第304話 何かあってからでは遅い

「腐ーちゃんはなんとか赤Tと合流できたか」


 だが、この後は赤T隊の行軍のスピードに付いて行かなければならない。

先行してまた飛竜が隣国エール王国の軍隊を脅かしても困る。


 そして王国アーケランド側からの攻撃を受けた。

どうやら金属バットのやつの仕業らしい。

金属バットはどう出る?

いや、サンボーの指示がどう出るかか。

もし腐ーちゃんたちを追撃して来たら……。

援護に向かうためにも飛竜を呼び戻した方が良いだろう。


『フーチャンヒリュウヲモドス』


『キバシさんか。転校生殿の連絡ですな。

飛竜を戻すでござるか?』


 腐ーちゃんにキバシさん通信で飛竜を戻すことを伝えた。


『キンゾクバットノコウゲキ』

『ツイゲキヲケイカイ』

『ヒリュウデムカウ』


『金属バットの攻撃

追撃を警戒

飛竜で向かう

でござるな』


 金属バットが赤T隊を追撃する可能性があり、万が一の時のために高速移動出来る飛竜を戻す必要が生じたのだ。

襲われてから行ったのでは遅い。

なので、赤T隊の行軍スピードに合わせなければならない今、その高速が無駄になっている飛竜を呼び戻すことにしたのだ。

飛竜は2人乗りなので、俺はもう1人の援軍を連れて直ぐにも飛竜で向かうつもりだった。


『ソウダ』

『ヒリュウガメジルシニナル』

『ヨクリュウニケイカイト』

『オトリヲサセル』

『フーチャンハチジョウイドウ』


『飛竜が目印になる

翼竜に警戒と

囮をさせる

私は地上移動

でござるな』


『ソウダ』


 赤Tたちにこのまま飛竜に乗った腐ーちゃんが付いて行くと、金属バットにとってはそれが赤T隊の目印となって遠方から把握されてしまう。

それを避けるためにも、腐ーちゃんは地上を赤T隊に同行してもらう。

そして翼竜も目印となるため、翼竜には偵察と欺瞞工作のため、離れた場所を飛んでもらう。


『了解でござる』


 そう言うと腐ーちゃんは赤T隊が行軍する前方に飛竜を降ろした。


『どうした?』


 そこに赤Tが走竜で駆け寄り訊ねる。


『金属バットによると思われる攻撃を受けたでござる』


『なんだって!』


 金属バットと聞いて赤Tも警戒の色を濃くする。


『飛竜が目印になりかねないので帰さねばならぬ。

走竜に便乗させてもらえないか?』


『わかった。

走竜には予備がいるからいーぜ。

おい、走竜を貸してやれ!』


 赤Tは、腐ーちゃんの話を聞き、直ぐに走竜を貸すように指示を出した。


『かたじけない』


『翼竜もまずくねーか?』


 赤Tも翼竜が気になったようだ。

翼竜も上空を旋回しているため目印になると思ったのだろう。


『翼竜は別の場所に行って欺瞞工作と偵察をさせるでござるよ』


『なるほど、金属バットの接近を見張らせて、さらに俺たちの居場所を騙すのか』


『接近はキバシさんに伝わるでござる』


『それは助かんな』


 こうして腐ーちゃんは赤T隊と共に地上を移動し始めた。

金属バットの隊も地上移動だろう。

魔の森を斜めに突っ切って来るとしても、接敵は暫く先になるだろう。


「眷属召喚、飛竜!」


 俺は飛竜を眷属召喚で温泉拠点まで連れ戻した。

この瞬間移動が俺にも出来れば便利なのだが。

例えば、俺が眷属に乗ったまま別の場所に召喚できるとかね。

あれ? 眷属の遠隔召喚って出来たよね?

俺が知っていたり眷属が見ている場所だったりすれば、そこに眷属を送り込める。

それに俺が乗っていたら?


 さすがに転移事故が怖いので実験は憚られるな。

いま事故るわけにはいかない。

後で暇なときに生き物を乗せて実験するとしよう。


 さて、飛竜にはタンデムの鞍が取り付けてある。

相手が金属バットとなると、剣技に秀でた者か魔法攻撃の出来る者を連れて行きたい。

魔法攻撃は腐ーちゃんがいるから剣技の方か。

となると。


「さちぽよ、腐ーちゃんの援護に向かう。

一緒に来てくれ」


「やっと外に出れる!」


 俺と腐ーちゃんのやりとりを知っていて、さちぽよの準備は万全だった。


「結衣、キラトと不二子さんを預ける。

拠点防衛を任せる。

何かあったらコンコンに念話させろ」


「任せて」


 こうして俺とさちぽよは拠点を飛び立った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る