第305話 どう対処すれば良いんだよ

 赤Tたちを狙う可能性のある金属バット他の王国アーケランドの勇者を迎撃するため、俺は眷属召喚で温泉拠点まで戻した飛竜に、さちぽよとともに乗って空に上がった。

赤Tと腐ーちゃんに対して、王国アーケランドの勇者4人が揃って攻撃して来た場合、圧倒的に不利だったからだ。


 GKからの念話によると、連絡のとれなくなったGKの配下が一定の地域で増えているようだ。

GKの配下は魔の森の各地に散らばっていて、その地の情報を収集したり魔物の数を調整したりしている。

つまり、その音信不通となった位置を把握することで、異常が起きている場所を特定することが出来る。


 それは王国アーケランドの国境砦から赤Tたちのいる場所へと一直線に向かっていた。

魔の森のほとんどは、野生の魔物によって支配されている。

GKの配下といえども、手出しできない魔物も存在している。

その傾向は俺が【たまご召喚】で呼び出して放出した魔物が野生化したことで顕著だったりするのだが、それが天然の防壁となっているため放置している部分もあった。

そんな魔物をものともせずに金属バットは進撃しているようだ。


「さすが金属バットということか」


 俺はついそう口に出していた。


「なんのこと?」


 飛竜の鞍に俺とタンデムで乗っているさちぽよが振り向いて尋ねた。

飛竜の鞍は飛竜の首の付け根に取り付けてある。

そのため、後ろの方が股を広げて乗ることになるため男女で乗る場合は女性を前に乗せる。

ちなみに腐ーちゃんは単独なのでそのまま前に乗っていた。


 そのため、俺はさちぽよを抱えるように飛竜の手綱を手にしている。

その腕の中で さちぽよが振り向いたのだ。

顔がめちゃくちゃ近くて焦る。

さちぽよはヤンキーといってもレディース系ではなくてギャルだ。

異世界に来て、その濃いメイクが無くなった彼女は、思った以上に美人さんだった。

ギャルメイクがマイナスになっている典型だろう。


「金属バットが魔の森をものともせずに進んでいるっぽい」


「強い魔物もいたんだよね?」


「眷属化するか悩んだような魔物も放出してあった」


「まあ、あいつ金属バットなら魔の森も楽勝っしょ」


 そう言うと、さちぽよは何を思ったのか、180度座り直して体を対面させた。


「なんで座り直す?」


 さちぽよは所謂対面座位のポジションをとっていた。

両脚を俺の体に巻き付けてくる。


「この方が話やすいっしょ」


 いや、どう考えてもおかしいだろ。


「それに腕で鞍に掴まるのに疲れちゃった」


 なるほどそれで脚で……ってちがーう!


「この体勢はまずい」


 この体勢はほとんど抱き着かれているようなものだ。

しまった。緊急事態で忘れていたが、さちぽよはこういったチャンスを狙っていたふしがある。


「おっきくなったら処理してあげるから♡」


 さちぽよが冗談か本気なのかわからない事を口走る。

これは自制しないと危険だ。

俺は冷静さを保つと、今後の行動について話しはじめた。

はっきり言って話を逸らすためだ。


「金属バットの向かっている先は、間違いなく赤Tの部隊だろう。

出来れば説得したいが、金属バットの洗脳は相当きついんだろ?」


 俺に話を逸らされたさちぽよはプンスカと頬を膨らませたが、律儀に質問には答えてくれた。


「洗脳がきついのは金属バットとアマコ―かなー。

2人が一番キレてメンチ切ってたから」


 王国に立てついていたならば、ある意味味方になる可能性があるってことか。


「どうにか無力化して洗脳を解きたいところだが……」


「2人は強いよー。

洗脳とくって無理じゃね?」


 俺が闇魔法を重ね掛けすれば青Tのように洗脳が解ける可能性はある。

しかし闇魔法は使いすぎると暗黒面に引きずり込まれかねない。

強い洗脳に対抗するから猶更だ。


 そして、もし金属バットが赤Tや腐ーちゃんに危害を加えたら……。

仲間にするなんてことが出来るのだろうか?

そういや、俺もロンゲを殺しかけてたんだった。

まさか生きてるとは思わなかった。

死んでいれば誰にやられたかなんて判らなかっただろうが、生きていたからには、俺にやられたという話は伝わっているだろう。

俺たち同級生は、もう元の鞘には戻らないのかもしれない。


「あ、こら」


 俺のなにをさちぽよが握った。

こんなところでなんてことを。


「深刻な顔すんなよ。

いーことして忘れちゃおーよ♡」


「おまえ、飛竜の上でする気か!」


「ほら、元気になったじゃん」


 それは俺の気分のことなのかなにのことなのか。

前者であって欲しいと俺は思った。

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