第283話 ハズレの存在意義
『かもしれない』と明記されている【たまごショップ】だが、数千万円課金して残念な結果だと、ついついハズレと言いたくなってしまう。
だが、そこは生きている眷属、残念だからと邪けんにするのは違うだろう。
コンコンにも良い所はあった。
あっさり不二子さんに越えられてしまったが、それでも役立つに違いない。たぶん。
そして、翼竜にもきっと良い所はあるはずだ。
「おまえ、何が出来る?」
翼竜の前脚は翼の被膜を支えるためだけに特化している。
その腕で何かをするということは不可能だろう。
後脚も貧弱で、それで何かを掴むとしても、その重量はたかが知れている。
その飛行能力では、人を背に乗せて飛ぶことも出来そうにない。
唯一武器となりそうなのは、その大きな嘴だった。
今も、俺が与えたマグロ魔物をその歯の生えた嘴で啄んでいる。
クエクエ!
俺の言葉に反応したのか、翼竜が「見てて」と言っているようだった。
眷属とは念話が繋がるので、なんとなく言っていることがわかるのだ。
それは言葉そのものではなく、概念といった感じのものが伝わって来る。
今回もなんとなく「見てて」と言っているようだった。
俺が翼竜の行動に注視すると、翼竜が大きく口を開け、火球を発射した。
俺は、その行動に驚き、思わず突っ込む。
「なんで翼竜が火球を吐くんだよ!」
そういや、こいつも魔物だった。
地球の古い生き物に似ているとはいえ、それはたまたま似ているだけだった。
この数多の魔物が跳梁跋扈する世界で、ただの翼竜では生きて行けるわけがないのだ。
魔法由来の意味不明の能力を持っていて当然なのだ。
そもそも、その巨体からして、あんなペラペラの被膜で自由に空を飛べるのがおかしかった。
地球で翼竜が飛べたのは、大気の成分が濃厚だったからとか、重力が弱かったなどの説がある。
つまり、この世界の空気圧で重力ならば、飛べないような身体だったのだ。
西洋風ドラゴンとか、巨大昆虫が飛べるのも魔法のアシストがあるからだ。
ならば、翼竜もそういった存在だと何で思わなかったのだろう。
翼竜は火球を吐くことで、立派な航空戦力だったのだ。
だが、それでも期待されていたほどの能力ではなかった。
翼竜には10万Gに加えてランクアップ券30万Gを使っている。
これは食料換算で4千万円になる。
それだけの価値を期待した結果だと、さすがにハズレだと思ってしまう。
そもそも鳥の魔物だったはずが、ランクアップ券によって翼竜となってしまったのだ。
「思っていたのと違う」それがハズレた感になっているのだろう。
「おまえも俺と同じか」
クソおやじに捨てられ、この世界に来ても知らない奴と疎外され、やっと女子たちに仲間と認めてもらえた。
翼竜はまさにいま、以前の俺の立場と同じだろう。
「よし、お前の名はソラキだ。
俺の名前
いつか乗れるようになることを期待してそう名付けた。
魔法の補助があれば、貧弱な翼でも人を乗せて飛べるようになるかもしれないのだ。
今後の成長に期待だ。
クエクエ!
ソラキも俺と念話で繋がっているので、俺の期待を理解したようだ。
そして、火球で焼いたマグロ魔物をまた啄み始めた。
表面を焙ったマグロ魔物は美味そうだった。
「結衣ー、今晩のおかず、マグロを焙って!」
「わかったー」
思わず結衣に夕飯のリクエストをしてしまった。
夕飯になり、皆がなんでマグロの焙り丼なのか首を傾げていた。
だが、美味しかったから皆大絶賛だった。
「美味しいですー。お代わりですー」
その様子に皆も笑顔になる。
残念残念と弄っていたが、今では無くてはならない愛されキャラとなっていたのだ。
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