守る騎士たちはまだ健在だった。
「サダヒサは右を!」
俺は逆サイドの左の騎士に対峙して剣を構える。
「おのれ、このような所まで空からとは!」
バーリスモンド侯爵が、想定外の空挺降下作戦に苛立ち声を上げる。
しかし、既に逃げ道はキラトに塞がれていた。
「たかが3人だ!
斬り捨てよ!」
だが、侯爵の命令も虚しく、護衛の騎士が倒れていく。
護衛の騎士は俺とサダヒサの敵ではなかった。
侯爵の直衛ともなれば、手練れなのだが、サダヒサはともかく、俺もかなりの強者となっていたようだ。
「メルヴィン=バーリスモンドであるな!?」
サダヒサがバーリスモンド侯爵に誰何する。
サダヒサも顔は知っているのだろうが、そこはテンプレの様式美ということだろう。
「如何にも」
ここに至っては、侯爵も諦めの表情となっていた。
「お命、頂戴しもうす」
サダヒサがバーリスモンド侯爵の首に刃を振り下ろす。
「主君!」
キン!
その時、キラトの慌てた声が聞こえ、サダヒサの刀が金属に当たった音がした。
「っ!」
サダヒサが後方に飛び退り、敵から距離を置く。
そして、俺の目の前にも1人の敵の姿があった。
「こいつら、まさか!」
俺たちの目の前に3人の異形の騎士が現れていた。
彼らは、アーケランドが勇者に支給する紋章付きの全身鎧を纏っていた。
だが、その姿は人間では無かった。
「魔族!」
彼らは黒い肌に赤い目をしていた。
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