第372話 時を戻す2

「先生、良いのですか?」


「あのアホどもアーケランドのせいであろう?

ならば生産職冷遇の責任は我にもある。

シモーヌがどのような目にあったかも知っておるしの」


 薔薇咲メグ先生がアーケランドを離れる時にやらかしたことが原因で、生産職冷遇が始まったんだそうだ。

戦闘の役に立たないくせに、逃げる時には多大な被害を齎す。

ならば、さっさと放追するべきとなったようだ。

特にハルルンとさゆゆの時は、アレックスが儀式の影響で寝込んでおり、変態貴族の横やりで奴隷として売られてしまい、あのような不幸が起きた。

その責任を薔薇咲メグ先生は感じているようだ。


「話を整理するぞ。

5人によって闇魔法【時戻し】を使う。

戻す時は7日前。

ハルルンの魔族化が急激に進む直前だ。

そして、不二子さんの房中術でセバスチャン青Tがハルルンを身も心も愛してあげて癒す。

その癒し効果でハルルンの魔族化が回避されることに期待する」


 時間がもったいない。

早速俺たち5人はハルルンのベッドを囲んだ。


「オトコスキーではないか。久しいな」


「これは先生、またお会いできて光栄の至りですわ」


 どうやらオトコスキーは薔薇咲メグ先生と面識があったようだ。

オトコスキーは旧魔王軍幹部。

その旧魔王こそがアレックスだったのだ。

先生がアレックスと袂を分かつ前の知り合いであっても不思議ではない。


 そんな再開劇を楽しむ時間はない。

戻す時間が増えれば増えるほど、失敗の可能性が高くなる。


 俺たちは瞳美ちゃんの知識に加えて薔薇咲メグ先生の指導で【時戻し】を使う。


「時よ、時よ、戻れ、戻れ過ぎ去りし過去に。

彼の者の時を悪しき選択の前へと。

【時戻し】!」


 代表して俺が呪文と唱えると、5人の闇魔法術師による魔法が発動した。

5人に囲まれた中心にいるハルルンを魔法陣が包み込み、その中心の時計の針が逆回転を始める。

その長針が24×7回まわった所で術を解除する。


「不二子さん、後は任せる。

青T!」


 俺は青Tをセバスチャンではなく青Tと呼び、サムズアップをする。

青Tもサムズアップして答えた。

部屋を出た俺たちは、各々が癒しを求めて活動を開始する。

薔薇咲メグ先生と腐ーちゃんは腐教活動で。

俺は嫁たち3人と一緒に寝室だ。


 だが、俺は忘れていた。

眷属の行為は俺に帰って来ることに。

以前オトコスキーが殺したアーケランド兵数千人の影響は俺に経験値と闇落ちポイントを齎した。

そこで魔王レベルが上がってしまったほどだった。


 今回、時戻しの魔法を5人で術行使したため、その負担は1/5になるはすだった。

だが、眷属の行為は俺に帰って来る。

つまり俺はその負担を3人分合計3/5受けることになった。

ただでさえ術師の中心となると負担が大きいという。

これは魔王レベルが上がるほどの影響を俺に齎した。


 その大きな代償を癒してもらうのに、嫁3人では不足していた。


「第4の嫁、参上!」


 さちぽよが寝室に殴り込みをかけて来た。

有耶無耶になっていたが、さちぽよも嫁として嫁ーズからは認められていたので、すんなり受け容れられる。


 さちぽよの行動には理由があった。

ハルルンのことがあったので、さちぽよたちヤンキーチームの女子も不安を抱えていたのだ。

魔物食をしていて癒されていない自分ももしかしたらと。

そして、そこには魔物食をしてしまい、パートナーが居ない者がもう1人が存在していた。


「私も混ぜてもらいますわよ」


 清楚系をイメージしたのに、悪役令嬢っぽい感じになっているクロエだ。

そこは、リュウヤにでもお願いして欲しいところだが、俺の闇落ちが進みすぎた。

ここは感謝してお相手してもらうしかない。


「私を癒すと思って、頼みますわ」


「いや、むしろ俺が癒される。ありがとう」


 こうして俺は嫁が5人になってしまった。

不可抗力だったんだ。

ハルルンを助けるために、俺が魔族化するわけにはいかなかったんだよ。


 そういや、ミニスカはパツキンがケアしてくれているよね?

そうなればパツキンも共に癒されているはず。

ああ、となるとリュウヤにも癒しが必要だよな。

さゆゆがみつかると良いんだが……。

娼館でとなると、お互いに愛が無いと癒しにならないだろうからな。


 翌日、ハルルンの闇落ちは止まっていた。

少しだけハルルンの精神も癒されて落ち着いたように見えた。


ナオヤ青T、大好き♡」


 ハルルンが青Tを呼ぶ声を俺は初めて聞いた。

もう大丈夫だろう。

そして俺は、魔王レベルが上がった以外は、嫁たちのおかげで無事闇落ちを回避することが出来た。

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