第306話 サンボー動く

お知らせ

 第135話において、ハルルンの洗礼名がアマンダになっていました。

アマンダはアマコーの洗礼名です。ハーメルンに修正しました。

ついでに紛らわしい(というか作者が思い出せない)ので、さゆゆのエイミーという洗礼名もサリーに変更しました。


 ちなみに洗礼名と言ってますが、世間や勇者排斥論者という過激派から、彼らの正体を隠すために名乗っている別名と思ってください。

勇者として大っぴらに活動を始めたら、勇者排斥論者には意味はないのですが、そこは王国が世間から異世界人の存在を隠したいという意図があり使い続けています。

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Side:知の勇者スティーブン卿サンボー


 謎の花火が打ち上がった現場に棍の勇者ことジャスティン卿金属バットと爆裂の女勇者ことアマンダ卿アマコーが千の兵を引き連れて向かった。

この2人は俺の情報把握のスキルにより、その行動はテレパシーのようなもので探ることが出来る。


「思うように進軍出来ていないな。

勇者だけでは手が回らないほど魔物が多いのか」


 どうやら魔の森は勇者による少数突破ならばいざ知らず、一般兵を進軍させるのには不向きな土地のようだ。

ジャスティン卿やアマンダ卿が強い魔物を倒しても、進軍する兵の側面や後方から違う魔物が襲って来る。

一般兵ではそれを防ぐことが出来ない。

2人には千の軍勢をつけたが、それが足枷となって思うように進軍出来ていないようだ。


 飛竜の行動から隣国エール王国に魔王軍が味方しているのは間違いなさそうだ。

魔の森の一角に保養地と称して住みついている謎の貴族、あれが魔王軍の幹部の竜人である可能性が高い。


 王国アーケランドが送った使者に、謎の貴族は中立を宣言し、不可侵領域を設定したそうだ。

だが、こうやって隣国エール王国に協力しているとなると、魔王軍の幹部だろうが、ただの他国の貴族だろうが、奴が敵対していると見て良いだろう。


 国境砦までの街道だけでは、5千の兵を進軍させるには狭すぎた。

そのため、大多数の兵が国境まで辿り着けていない。

いまジャスティン卿金属バットに千の兵を同行させたことで、やっと追加の千名を呼び寄せることが出来た。

つまり国境砦の正面では砦の守備隊含めて2千5百の兵を展開するのでやっとなのだ。


 では、残り2千の進軍はどうするのか?

それが謎の貴族が敷設したという保養地までの道を利用するという王国アーケランドの方針だった。

ジャスティン卿金属バットが向かった先は、まさにその道の延長上になる。

そここそが、この戦いの天王山となる可能性を孕んだ重要地点だったのだ。

まあ、俺は王国の方針とは違ってジャスティン卿金属バットが切り開いた道を利用するつもりだがな。

だが、これは千載一遇のチャンスかもしれない。


「あそこに飛竜がいるということは、竜人が出払っていて保養地の防衛力が下がっている?」


 これは好機だ。

ジャスティン卿金属バットたちを囮にして、保養地を落す。

パーシヴァル卿パシリの脚ならば、今すぐ現地に連絡も出来る。

このアドバンテージを使わない手はない。


パーシヴァル卿パシリ、後方の第4軍、第5軍を率いて謎の貴族の保養地を落せ」


「えー、あそこはバカ侯爵の軍が千人溶かした所でしょ?

エルモンド卿青Tもそこで倒されたらしいじゃん」


「大丈夫だ。いま敵の主力はそこにはいない」


 俺の読みでは竜人の留守を襲撃可能なはずだ。

断定出来るだけの情報はないが、パシリを動かすためだ。

多少の嘘も方便だ。


「ほんとに?

ダメだったら逃げるからね?」


 こいつの脚の速さならば、本当に逃げて来るだろう。

だが竜人さえ居なければ勝てるはず。


「それで良いから、行って来い!」


「へいへい」


 情報伝達の早さが戦いを左右するのだ。

保養地が攻撃されていると竜人が知るにも時間がかかり、そして引き返すのにも時間がかかる。

竜人が保養地に戻ればジャスティン卿金属バットとの戦いが不利となる。


「さあ、どうする? 竜人よ」


 俺はどちらかが手に入れば勝ちだ。

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