第339話 護衛につくのは?

「え? 作戦が失敗した?」


 俺と金属バットの元にバシリスク隊の部隊長から報告が上がった。

それによると、湿地帯はバッタ魔物とカエル魔物の巣窟であり、バシリスクの脚の速さをもってしても、魔物との接触を避けることが出来なかったそうだ。

部隊は隠密スキルを使っていたが、カエル魔物の密度が濃くて、避けられなかったらしい。

そして大カエルジャイアントフロッグともなると、バシリスクごと騎兵を飲み込む大きさであり、危険だと撤退したそうだ。


昆虫人間インセクターがいなくてまだ良かったな」


 金属バットが深刻そうに言う昆虫人間インセクターは、上位魔物と言っても良い強さがある。

昆虫人間インセクターが居れば被害者が出たと思ったのだろう。


 昆虫人間インセクターは二足歩行のため湿地帯にはむかないのだろう。

そんな昆虫人間インセクターでも、移動が制限されれば大カエルジャイアントフロッグにやられかねないのだ。

俺たちが蜘蛛糸で行動不能にして倒しているように。


「まあ、これで王国アーケランド軍が追って来たら野良の魔物で返り討ちに出来ると判明したな」


 金属バットがしれっと前向き発言をする。

魔物の脅威を見逃していたことは俺と共犯だからな。

いや、見逃したというより、隠密スキルで回避可能だと思っていたんだけどね。

作戦は失敗しても、人的被害が無かったことは救いだろう。

だがミスはミスだ。ここは俺も金属バットに便乗しておこう。


「護衛をつければ問題ないだろう」


「誰をつける?」


 せっちんと赤Tならば大カエルジャイアントフロッグを火魔法で簡単に退治できるだろう。

だが、その火魔法が隠密行動にむかない。

火魔法を使ったことで、そこに部隊が迂回して来ていることが王国アーケランド軍にバレてしまうことだろう。


「せっちんと赤Tの火魔法は隠密行動にむかない。

丸くんの水魔法も湿地帯の魔物の特性から効きが悪い。

俺や金属バットが行くのは指揮に支障が出て問題がある。

となると、さちぽ「嫌だっつーの!」」


「カエルなんてマジ勘弁!」


 さちぽよが俺の言葉を食い気味に遮って拒絶した。


「だろうな。俺もそう言おうとしていたところだ」


 俺がそう言うとさちぽよはホッと胸を撫で下ろしていた。

さちぽよは俺が魔落ちしないための癒し要員でもある。

元から行かせる気はなかった。


「なんだそうだったんだ♡」


 さちぽよが離れるもんかと俺に抱き着いて来た。

ああ、癒される。


「だが、残りは雅やんしかいないぞ?」


 金属バットが首を傾げる。

雅やんは非戦闘職の回復要員だ。

多少剣技が出来るが、それは一般兵以上という程度だ。

金属バットのように前に出て無双するタイプではない。

最前線に出すわけがないし、元から出す気もない。


「雅やんも回復要員として後方に必要な人材だ」


「ならば誰を?」


 そう、これで隣国エール王国の国境砦にいる勇者は打ち止めだ。

隣国エール王国軍の中でも精鋭のバシリスク隊が駄目ならば、他から誰かを連れて来ても無駄だった。

人間ならばな。


「湿地帯の王、アナコンダをたまご召喚する!」


 俺の眷属、しかもカエルに特効を持つ蛇魔物ならば問題ない。

幸いなことに、アナコンダは眷属マラソンで出したことがあった。

枠が足りないので放出したが、それにより眷属卵で指名が出来るのだ。

それを眷属卵召喚で呼ぶ。

レベル2卵なので48倍速だ。


 ◇


 1時間後。

アナコンダが孵った。

48倍速で孵化させたため、やはり特殊個体になった。

仕組みはわからないけど、孵るのが早くて強くなるのだから良い事尽くめだろう。

いや、なんらかのマイナス面が見えていないのかもしれない。

気に留めておこう。


「アナコンダ、湿地帯でバシリスク部隊を護衛しろ。

大カエルジャイアントフロッグは食って良い。

先行して進行ルートの魔物を排除せよ」


『サブスキル【眷属化】を得ました』


 この時、システム音声が、たまご召喚に【眷属化】のサブスキルが生えたとの知らせを齎した。

オトコスキーの王国アーケランド軍殲滅によるレベルアップに、アナコンダを眷属卵召喚し、眷属に加えたことが後押しになったらしい。

【眷属化】スキルは野生の魔物をテイムして眷属に出来るサブスキルだった。


「つまり、たまご召喚で出したことのない野生の魔物でも、【眷属化】で眷属に出来るということか」


 まさかパシリのような魔族でも眷属化出来てしまうのか?

検証のしようがないが、殺さなくて済むのならば頭の隅に入れておこう。


 大カエルジャイアントフロッグも、そこそこ強い魔物だ。

1、2匹眷属にして王国アーケランド軍に嫌がらせさせてみようか?


 ◇


 やっちゃいました。嫌がらせ。

元野良の魔物は、今までの眷属と違って、準眷属という感じだった。

俺との繋がりがたまご召喚の眷属よりも薄いのだ。

なので王国アーケランド軍に突撃させて使い捨てという方法でも躊躇することは無かった。

なんというか、愛情を与えたペットとは違う感覚かな?

害獣を有効活用したという感じ?


 そのため眷属枠を有効に使いつつ波状攻撃をかけることが出来た。

そして、それを陽動としてバシリスク隊がついに攻撃に成功した。

王国アーケランド軍は湿地帯から魔物が溢れて被害を受けたという感覚しかないようだ。


「上手く行ったな。

これで橋を落とせばアーケランド軍を混乱させられるだろう」


 金属バットも作戦成功に手ごたえを感じたようだ。


「よし、翼竜、やってしまえ!」


 俺は翼竜に命じてディンチェスターの街へと繋がる橋を翼竜の火炎弾で攻撃させた。

これにより王国アーケランド軍は補給ルートの1つを絶たれることとなった。

そしてバシリスク隊に輜重隊が攻撃されたことで、食料不足に陥るのだった。

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