第340話 アーケランド軍動く1

Side:王国アーケランド国境砦 ユーリア卿ゆきりん


金ちゃんゴドウィン卿、どうしよう?」


「知らん!

お前がスティーブン卿サンボーを殺したから面倒なことになったんだろ!

そもそも俺たちは軍の指揮なんて出来る器ではない」


 金ちゃんパツキンミニスカミレーネ卿と離れ離れにされて怒ってる。

でも、サンボーは仕方ないじゃないか。

王様から命令されてたんだから。

それにサンボーはアーケランド軍が負けるように采配してた。

王様だって怒るよ?

それにロンゲローランド卿がああなった時にサンボーはロンゲを見殺しにした。

だから、命令通りにサクッと殺っちゃった。

私が悪いんじゃないんだからね。


「今更だが、安易にスティーブン卿サンボーを殺さずに、行動を諫めるだけで良かったのだ」


「むー」


 私が困っているのは、後方が魔物に襲われて食料が不足したからだ。

いま国境砦には、1万人も兵がいる。

その食料を運んでいたゆそー隊?――なんか難しい言い方だったけど――が、魔物に襲われて食料が駄目になっちゃったんだ。


 それで近くの街ディンなんとかから食料をちょーよー徴用しようとしたら、間にあった橋が焼かれちゃった。

食料が直ぐそこにあっても持って来れなくなっちゃった。

もう一つの橋は南に何日も行ったところにあるんだって。

そっち周りでは絶対に食べ物が無くなっちゃう。

どうしよう?


「食料の配給を減らす?」


「ああ、もう。

やられたのは4個派遣軍4千人分の食料だ。

兵を下げるしかない。

4個派遣軍を、南まわりで運ばれて来る輜重隊まで行軍させ、途中で食料を補給、そのまま王都に戻せば、国境砦も4個派遣軍も飢え死にしないで済むだろう」


 金ちゃんがアドバイスしてくれたけど、それだと兵の数が足りなくなって隣国エール王国と戦えないよ?

王様からの命令は、隣国エール王国を叩いて国境を越えさせないことだからね。


「やっぱ、総攻撃かな?」


「どうしてそうなる?」


 金ちゃんがなぜか慌てている。

私が想定外の反応をしたって感じ?


「王様から命令されてるでしょ?

金ちゃんもミニスカがどうなっても良いの?」


 私は治療中のロンゲが、金ちゃんは恋人のミニスカを王国アーケランドに人質にといられているようなものなんだからね。

王様の命令には逆らえないんだからね?


「食料が尽きる前に総攻撃して、それで兵が減れば少ない食料でも戦い続けられるじゃん」


「確かに目的のためには多少の犠牲は必要か」


 ミニスカのことを思い出したからか、金ちゃんも私の意見に乗っかって来た。


隣国エール王国に被害が出て、こっちアーケランドに攻めて来ないようにすれば良いんでしょ?」


「そのために犠牲が出たという事ならば、許容範囲かもしれないな」


「でしょ?」


 人数分食料が無いのなら、人数を減らせば良いじゃない。

それが尊い戦いの犠牲ならば、王様も怒らないよ。


「食料が無駄だから、早く総攻撃させよう」


「……」


 もう金ちゃんも反対しなくなった。


「第12、16、17、18派遣軍を今後第1軍団と呼称する。

第1軍団は国境緩衝地帯に展開、総攻撃準備!

第11、13派遣軍は北の迂回路から陽動作戦を!

後方の第23~26派遣軍は第2軍団と呼称する。

第2軍団は前進し国境砦に入り、随時第1軍団と入れ替わって敵国境砦を攻撃しろ!」


 金ちゃんが総攻撃の指示を出した。

こうしてアーケランド軍は総攻撃に打って出た。

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