第284話 嫁は増える
マグロ焙り丼を美味しく食べられたのには理由がある。
農業国で味噌と醤油を手に入れていたのだ。
材料に米麹を使うことから、過去の勇者が齎した製造技術は、米を栽培している農業国にしか残っていなかったのだ。
農業国の農協のような販売所では目にすることは無かったが、お土産の米と一緒に味噌と醤油も渡してくれていたのだ。
農業国の接待では王国風のおかずに、主食として米が振舞われたが、俺達を接待するならば味噌汁に醤油味の料理の方が良かったのではないだろうか。
そこらへん農業国の担当者は
その味噌と醤油により麴菌が手に入った。
熱処理で麹菌を殺すなどという事はしていなかったのだ。
後は材料と錬金術、アイテムボックスを使えば味噌と醤油の量産化が可能だった。
やらない手は無いので、がっつり量産化させてもらいました。
ほんと、錬金術大全を買って良かった。
材料を粉砕するとか、わざわざ道具を作らなくても魔法で出来るんだぜ。
まあ、醤油や味噌を作る知識は某農業アイドルの番組と結衣の料理スキルのおかげだけどね。
その醤油によってマグロの焙りや刺身も美味しくいただけているのだ。
となると食べたくなるのは寿司だろう。
だが、これは実現していない。
この世界、酢はワインビネガーかリンゴ酢のようなものしかない。
米酢がないのだ。
うちで作ろうと思ったが、これは酒を造って発酵を進めて酢にするという製法になる。
美味しい酒なんて造れないので今のところ断念している。
不味い酒からは不味い酢が出来るのだから当然だろう。
さて、夕食をがっつり食べた後は……。
不二子さんにご飯を食べさせないとならない。
不二子さんは普通の食事の他に人の精力を必要とする。
それを得るために俺達の夜の生活に房中術を使ってサポートしてくれるのだ。
「あれ? 麗は?」
「はっ! 逃げたな!」
食器を片付けていた結衣が周囲を見回す。
どうやら麗は逃げたようだ。
不二子さんのプレイが過酷すぎたせいだ。
俺はなぜか以前に増してあっちが強くなっている。
どうやら闇魔法を使った時のような暗黒面に引きずり込まれる感覚が、【たまご召喚】にもあるようなのだ。
それを結衣たちを抱くことで解消しているらしい。
文字通りの癒しなのだろう。
「うーー、身が持たないよー。
そうだ、お嫁さん増やそう!」
結衣がついにその台詞を口にした。
そして、瞳美ちゃんの肩をガッシリ掴んで逃げられないようにしていた。
いやいや、誰でも良いってわけじゃないでしょ?
瞳美ちゃんの気持ち優先だからね?
確かに俺は瞳美ちゃんのことは嫌いではない。
というか好きな方だろう。
色々あったし、温泉では軽く見えちゃったこともある。
複数嫁がいても全員を幸せにすれば問題ない。
これは浮気ではなく皆を平等に好きなだけなのだ。
それを嫁が認めれば異世界なので問題はなくなる。
「瞳美ちゃん、覚悟は出来てるよね?」
結衣が瞳美ちゃんに詰め寄る。
「あうあう」
どう見ても覚悟なんて出来てません。
それより、瞳美ちゃんの気持ちの確認が必要でしょう。
「嫁になる覚悟は出来てるよね?」
結衣が詰め寄ると、瞳美ちゃんが俺の方を向いた。
しかし、その顔は下を向いてしまっていて、俺を直視出来ないようだ。
顔が真っ赤になっている。
そして一気に顔を上げた。その顔は決意に満ち溢れていた。
「私がやらかしたことがバレているのに、何も言わないでくれた。
命がけで皆を助けてくれた。
女の子に告白させてしまった。
その真っ直ぐな気持ちが伝わって来る。
この子も良い子だなぁ。
どうやら、裏では結衣たちと話が付いていたようだ。
「俺も瞳美ちゃんが好きだ。
いつも的確な知識で助けてくれる。
さりげない気配りも嬉しかった。
結衣と麗の2人と同じように大切にしたい」
俺も瞳美ちゃんの告白に精一杯答えた。
だが、これで良いのか?
結衣の身体がもたないということは、瞳美ちゃんにカバーして貰うという事だろ?
初体験であの不二子さんの洗礼を受けるの?
それはまずいでしょ。
「やった、これで瞳美ちゃんも嫁仲間だね」
「麗とはもう話は通し済みだから安心して。
後はさちぽよが嫁になりたいって言ってるよ?」
「なんでさちぽよが?」
「だって、さちぽよの命を救ったのって
そうだった。カブトンに攫わせなければ魔物に殺されていたところだったんだ。
だが、あの状態になるまでタイミングを計ったのも俺だ。
王国の目を欺くためとはいえ、さちぽよが傷つくのを放置したのだ。
俺にはその負い目があるため、さちぽよとの間に少し壁を作ってしまうのかもしれない。
さちぽよのあのストレートな肉体攻撃に、俺はドン引きしていたけど、その思いは純粋だったのか。
だが、さちぽよまで嫁にすると打算的にベルばらコンビが手を挙げそうなんだよな。
紗希は男女関係に興味ないようだし、裁縫女子はそんな素振りもない。
腐ーちゃんは趣味の世界に没頭しているようだ。
元の世界に帰れるならば、そんな関係になる前に帰してあげたい。
そのためには、王国を攻める覚悟と準備を整えないとならない。
王国から召喚の秘密と、元の世界に還る方法を訊き出さないとならない。
魔物戦力を充実させようとすると暗黒面に落ちる。
それを回避するためには嫁に癒してもらうしかない。
卵が先か鶏が先か。
いや、たまご召喚が先だったな。
ならば、その力を思う存分に使って、王国を倒すとしようか。
この思い、闇落ちのせいではないよな?
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